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2012年1月30日(月)

主張

議事録作らず

都合悪い議論隠さなかったか

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 民主党政権が東日本大震災にあたって設置した緊急災害対策本部や原子力災害対策本部などが議事録やその要点をまとめた議事概要を作成せず、対策がどう議論され決定されたのか検証さえ困難になっていることが判明しました。

 議事録が作成されなかったのは事故直後だけでなく長期にわたっています。公文書管理を担当する岡田克也副総理は議事概要の作成を指示しましたが、いまになってどこまで正確なものが作られるのかその保証はありません。議事録を作らなかったのは都合の悪い議論を隠すためではなかったのかを含め、徹底検証が不可欠です。

震災対策の中枢組織で

 長期にわたって議事録が作成されなかったのは、いずれも大震災や東京電力福島原発事故への対応にあたった中枢的な組織です。緊急災害対策本部や原子力災害対策本部は震災直後に首相を本部長に作られたもので、被害状況の把握や被災者の避難などにあたってきました。対策本部のもとで、防災相が責任者になって仮設住宅対策や救援物資の手配にあたったのが被災者生活支援チームです。これらの組織では、議事録も議事概要も作られていませんでした。

 原発事故にさいして当時の菅直人首相が東電本社に乗り込み、経済産業相が責任者になって立ち上げ事故対応にあたったのが政府・東京電力統合対策室です。ここでは議事概要はあるものの議事録は作られていませんでした。このほかを含め、大震災や原発事故の対応にあたった15の組織のうち10が議事録を作成せず、三つは議事概要も作成していませんでした。

 議事録がなければ、政府がどのように被害を把握し、住民に避難などを指示したのかも正確にわかりません。原発事故では外部電源が切れ原子炉の冷却ができなくなるという異常事態の中で消防車からの放水や海水の注入などが行われましたが、その過程も検証できません。史上最大級の大災害の中で政府がとった対策が検証できないのは、今後の災害に備えるうえでも重大な損失です。

 議事録や議事概要は公文書です。公文書の管理についての法律は、公文書は「国民共有の知的資源」であり、行政機関は意思決定の過程を跡付け、検証できるよう文書を作成しなければならないと定めています。もともと議事録など文書で記録されていなければ、国民への情報公開もできません。

 民主党政権はなぜ法律違反を承知で議事録を作成しなかったのか。事故直後だけならまだしも、長期にわたり多くの組織で議事録が作られなかったのは、災害時の混乱だけでは説明がつきません。議事録を残すことで責任が追及されることを恐れたのではないかなどの疑問を含め、原因と責任が徹底追及されるのは当然です。

民主主義の根幹の問題

 ことは民主主義の根幹にかかわる重大問題です。公文書管理法にもとづき議事録が作られていても発言者がふせられているなど不十分な場合が少なくありません。議事録自体が作られないといったことまでまかり通れば、それこそ「由(よ)らしむべし、知らしむべからず」といった国民無視の暗黒政治になります。

 議事録不作成の問題をあいまいにせず公文書の管理や公開を徹底させることが不可欠です。


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