2012年2月17日(金)
きょうの潮流
いま日本で一番長生きしている人は、京都府の木村次郎右衛門さんです。あと2カ月あまりで115歳になります▼世界一の記録を集めているギネスによれば、歴代長寿世界一は、1997年に亡くなったフランスの女性、ジャンヌ・カルマンさん。122歳164日でした。日本では、数え年120の祝い歳を「大還暦」といいます。長寿の祝い歳は、ここまでのようです▼広い動物の世界では、ヒトの寿命の物差しはあてはまりません。ベニクラゲは、成長と若返りを繰り返し、寿命があるのかないのか分からないほど生き続けます。すしネタのムラサキウニや、ハオリムシ(羽織虫)は、200年前後生きるそうです▼ハオリムシは、1977年にガラパゴス諸島沖の深海で発見されました。長さ数十センチ。竹のような形をしていて、まるで花びらが開いているようにみえる先端が赤い。海底から熱水が噴き出てくる穴のあたりにすみ、硫化水素などを先端から取り込んでいます。体内にいる細菌が、硫化水素などをハオリムシの栄養分に変えます▼温泉や火山の近くに行くと、「危険 硫化水素に注意」と書かれた看板をみかけます。人間にとって硫化水素は、命取りになる猛毒です。しかし、ハオリムシのような動物も深海には少なくありません▼最近も、太平洋マリアナ海溝の深海底で、硫化水素を“えさ”にする貝類がみつかりました。生命の不思議。研究者が期待するように、生命誕生の謎を解き明かす手がかりの一つかもしれません。