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2012年2月3日(金)

防衛省、先端技術狙う

「すばる」 → 宇宙監視  「きく8号」 → 通信傍受

JAXA法 平和目的条項削除の動き

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 平和分野で発展してきた最先端の日本の宇宙技術について、軍事衛星技術などへの導入可能性が検討されていることが、防衛省の報告書で明らかになりました。報告書は、さまざまな衛星やロケットの技術を対象にあげています。

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 無線通信やレーダー信号など、電波源の位置を特定したり通信内容を傍受する電波情報収集衛星について、報告書は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2006年と08年に打ち上げた、技術試験衛星「きく8号」や超高速インターネット衛星「きずな」のアンテナ技術を論じています。きく8号の大型展開アンテナはテニスコート1面分に匹敵する大きさで、金属メッシュの軽量素材を折りたたんだ状態で打ち上げ、ワンタッチの傘のように開く構造。より微小な電波を探知可能な大型アンテナ技術に注目しています。

 軍事偵察分野ではJAXAが06年に打ち上げた陸域観測衛星「だいち」をあげ、高周波数化による建物などの標高抽出、船舶などの移動目標検出の可能性を評価しています。

 軍事通信への応用では、電波を使う「きずな」やレーザー光を使うJAXAの光衛星間通信実験衛星「きらり」(05年打ち上げ)などの大容量通信技術に着目。傍受や妨害に強く、光量子暗号技術を利用できる光通信の特性をあげて、将来性に期待しています。

 このほかロケットの推進技術、自律飛行や指令破壊機能、ロケットの飛行経路を監視する追尾技術、宇宙空間でのドッキング技術、宇宙の放射線環境に強い機器など、JAXAが培ってきたさまざまな技術の軍事応用の可能性を探っています。

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 一方、宇宙ゴミ、他国の軍事衛星の動向やミサイルの軌道を監視・予測する宇宙監視システムに関連して、JAXA以外の天体望遠鏡などの地上設備にも注目。国立天文台の「すばる望遠鏡」が誇る大気揺らぎ補償技術や特定非営利活動法人「日本スペースガード協会」が運用するレーダー施設も視野に入れ、ミサイル防衛などへの応用可能性を探っています。

 JAXA総務部の担当者は、防衛省の検討状況について「把握していない」と回答。JAXA法から平和目的条項が削除された場合の技術提供の可能性については「仮定の話はお答えできない。われわれとしては政府が定めた法律にもとづいて活動する」としています。


解説

夢に貢献する科学こそ

 日本の宇宙科学・技術は「非軍事」のもとで発展し世界に誇れる活躍をしてきました。それは米国や旧ソ連などが軍拡競争で宇宙技術を蓄えてきたのと好対照をなしています。

 赤外線天文衛星「あかり」は、宇宙初期の第一世代の星の光を観測したり、銀河の外縁部で星が活発に誕生していることを発見するなど、数々の科学的成果をあげてきました。2018年打ち上げ予定の「スピカ」は、「あかり」の成果を踏まえた詳細観測で、銀河誕生のドラマと惑星系の材料と成り立ちの解明をめざします。

 技術試験衛星「きく8号」は、災害時でも安定した通信を確保するなど、国民の安全のために開発された技術です。超高速インターネット衛星「きずな」は、地上の通信網が整備されていない離島などでの遠隔医療、遠隔教育などを想定した利用実験を進めており、いずれの衛星も東日本大震災で被災地に通信回線を提供するなど活躍しました。

 陸域観測衛星「だいち」は、インドネシアの洪水、チリ地震、東日本大震災などの災害状況把握で国際貢献。光衛星間通信実験衛星「きらり」は、「だいち」のような地球観測衛星などの基盤技術として開発されたものです。

 すばる望遠鏡は、天文学の進展に大きな活躍をすると同時に、その美しい天体画像は人類の夢やロマンをかきたててきました。日本スペースガード協会が運用している岡山県の美星(井原市)と上齋原(鏡野町)にある観測施設は、地球近傍小惑星や宇宙ゴミを観測。小学生などを対象にした小惑星探しの企画など教育分野でも貢献しています。

 このように本来、知の探求や国民生活を豊かにするために使われるべき宇宙関連技術や施設、研究者たちを法律で追い立て、戦争のための研究に動員するとは言語道断です。軍事機密のベールに包まれ、民生分野での停滞をもたらすことは目にみえています。平和憲法をもつ日本の宇宙開発利用は「非軍事」に徹するべきです。 (中村秀生)

図

(写真)報告書の一部。「すばる」など大型天体望遠鏡技術を軍事利用の検討対象にあげています


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