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2012年2月6日(月)

主張

イラク市民虐殺判決

米に迫られる侵略戦争の総括

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 オバマ米政権は米軍のイラク撤退後、アジア・太平洋を重視した戦略を強めるなど、対外政策の照準を「イラク・アフガニスタン(戦争)以後」に合わせています。

 待った、と言いたい。米政府がイラク戦争の重荷は降ろしたと、すまし顔をすることは許されません。米国は侵略戦争の責任にきちんと向き合うべきです。

「茶番」との批判も

 1月下旬、米国内の海兵隊基地で軍法会議が開かれ、1人の米兵に判決が言い渡されました。フランク・ウテリッチ軍曹は部下とともに無抵抗のイラク市民多数を虐殺し、罪に問われていました。

 事件は2005年11月、イラク西部ハディサで起きました。車両で通過中の海兵隊員が仕掛け爆弾で死亡したことから、軍曹は部下を指揮して周辺で“掃討作戦”を行いました。住宅のドアを次々に破り、手投げ弾を投げ込み、小銃を発射しました。後に、幼児を含む子ども、車いすの老人、女性ら24人が遺体で発見されました。

 軍曹は部下に、「まず撃て。質問はそれからだ」と命じたとされます。戦場で自分と仲間を守るにはそれしかなく、訓練で教えられたとものべています。相手が誰であれとにかく攻撃するやり方には、イラク市民の侵略者に対する怒りの真っただ中にいた米兵の恐怖感とともに、“占領者意識”をみることもできます。

 軍曹は殺人など14の罪状で起訴され、最高で禁錮152年の刑になるとされていました。しかし、「職務怠慢」を認める代わりに殺人などの罪が免じられ、判決は最下位の兵への降格処分という極めて軽いものでした。事件にかかわった他の海兵隊員はすでに6人が不起訴、1人は無罪判決を受けており、事件の処分は終わります。

 軍法会議はもともと身内に甘いものです。陪審員は4人とも実戦経験者で、戦場の現実を強調する軍曹側の弁明に理解を示したことは想像に難くありません。それでも判決は驚きをもって受け止められ、米紙ニューヨーク・タイムズによれば軍法専門家からも「茶番だ」との指摘が出たほどです。

 米軍が昨年、イラクを撤退したのは、イラクが米国との地位協定の締結に応じなかったためです。米国は地位協定で罪を犯した米兵の裁判権を確保しようとしました。その要求をイラクが退けた背景には、ハディサ虐殺事件に対する市民の根強い反発もあったことが指摘されています。今回の判決は、イラク側の懸念が的を射ていたことを示すもので、イラクで事件への批判が改めて高まっているのは当然です。

 明るみに出た当初、その残虐さからベトナム戦争でのソンミ村虐殺事件にも匹敵するものとして注目された事件です。ただ、イラク戦争で犠牲になった市民は10万人を超えるとされ、この重大事件も“氷山の一角”にすぎないとみるべきです。

内外で責任問う声

 米政府はイラク戦争を過去のものとし、侵略戦争を強行したブッシュ前大統領をはじめ当時の政権幹部の責任も不問にされています。そのもとでも、虐殺事件の責任を問う声は米国内外にあります。事件は侵略戦争の実態を浮き彫りにしたもので、今後の米国の対外政策がこうした批判に縛られることは必至です。


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