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2012年1月20日(金)

繰り返すインサイダー疑惑

経産幹部 自ら救った企業株も

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 刑事事件に発展した経済産業省幹部によるインサイダー取引疑惑は、原子力政策に携わる資源エネルギー庁の前次長ということもあって、大きな衝撃を広げています。


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(写真)半導体大手「エルピーダメモリ」の本社が入居するビル=東京・八重洲

NECエレ株 → 合併公表前に

エルピーダ株 → 公的支援情報入手し

 資源エネルギー庁前次長の木村雅昭容疑者(53)の逮捕容疑は次のようなものです。

 木村容疑者は2009年当時、同省審議官として半導体業界を担当。同年3月上旬、半導体大手の「NECエレクトロニクス」と「ルネサステクノロジ」(合併、現ルネサスエレクトロニクス)が合併したことを知り、公表前の同4月21日から27日にかけ、NECエレ株5000株を約480万円で購入した疑い。

 同5月11日までには、国内唯一の半導体メモリーメーカー「エルピーダメモリ」が「改定」産業再生法にもとづく公的支援を受けて増資することを決定したことを知り、公表前の同月15日と18日に同社株計3000株を約300万円で買い付けた疑い。

 重大なことは、木村容疑者が、世界的な価格競争と08年秋の金融危機で経営難に陥っていた「エルピーダ」救済を所管審議官として指揮し、海外の業務提携先を探したり、日本政策投資銀行などとの融資交渉に臨むなど奔走していたことです。

 自分で救済のシナリオを作り、その株取引をして利益をあげる―。職務を利用して私腹を肥やした犯罪で、収賄といってもおかしくありません。

 しかも、産業再生法は、09年4月、自民、公明、民主などの賛成で「改定」され、大企業に、経営責任も問わず、返還のいらない公的資金を出資の形で投入できるようになりました。これまで、同法にもとづく公的出資がされたのは、エルピーダ1社しかなく、公的資金投入の正当性に疑問が出てきます。

 経産省の「身内に甘い」体質も問われています。

 同省では、1995年に「担当局や担当課が所管する業種に属する企業の株取引」などを禁止する規則が定められていましたが、株取引をめぐる不祥事は後を絶っていません。

 05年10月には、産業再生法にもとづく事業再生構築計画の審査を担当していた情報通信機器課の係長が、写真用品メーカーの関連会社による公開買い付け(TОB)情報をもとに株式を買ったとして、在宅起訴され、有罪判決が確定しています。

 この事件後、全職員に株取引の2年間の自粛を通知しましたが、禁止はしませんでした。

 木村容疑者の疑惑発覚(昨年6月)を受け、同省は昨年10月から全職員を対象に株取引の実態を調査した結果、特許庁の現職審判官ら2人が09年から10年にかけて審理や審査を担当した企業の株を取引し、利益をあげていたことがわかりました。

 経産省はじめ省庁には、企業から一般投資家には得られない内部情報が日常的に入ります。政治家も同様です。政治家、官僚の株取引は「自粛」ではなく、全面的に禁止すべきです。 (藤沢忠明)


 インサイダー取引 会社の経営・財務など投資判断に重要な影響を及ぼす未公開の情報を一定の立場ゆえに知った者が、その情報が公開される前に、その会社の株取引を行うこと。

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