2012年1月26日(木)
国家公務員給与8%減
民自公が実務者合意
連合と調整へ
民主、自民、公明3党は25日の実務者協議で、国家公務員給与の引き下げについて、2011年度の人事院勧告(人勧)に盛り込まれた平均0・23%削減を実施した上で、特例法案に基づき13年度末まで同7・8%引き下げることで大筋合意しました。引き下げ幅は合わせて約8%となります。
今後3党間で詰めの協議を行い、人勧は3月から、特例法案は4月からの実施を目指します。
政府は昨年10月、人勧を実施するための給与法改正案を提出せず、特例法案の成立を優先する方針を閣議決定しています。自公両党は、これに反発。人勧を実施した上で削減幅を7・8%とする対案を提出していました。
民主党は同日の実務者協議で、地方公務員の給与削減は行わないよう求めたほか、国家公務員に労働基本権の一部を付与する公務員制度改革関連法案の早期成立も要請。自公両党はこれらの提案について改めて検討します。
この2点は、特例法案をまとめるさい、政府・民主党と連合とのあいだで合意した経緯があり、今後、連合との調整が問題になります。
解説
民間への悪循環招く
民主、自民、公明3党による今回の合意は、いまや野田政権の政治パターンとなっている自民、公明両党の主張を民主党が受け入れたものです。当初の政府案は、人事院勧告を無視して国家公務員賃金を7・8%引き下げる特例法案を出すものでした。それを自公両党の主張にそって、まず人勧による引き下げを実施し、さらに特例法案で大幅に引き下げるという2段階になり、引き下げ幅が8%を超えました。これは人事院勧告制度がはじまった戦後もっとも大幅な引き下げです。
国家公務員の賃金は、従業員50人規模以上の民間賃金を基準にして毎年調整される仕組みになっており、それが民間を含む労働者全体の賃金に影響します。いま始まった春闘で企業側は、国家公務員の賃金が下がったことを理由に厳しい抑制姿勢に出ることが予想され、「賃下げの悪循環」を招きます。
日本は世界の主要国のなかでこの10年間、賃金が下がっている唯一の国で、これが経済成長が止まっている原因です。「賃下げの悪循環」で経済がさらに冷え込むことが懸念されます。
税収が減り、震災復興や社会保障財源の確保にも逆効果です。政府は、今回の賃下げで年間2900億円の財源を確保するといいますが、税収が5401億円減少するという試算があります(労働総研、賃金を10%引き下げた場合)。
今回の措置は消費税増税のために「身を切る」ポーズを国民にみせることが動機になっていますが、「賃下げの悪循環」と消費税増税で二重の困難を労働者、国民に押し付けるものです。