2012年2月5日(日)
主張
防衛省選挙介入
擁護する側の責任も問われる
5日告示の沖縄・宜野湾(ぎのわん)市長選挙に絡んで本人や親族が同市に選挙権を持つ職員の名簿を作成させ、該当者を集めて「講話」と称して投票を呼びかけていた防衛省の真部朗(まなべろう)・沖縄防衛局長にたいし、防衛省は違法性が明確でないなどの理由で処分を見送っています。
沖縄防衛局長の行為は明らかな国家による選挙介入です。その局長を「本人に説明責任を果たしてもらう」というだけでかばい立てするのは言語道断です。田中直紀防衛相をはじめ防衛省本省や野田佳彦政権の責任が問われます。
違法感じぬほど常態化か
真部氏は3日の衆院予算委に参考人として出席し、「講話」の目的を、「局の立場をよく勉強して投票に行ってほしかった」「有権者に職員が答えられるようにと考えた」と答えました。新基地建設の国策に沿う候補者への投票を促すためだったのは明らかです。
公表された「講話」の要旨を見ても、同局長は、市長選に立候補する2人の候補のうち、伊波(いは)洋一前市長は「県内移設反対、早期閉鎖・返還」、もう一人の前自民党県議の候補は「現状固定化阻止」だなどと違いを強調し、新基地建設、「県内移設」が沖縄防衛局の方針だとのべています。
「講話」は職員を指導するために行うものです。宜野湾市に選挙権がある職員の投票を指導するだけでなく、親族にも投票を依頼するよう指導したのは明白です。
選挙は国民の主権者としてのもっとも大切な行為であり、国家が介入したり、干渉したりするのは絶対に許されません。国民主権を定めた憲法の根本に反します。局長が上司の立場で職員に働きかけたり、投票依頼を組織したりするのも、法律に違反する明白な犯罪行為です。
局長は今回だけでなく、これまでも名護市の選挙などで「講話」を行ったことがあると認めています。防衛省は局長の行為を違法ではないとしていますが、重大な選挙介入を違法と感じないほど、防衛省ではこうした行為が常態化していたのか。組織的に支持して「リスト」まで作らせた今回の行為が局長一人の判断で行われていたとはとうてい考えられず、本省を含めた「防衛省ぐるみ」の犯行ではなかったのか、徹底して究明する必要があります。
防衛省は、局長に全容を明らかにさせるだけでなく自ら過去にさかのぼって選挙介入の有無を調査すべきです。もし防衛省が過去にもこうしたことを行っていたとすれば自民・公明政権時代にもさかのぼることになります。予算委で自民党議員は真部氏の追及に後ろ向きでしたが自公の責任も不問というわけにはいきません。
新基地押し付ける異常さ
田中防衛相が局長の処分を見送ったのは処分を急がないよう首相官邸からの働きかけがあったからともいわれますが、防衛相だけでなく政権中枢の責任も問われる大問題です。野田首相自身が国民に説明すべきです。
異常な国家による選挙介入の背景には、米軍新基地建設のためのなりふり構わぬ態度があります。野田政権は違法な選挙介入の全容と責任を明確にするとともに、沖縄への新基地押し付けをきっぱりと断念し、沖縄県民・宜野湾市民をはじめ、国民のきびしい批判に応えるべきです。