2012年2月10日(金)
社会保障充実、財政危機打開―提言のポイント
消費税大増税ストップ / 社会保障の充実と国民の所得を増やす改革が相乗効果を生む
小池晃政策委員長に聞く
日本共産党は7日、「消費税大増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言」を発表しました。そのポイントについて、小池晃政策委員長(消費税増税阻止闘争本部長代理)に聞きました。
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再生から「夢のある社会保障」へ
「財界いいなり」政治の転換で
―提言は消費税増税反対のよびかけからはじまっていますね。
小池 ええ、消費税増税には、(1)ムダづかいを続けたままの大増税(2)社会保障切り捨てと一体の大増税(3)日本経済をどん底に突き落とし、財政破たんもいっそうひどくする―という三つの大問題があります。そして、被災地に重くのしかかります。こんな冷酷な政治は許せません。
どうすすめる
―では社会保障の再生・充実と財政危機打開をどうやってすすめるのでしょうか。
小池 社会保障の段階的な充実と国民の所得を増やす経済改革という二つの柱を同時並行的に進めていくというのが大きな考え方です。そのことによって相乗効果が生まれます。社会保障の充実は、将来不安を取り除き、国民のふところをあたためます。そして、内需主導の経済改革によって、国民の所得が増えれば税収が増え、社会保障の財源が豊かになり、財政の立て直しも進むという関係です。
―社会保障の充実は2段階になっていますね。
小池 なぜ段階的かというと、小泉「構造改革」以降の改悪によって待ったなしの修復が求められているからです。「社会保障再生計画」と銘打ってただちに着手する。これが第1段階です。ただ、「再生」させても、ヨーロッパでは当たり前の先進水準からみれば大きく遅れたままです。そこで第2段階で抜本的拡充へと向かう。それぞれの段階に応じた財源は、「財界いいなり」の政治姿勢を転換し、「応能負担」の原則に立てば展望が開けます。
―第1段階の「再生計画」のポイントは。
小池 医療費の窓口負担を「子どもは無料、現役世代は2割、高齢者は1割」に引き下げる、年金が毎年毎年減っていく制度はやめる、特別養護老人ホームや保育所の待機者をゼロにするなどです。その財源は、ムダの一掃と富裕層・大企業優遇の不公平税制見直しなどで生み出します。
―第2段階での先進水準の社会保障というと。
小池 最低保障年金制度の確立、医療費の窓口負担は無料、介護の利用料も無料、学費は無償―これらはヨーロッパの多くの国では当たり前です。こうした先進水準に向かう。その財源は国民全体で、その力に応じて支えます。
多くの新提案
―提言では新しい提案が多く含まれていますね。
小池 主な点をあげると、年金については、第1段階で受給資格期間を25年から10年にすることとあわせて、無年金・低年金の解決に足を踏み出すことです。すべての人に3万3000円を国庫負担で支給し底上げする。最低保障年金へ向けた第一歩という位置づけです。第2段階で最低保障年金制度を確立させます。
第1段階の財源では、「富裕税」(新しい資産課税)を創設します。相続税対象額で5億円を超える資産に1〜3%の累進課税をかける。対象となるのは1000世帯当たり1世帯です。
異常円高の原因ともなっている投機マネーを規制するひとつの方法として、「為替投機課税」を新設します。通常の貿易や金融取引には影響がない0・01%の課税です。
―法人税については。
小池 第1段階ではまず、来年度からやろうとしている法人税の1・4兆円減税は中止する。研究開発減税、連結納税税制など大企業向けの不公平な制度を見直す。国と地方をあわせた実効税率は約40%ですが、これらの優遇税制で実際の大企業の法人税の負担率はソニー13・3%など名だたる企業が10%台です。上位300社の平均でも33・8%です。これを文字通り40%の負担に戻します。
将来的には、国際協調で、下げすぎた法人税率を適切に引き上げることが必要だと考えています。世界的な法人税引き下げ競争は、経済協力開発機構(OECD)でも各国の財政赤字問題にとって有害だと指摘しています。
―第2段階の社会保障の抜本的な拡充に必要な財源づくりでも、新しい提起がされていますね。
小池 なんでも大企業の負担で財源をつくるというのではなく、ここでは国民全体で、力に応じて支えましょうと率直に提起しました。もちろん、消費税増税ではなく、負担能力に応じた負担の原則にもとづき、累進課税を強化する所得税の税制改革によって賄うという考え方です。ヨーロッパ並みの「夢のある社会保障」をつくっていくためにみんなの力で支えようということです。
具体的には、所得税に1・5%から15%の税率を上乗せする。6兆円程度の財源になります。所得が多ければ多いほど負担は重くなります。低所得者には配慮し、課税最低限の見直しもします。この所得税の税制改革は(1)経済改革によって新たな負担を求めても可処分所得(手取り額)は増え続ける(2)社会保障の抜本的拡充と一体で進める(3)国民的討論と合意のもとで段階的に進める―という三つのことを大前提とします。
財源的裏づけ
―財源的な裏づけをもって社会保障の段階的な拡充を提起しているということですね。
小池 そうです。第1段階の「社会保障再生計画」の実行には約9兆円の財源が必要です。共産党の財源案では12兆円から15兆円の財源が生み出せます。幅があるのは景気回復すればそれだけ税収が増えるからです。もちろん、社会保障以外の農林水産業や中小企業などの分野の予算も増やしていきます。
第2段階の「先進水準の社会保障拡充」では、所得税の改革で約6兆円の財源を生み出します。
同時並行で行う民主的な経済改革は、最大の埋蔵金とでもいうべき大企業の内部留保260兆円を日本経済に還流させることが大切です。人間らしく働ける労働のルールの確立、中小企業の本格的振興策、農林水産業の再生、食料自給率の抜本的引き上げ、原発から撤退し、自然エネルギーの普及と低エネルギー社会への転換、そして、日本社会にとって危機である少子化問題を克服する。
社会保障の充実と国民の所得を増やす民主的な経済改革で「ルールある経済社会」をつくっていくことを提起しています。
―財政の立て直しは。
小池 私たちの提案は消費税を増税することなく、社会保障を段階的に充実させながら、基礎的財政収支を2030年ごろには黒字化させ、対国内総生産(GDP)比で長期債務残高を30年をピークに減少させていくものとなっています。
私たちの提案こそが、社会保障の再生・拡充と財政危機打開に向けた大きな力になると確信しています。
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