2012年1月18日(水)
放射能拡散予測
住民より先に米軍提供
文科省、公表9日前に
文部科学省が、福島第1原発からの放射性物質の拡散方向などを予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI=スピーディ)の計算結果を、事故後、公表前に外務省を通じて米軍に提供していたことが明らかになりました。16日行われた国会の事故調査委員会で同省の渡辺格・科学技術・学術政策局次長が委員からの質問に答えました。
渡辺次長は「米軍には外務省経由で流れていたことを承知している。提供したのは3月14日。支援してもらうためだった」と述べました。スピーディの計算結果が公表されたのは3月23日で、米軍への提供より9日後ということになります。スピーディの計算が実施されていたにもかかわらず公表が遅れ、避難の際に活用されなかった問題については、政府の事故調査・検証委員会の中間報告でも「情報が提供されていれば、各地方自治体および住民は、より適切な避難経路や避難方向を選ぶことができた」と批判されています。
渡辺次長は「公表については認識がなかった。公表については原子力災害対策本部で検討することになっていたので、遅くなった」と述べました。
スピーディ 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムのこと。英語の頭文字をとってSPEEDI(スピーディ)と呼びます。放射線データ、気象データ、地形などをもとに放射性物質の拡散方向や被ばく線量の影響を予測計算します。1979年の米スリーマイル島原発事故を契機に百十数億円をかけて開発しました。SPEEDIの計算機は現在、財団法人原子力安全技術センターに設置されています。