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2012年2月26日(日)

主張

武道必修化

子どもたちの安全を守れ

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 「このままでは心配」「子どもたちの安全は守れるのか」―。4月からの中学校武道必修化を目前にして、いま保護者や学校現場から不安の声が上がっています。必修化で全国の多くの中学校が採用するとみられている柔道で、重大事故が続いているからです。

死亡確率が高い柔道

 もともと武道必修化は2006年に自民・公明政権下で改悪された教育基本法を受けて、文部科学省が進めてきたものです。基本法は「教育の目標」に「伝統と文化を尊重し、それをはぐくんできた我が国と郷土を愛する…態度を養う」ことを掲げました。文科省は08年3月に中学校の学習指導要領を改訂、体育の授業に武道・ダンスを取り入れ、武道については柔道、剣道、相撲の科目の中から一つを選び、1、2年は必修、3年は球技との選択になります。

 ところがここにきて、柔道の安全性が大きく問われてきました。文科省の外郭団体である日本スポーツ振興センターが毎年発行する『学校管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点』の過去28年間分を名古屋大の内田良准教授(教育社会学)が分析したところ、柔道では114人が死亡し、275人が重い障害を負う事故が続いてきたことがわかりました。最近10年間の中学校部活動における死亡確率も、柔道が飛び抜けて高いことが判明しています。

 なぜ、柔道でこうした重大事故がなくならないのか。一つは安全配慮に欠けた指導者の姿勢があります。重大事故に多い頭部の損傷は、頭を直接打たなくても、脳がはげしく揺さぶられることで起きる場合があります。「加速損傷」と呼ばれる症状ですが、これまで指導者の多くはそうした認識がなく、起きた場合の対処法も知らないままでした。

 もう一つ事故の温床になってきたのが、指導や練習という名のもとでまかり通ってきた体罰やしごき、いじめです。「根性をつける」と有段者の指導者が何度も投げ飛ばす、上級生が初心者の後輩に危険な技をかける。こうした例は枚挙にいとまがありません。

 実際の授業でもふざけて技をかけて事故を起こせば、子どもが被害者だけでなく、加害者になる可能性もあります。しかも文科省は学習指導要領の中で、頭部損傷に至る危険性がもっとも高い大外刈りなどの投げ技を1、2年の学習内容の例にあげているのです。

 必修化を前に各地で講習会が開かれていますが、まったく柔道に縁がなかった先生たちは事故が起きないように教えられるのか、不安を隠せません。文科省が安全対策を確立していない状況で、地域によっては乱取りを禁止したり、ヘッドギアなどを配備する独自の対策をとる動きも出てきました。

安全確保を最優先で

 本紙が昨年連載した「なくせ柔道事故」でとりあげ、日本共産党の宮本岳志議員が衆院文部科学委員会で質問したように、これまでの事故を医科学的に解明し、再発防止策をたて、指導者研修を行うことは必修化の前提です。

 指導要領の体育の目標には「運動を適切に行うことによって体力を高め、心身の調和的発達を図る」とあります。いまの状況はその真逆です。文科省は武道必修化の延期をふくめ、安全の確保を最優先に考えるべきです。


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