2012年1月17日(火)
「君が代」訴訟
停職・減給取り消し
最高裁 「裁量権の逸脱」
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卒業式などで「君が代」起立斉唱やピアノ伴奏の職務命令に反したとして懲戒処分を受けた東京都の公立学校教職員ら計約170人が、都などを相手に処分の取り消しなどを求めた3件の訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は16日、停職処分を受けた1人と減給処分を受けた1人について、処分を取り消す判決を出しました。不起立をくり返すたびに重くなる処分に一定の歯止めをかけたものです。
判決は職務命令に反した不起立などの行為について「動機・原因は個人の歴史観・世界観等に起因するものであり、行為の性質・態様は積極的な妨害等ではなく、物理的に式次第の遂行を妨げるものではない」と指摘。「減給以上の処分を選択することについては、慎重な考慮が必要となる」としました。
そのうえで、不起立を4回繰り返した原告への停職1カ月の処分を「重きに失し、裁量権の範囲を超えて違法」と判断。損害賠償については高裁へ差し戻しました。また、過去に入学式での服装を巡って職務命令に反したとして戒告処分を受け、その後、不起立で減給1カ月となった原告への処分を同様に取り消しました。
一方、過去に「日の丸」を引き降ろすなどで5回の懲戒処分を受け、不起立で停職3カ月になった原告については、「処分は妥当を欠くものとはいえない」としました。さらに、戒告処分の取り消しを求めた168人の請求を退けました。
判決は5人の裁判官のうち4人の多数意見。宮川光治裁判官は、「不起立行為に対しては、戒告であっても懲戒処分を科すことは重きに過ぎ、社会通念上著しく妥当性を欠く」とし、懲戒処分はすべて裁量権の逸脱・乱用で違法だとする反対意見をのべました。
大阪条例案に影響
大阪市の橋下徹市長が率いる「大阪維新の会」は、職務命令に従わない職員を免職の対象にするとした条例案を府議会に提出しており、判決はこうした動きにも影響を与える可能性があります。