2012年2月10日(金)
主張
国境をこえた子の奪取
解決ルールが求められている
国際離婚にともなって、一方の親がもう一方の親にことわりなく住んでいた国から子を連れて出たことによる問題の解決にむけた議論がおこなわれています。
国際的なルールとして、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(ハーグ条約、1980年採択)があり、87カ国が批准しています。
日本政府は昨年、この条約の批准を閣議了解し、7日には、法務省法制審議会が国内法整備の内容について答申しました。3月には法案が提出される予定です。
DV、虐待の懸念解決を
離婚した両親が国をこえて子を奪いあうことは、子どもにあたえる影響が大きく、また親にとっても子どもに会えないなど深刻な問題です。
この条約を未批准である日本でも、さまざまな問題がうまれていました。子どもを日本に連れて帰ってきた親が「誘拐犯」として国際指名手配されたり、逆に日本から子どもを外国に連れ去られた親が相談する場もなく泣き寝入りしたりしているなどの事態がおきています。子が一方の親との面会ができない状況もうまれています。
こうしたなかで、関係者の間で、日本がハーグ条約に加わることを求める声がだされるとともに、すでに批准している米国、フランスなどからも、早期の批准が求められてきました。
日本共産党は、国際離婚にともなう、一方の親による子の国外への連れだしにかかわる問題の解決には、国際的な共通の枠組みでの対応が必要だと考えます。
ハーグ条約は、子どもの権利条約の採択(89年)や、配偶者間の暴力(DV)など人権にかかわる国際的なルールの確立(95年)以前につくられていることから、DVの概念やその被害への対応が明記されていません。
そのためDV被害者などからは、ハーグ条約が、原則として子どもを元いた国に戻し、そこでどちらが養育するかを判断するとしていることへの不安の声があります。この点では、子を元いた国に戻すことで、子の心や体に悪い影響を与える場合や、子が戻ることを拒否している場合などは返還を拒否できるというハーグ条約の規定をきちんと運用させることが重要です。
さらに、法制審答申が、“子を元いた国に戻すことを求めた親が子へ暴力等を振るうおそれがある場合”や“子に悪影響を与えるような暴力等を子の返還を求められた親に振るうおそれがあると判断した場合”は返還を拒否できるとしていることは、この規定にたって、DV被害者や関係者からの意見や懸念にも一定こたえるものといえるでしょう。
「子の利益」にたった措置
子どもの養育をめぐる親どうしの争いであっても、当事者の子どもの利益が優先されなければなりません。
その点で、答申が、子の返還にかんする裁判への子の参加を認め、また適切な方法で子の意思の把握に努め、決定は「子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない」としたことは重要です。
今後さらに、子の立場にたった解決とDV被害者の懸念にこたえる、実効ある整備にむけた十分な検討をすすめていくことがもとめられます。