2012年1月13日(金)
おかしいぞ 消費大増税
中止しかない「三つの大問題」
ムダ継続 八ツ場・原発・軍事費…
消費税増税の第一の大問題は、大型公共事業などムダづかいを続けながらの大増税になっていることです。
最大の目玉が…
2009年の総選挙で民主党は、「税金のムダづかいを徹底的になくし、国民生活の立て直しに使う」(鳩山由紀夫代表=当時)と公約。ところが、ムダをなくすどころか、いったんは中止したムダまで復活、新たなムダもつくりながら、増税を押し付けようというのですから、あまりにひどいやり方です。
なかでも怒りを買っているのが、八ツ場(やんば)ダムの建設再開です。総事業費約9000億円とされる八ツ場ダムは、民主党自身、「時代に合わない国の大型直轄事業」として、建設中止をマニフェストの筆頭に掲げていました。
ところが、前原誠司国交相(当時)は中止を表明したものの、まともな住民の生活再建策も示さず、流域の1都5県の反発に押され、再検証へ。野田政権では、国交省の筋書き通りに「建設再開」を決定。2012年度予算案では本体工事再開に56億円(国費)を盛り込んでいます。
民主党内でも「コアな支持者からも『ウソつき』と罵倒される。八ツ場ダム再開決定が痛かった」(衆院議員)と声があがるほどです。
地下40メートルに直径16メートルのトンネルを2本も通す東京外郭環状道路(練馬―世田谷間)も復活。自公政権時代につくられた9342キロメートルを超える高速道路建設計画を批判しておきながら、新規建設に何の歯止めもかけず、1メートル1億円以上もかかる外環道の予算化に踏み切ったのです。
それだけではありません。レベル7という最悪の福島第1原発事故を起こしながら、原発推進予算は4188億円も計上。高速増殖炉の研究開発費や立地対策費などほとんどそのままです。
新たなムダづかいもあります。野党時代に自ら批判していた「思いやり」予算などの米軍関係経費のうえに、1機100億円もする次期戦闘機(F35)の購入を決定。大企業・大資産家には年間5000億円の証券優遇税制を続けたうえ、新たに法人税減税で1兆2000億円もばらまきます。
こうしたムダづかいの一方での大増税には、どこにも「大義」はありません。
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社会保障 切り捨てフルコース
第二の大問題は、「税と社会保障の一体改革」といいながら、社会保障の「改革」メニューは切り捨てばかりだということです。
当初、「一体改革」としたのは「消費税を増税して社会保障を維持・充実」するということでした。
ところが、すったもんだの末、政府・民主党が行き着いた「一体改革」素案の中身は、全分野、全世代にわたる社会保障改悪のフルコースでした。
高齢者には負担増と給付減のオンパレードです。年金では、消費税率10%への増税を実施する2015年までに、総額2兆円に迫る大幅削減を押し付けます。医療でも、70〜74歳の患者負担の2倍増(1割↓2割)を13年度にも強行する構えです。介護保険でも、要支援者や一定所得者の利用料を2倍(1割↓2割)に引き上げるなど、6項目もの負担増を狙います。
民主党の公約の目玉だった後期高齢者医療制度の「廃止」も投げ捨てて、看板のかけかえでごまかします。
若い世代はどうなるか。政府は「全世代対応型の社会保障」をつくるといいます。しかし負担増と給付減はむしろ若年層の現在と未来に最も過酷に襲いかかります。
もらえる年金額は激減します。「マクロ経済スライド」の名で年々減らし続け、現役世代の収入の約6割あった水準(所得代替率)を4割程度まで切り下げることを狙います。支給開始年齢を68〜70歳に先延ばしすることまで検討します。
子育て支援を強調しますが、「子ども・子育て新システム」の導入によって、保育を提供する公的責任を放棄。保育の確保を保護者の「自己責任」にします。
消費税を大増税すると同時に、社会保障も最悪の水準に切り下げる「一体改悪」にほかなりません。
安住淳財務相は「(一体改革で社会保障が)何かこれでよくなる、もっとすばらしいものになるというふうな誤解を受けている」「事実関係を国民に分かってもらう努力が足りないと思っている」(11年11月29日の参院財政金融委員会)と本音をもらしています。
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日本経済 どん底へ 復興に逆行
第三の大問題は、日本経済をどん底に突き落とすことです。消費税率10%への増税で13兆円、年金の支給減などを合わせると16兆円もの国民負担増になります。かつて経験したことのない負担増は、東日本大震災の被災地の復興に逆行し、消費をいっそう冷え込ませます。
1997年4月、消費税率が3%から5%に引き上げられたときの負担増は、消費税だけで年間5兆円、所得税の特別減税の打ち切りや医療保険の改悪を含めると9兆円にのぼりました。
当時、日本共産党は、このような負担増を実行したら家計が底割れし、「日本経済のかじとりを根本から誤らせる」(志位和夫書記局長=当時、衆院予算委員会総括質問)と指摘し、撤回を求めました。当時の橋本龍太郎首相は、増税が家計に影響を及ぼすこと自体は否定できませんでしたが、「景気は回復傾向にある」として、増税を強行したのです。
その結果、1世帯当たりの消費支出は97年をピークに下がり続けます。日本チェーンストア協会の調査では、97年に16兆8636億円あった加盟店の販売総額は急激に下がり、2010年には97年の7割程度まで落ち込みました。
企業の経営にも悪影響が広がりました。97年の消費税増税以来、国内総生産(名目値)は42兆円も減少しています。
10年の雇用者報酬は、97年当時と比べ約34兆円も減少し、さらに減少傾向が続いています。
昨年の東日本大震災では、被災地を中心に雇用・経済状況は悪化が続いています。民間信用調査会社の東京商工リサーチによると、11年中の震災関連倒産は累計で532件と阪神・淡路大震災時の約4倍に達しています。
日本経済がこんなに苦しんでいる状態の時に、今後16兆円もの負担増は、97年当時以上の大きな影響を家計に与えることは必至です。結局、税収も上がらず、財政再建もいよいよ行き詰まってしまいます。
日本経済を破壊する負担増は、とんでもない暴挙です。
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共産党の考え
ムダ一掃、増税するならまず富裕層と大企業に
「消費税を引き上げなければ、社会保障が破たんする」などと、増税勢力は宣伝しますが、とんでもない暴論です。消費税こそ、社会保障にもっともふさわしくない税金です。社会保障の財源は、能力に応じた負担の原則を貫くべきである、というのが日本共産党の考えです。
大企業、大資産家への新たな減税を中止すれば、1・7兆円の財源が生まれます。軍事費、大型開発、原発関連予算、政党助成金などの歳出のムダにメスを入れることが必要です。さらに、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革を進めることが必要です。富裕層への課税強化は世界の流れです。今、日本の大企業がもうけをため込んでいることが、経済の循環を目詰まりさせています。大企業に応分の負担を求め、経済の循環を活性化させることが重要です。
そして、国民全体で社会保障の抜本的な拡充財源を確保するための所得に応じた負担を求める税制改革を行うことです。
これらの内容で財源を段階的に確保してこそ、段階的、連続的に社会保障を拡充することができます。そして、このことは、日本の経済と社会のあり方を変える歴史的課題です。