2012年1月16日(月)
「危機にある資本主義」
英国主要経済紙がシリーズ企画
格差拡大・高失業率…揺らぐ信頼
英国の主要経済紙フィナンシャル・タイムズが1月9日付から、「危機にある資本主義」と題したシリーズ企画を開始し、格差が広がり、高失業率、金融危機が続くもとで、資本主義への信頼が揺らいでいることを指摘しています。
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フィナンシャル・タイムズは世界中に読者を持つ国際的有力紙。同紙が個々の資本主義国の経済、金融戦略への言及だけでなく、資本主義そのものの「危機」を取り上げることは極めて異例です。
「5年前ならフィナンシャル・タイムズがこのような企画をすることなど考えられなかった」
シリーズ開始日に寄せた論評で、こう述べたのは、元米財務長官でハーバード大学学長も務めたローレンス・サマーズ氏。資本主義の牙城と言われた米国で、資本主義を肯定的に考えていない人が40%に達していることを指摘しています。
その背景について同氏は「不況の広がりと異常なほどの高失業率のもと、資本主義が雇用創出と中間層の生活水準向上に有効なのかという疑問が持ち上がっている」と分析しています。
同紙コラムニストのジョン・プレンダー氏は、昨年秋から欧米で広がった格差是正を求める「オキュパイ(占拠)」運動の広がりを念頭に置きながら、「強欲な銀行家、過剰なほど高収入の企業経営者、活力のない景気、高率なまま張り付いた失業率…。これらは街頭での抗議行動を引き起こし、発達した国で資本主義への不満を引き起こす原因となっている」と指摘。米国での最高経営責任者(CEO)と一般労働者との所得格差が、1965年の24倍から、2000年には299倍、10年には325倍へと跳ね上がり、格差拡大が無視できない状態になっていることを挙げています。
シリーズの執筆にあたっているのは、同紙のコラムニストや世界各地の国際金融・政治のリーダーたちです。
マレーシアで20年余りにわたって首相を務めたマハティール・モハマド氏は12日付で、かつて欧州資本主義諸国の工業製品は世界を席巻したが、第2次大戦後の日本の台頭に続き、今では韓国、中国などからの製品輸出が増えていると指摘。「欧州諸国は、急速にその市場を失っている。欧州中心主義を改めなければならない」と主張しています。
展開されている議論の中には、資本主義がもたらす弊害を認めつつも、「危機は資本主義そのものに対する告発ではない。いかに政策運営をするのか、改善方向を見いだすべきだ」(11日付、コラムニスト、ビクラム・パンディット氏)など、資本主義存続のために政策の見直しが必要との主張もあります。
同紙は、このシリーズを2週間は続けると予告しています。