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2012年2月24日(金)

小選挙区制の固定化に手を貸す「機能不全」報道

政治部長 藤田 健

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 23日付の全国紙各紙は、衆院選挙制度問題で、判で押したように「区割り違法状態に 責任放棄の立法府」「政治不全 『違法』通す」「与野党とも無策」などと報じています。

 論旨は、選挙制度改革についての与野党書記局長・幹事長会談が「不調に終わった」ことで、衆院選挙区画定審議会(区割り審)の勧告期限である25日を過ぎることが確実になり、「違法状態」に入った、「政治の機能不全ぶり」を象徴するものだというものです。

 こうした報道は、衆院選挙制度問題をめぐって、いま何が問題になっているかを全く理解しないものといわなければなりません。

議論棚上げ図る

 そもそも、2月25日というのは現行制度を前提にした選挙区割りの見直し期限であり、民主党などはこの期限を強調することで、現行の小選挙区制を維持・固定化し、選挙制度の抜本改革の議論を棚上げしようとしてきました。

 これに対し、昨年10月から11回にわたって開かれた衆院選挙制度に関する各党協議会では、民主党以外のすべての党から「現行制度は民意をゆがめている」との認識が出されました。そして、日本共産党など7党は民意をゆがめる小選挙区制そのものを抜本改革する必要があると主張してきたのです。

 本紙20日付に登場した自民、公明、たちあがれ日本、社民、新党改革などの各党国会議員も、「現行制度のもとで政治が劣化した」「民意を圧縮することは許されない」として、民意を公正に反映した選挙制度を口々に求めました。「抜本改革すべきだ」という答えが6割、7割に達した世論調査もあります。

 4割の得票で7割の議席を獲得するという「虚構の多数」のもとで、政治の堕落・劣化がすすんできていることに、多くの政党・政治家、国民が危機感を感じているのです。まさに、「機能不全におちいっているのはいまの小選挙区比例代表並立制度だ」(日本共産党の志位和夫委員長)という事態であり、抜本改革の議論こそ一番の中心問題なのです。

政治不信あおる

 形式的な議論で、「違法状態に入った」などとし、国会全体の「機能不全」をあおる報道は、結局、民主党と同様に現行制度の維持・存続をはかるものでしかありません。議論の中身をみない報道こそ、政治不信をあおるのです。

 そもそも全国紙は、政治の劣化を招いた小選挙区制導入を推進した「製造者責任」があります。政府の第8次選挙制度審議会に全国紙やテレビの幹部らメディア関係者12人が参加し、小選挙区比例代表並立制を答申。その後も、民間政治臨調などに大手メディアの重役、論説委員、政治部長などが名を連ね、金権政治一掃の課題を選挙制度の問題にすりかえ、小選挙区制を「政治改革」と称して推進する大キャンペーンを展開しました。

 その責任を省みることもなく、抜本改革の議論を封殺し、再び小選挙区制の枠内での改革におしとどめる動きを後押しするとしたら、その罪は二重に重いといわざるを得ません。

 野田内閣がすすめる消費税大増税でも、「全国紙のほとんどが論調を同じにして、前向きに推進しろとなっている」(渡辺恒雄「読売」会長・主筆)状況です。立法府の「機能不全」を言う前に、みずからの「機能不全」をこそ問題にすべきではないでしょうか。


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