2012年2月3日(金)
主張
将来人口推計
安心の子育て社会へ転換こそ
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が2060年までの日本の将来人口推計を発表しました。合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの平均数)は5年前の前回推計の1・26から1・35に若干の上方修正をしましたが、少子化と人口減少の大きな流れに歯止めがかかっていないとしています。推計結果は、子どもを産み、安心して育てることが困難な日本の現状を打開することが待ったなしの課題であることを改めて浮き彫りにしています。
「一体改革」は逆行
50年後の日本の総人口は、1億2806万人(10年)から8674万人に減少し、14歳以下は791万人(9・1%)、15〜64歳が4418万人(50・9%)、65歳以上が3464万人(39・9%)―。推計が描いた未来です。子どもが総人口の1割を切る社会は年齢構成のバランスを欠いています。少子化と人口減少は社会の活力を衰えさせる憂慮すべき事態です。
推計は1960年生まれと95年生まれの女性を比較し、平均初婚年齢は25・7歳が28・2歳に、生涯未婚率は9・4%が20・1%に上昇すると仮定しました。女性の「晩婚・晩産」「非婚」がさらに進むという予測です。結婚した夫婦の出生児数は2・07人から1・74人に減少するとしました。現状をそのまま投影すれば、厳しい未来しか浮かんできません。
国民の願いは違います。未婚者の9割が結婚することを望んでいます。未婚者・既婚者を問わず希望する子どもの数は平均2人以上です。この意識は30年以上変わっていません。少子化は宿命ではありません。家庭と子どもを持ちたいという希望が実現できる経済社会に変革することが求められているのです。
政府の文書に「少子化」という言葉が登場したのは20年前、92年の「国民生活白書」でした。その後、少子化対策の会議などを設置しましたが、本格的な克服の道は開けていません。それどころか自民党政府の「構造改革」路線のもとで非正規雇用が増大し、低所得化がすすみ、子育て世代を直撃しました。出産後も働き続けるのが困難な職場、長時間労働も十分改善されていません。政府が大企業の横暴をきちんと規制してこなかったためです。「ルールある経済社会」への転換こそ急務です。
野田佳彦内閣が推進している「社会保障と税の一体改革」は、子育て世代に容赦ない負担を迫るものです。消費税の10%への引き上げは、所得の低い若年層の生活を脅かします。「子ども・子育て新システム」は、保育所の待機児童解消にならないばかりか、親の経済力で保育の格差をつくりだします。「一体改革」は子育て世代への支援に逆行し、少子化を加速させるものでしかありません。「次世代の負担を減らすため」などと偽りの看板で強行することは許されません。
希望のもてる政治こそ
少子化と人口減少を、「一体改革」を国民にのませるための「脅し」の材料に使うことは論外です。高齢者も大切にされる社会でなければ、子育て世代は将来も安心できません。大企業優遇の政治をあらため、社会保障制度を拡充する政治へ転換することが、日本の未来を開くうえでますます重要となっています。