2012年2月24日(金)
きょうの潮流
「もっと大きな夢を…」。野田首相が、「官邸かわら版」で若者たちによびかけています▼首相はいいます。“バブル崩壊後に生まれた人たちは、きょうより明日がよくなるという思いをもてない状況だ。では、どういう夢があるか。正社員になって結婚することが夢になりつつあるという”。なるほど、そうでしょう▼ここで首相は、「そうではなくて」と話を転じます。「そうではなくて、もっと大きな夢を描いて、日本のためにがんばろう、世界のためにがんばろうという人たちがふえる環境をつくる」。「正社員」や「結婚」への願いなど政府が環境をつくるに値しないほど小さな事柄、と聞こえます▼「大きな夢を」は、国会でのやりとりの一部でした。議事録をみてみると民主党議員が、首相の「大きな夢」発言を引き取ってのべています。非正規雇用の労働者が4割に達しようとしている。だから家庭をもてない人がふえてきた▼低所得の世帯がふえ、1世帯あたり所得額のちょうど真ん中にあたる中央値は、1995年の550万円から09年の438万円まで112万円も減った。貯蓄ゼロ世帯も、2割を超えふえ続けている…▼答弁に立った首相は、肝心の使い捨て非正規雇用の改善に一言もふれていません。日本共産党の高橋ちづ子議員は、きのうの衆院予算委で、気迫をこめて労働者派遣法の「抜本改正」を求めました。若者の尊厳を奪い、人生の夢をはぐくむ環境づくりもできないで、なにを偉そうに「大きな夢を」でしょう。