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2012年2月18日(土)

橋下市長の「思想調査」 批判なし

問われるマスコミの姿勢

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 橋下徹大阪市長による「アンケート調査」(「労使関係に関する職員のアンケート調査」)は、市職員の思想・信条の自由を否定し、労働組合の活動に介入する不当労働行為だけでなく、“政治家の応援”に「誘った人」という形で一般市民の実名も答えさせるなど、住民への監視にまで踏み出す重大な人権侵害事件です。

 ところが大手各紙は、「維新八策」など国政進出の準備を進める橋下氏ら「大阪維新の会」の動きを大々的に報じながら、今回の「思想調査」事件を真正面から批判する社説や論評は一切掲載していないのです。

 「朝日」は大阪市など関西方面向けの紙面(14日付)でこそ「アンケート」の具体的設問も含め詳しく報じています。しかし、同日付東京本社発行の紙面では、大阪市労連が大阪府労働委員会に救済を申し立てていることや、回答しない職員は処分の対象とするとの橋下市長の言い分を報じているだけで、調査の具体的設問や違憲性・違法性に踏み込んでいません。

 一方で同紙は、政治部次長名のコラム(15日付)で、橋下氏を「いまや日本政界の主役である」「(単独インタビューの印象は)小さかった。『威圧感』がまったくない」「あえて自分を小さく見せるのは本当の自信がなければできない」と天まで持ち上げています。

 「日経」「読売」「産経」は、いずれも日本共産党の志位和夫委員長が記者会見(16日)で述べた「アンケート」批判談話の内容を、数行の記事で伝えているだけです。

 わずかに「東京」15日付コラムでの批判が目を引いたほか、同紙17日付が、憲法学者の談話を交えて報じ、同日付の「毎日」が、日弁連や市労連などが「『憲法違反』と猛反発する事態に発展」しているなどと紹介する記事を掲載している程度です。

 このような報道姿勢は、主要テレビ各局(キー局)の報道番組でも基本的に共通しています。

 違憲・違法が明らかな「思想調査」をはじめ、橋下氏が大阪で実際におこなっている“独裁”の中身は何も知らせず、「改革者」であるかのような幻想をふりまく――こうした大手マスコミの姿勢には、かつて「大日本言論報国会」のもとで侵略戦争を鼓舞した報道機関・言論人がたどった道に逆戻りする危うささえ感じざるをえません。(林信誠)


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