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2012年1月11日(水)

東日本大震災10カ月

ワカメ養殖 若い世代も

漁業者 再生へ自らの手で

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 「みんなでがんばっぺし」。東日本大震災から11日で10カ月がたちます。津波被災地の生業(なりわい)再建の進ちょくがみられないなか、漁業者自身が復興計画をたて、力を合わせて生業の再生へ踏みだしています。宮城県石巻市の小渕浜を訪ねました。(浜島のぞみ)


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(写真)津波で流された獅子頭が復元され、喜ぶ住民たち=5日、宮城県石巻市

宮城・石巻市小渕浜

 小渕浜は石巻市の牡鹿半島南部に位置します。カキやワカメの養殖、漁船漁業、水産加工業が盛んで158世帯578人が暮らしていました。東日本大震災の津波で8割の家が浸水、地盤沈下で港に漁船が接岸できなくなる被害を受けました。

 小渕浜では養殖のノリ、ワカメ、カキなどの種付けを、被害を免れた船を出し合って共同で進めています。なかでもワカメの養殖施設は三陸で最も早く元通りになりました。後継者の若い世代も育っていることが復興への活力となっています。

 昨年5月には養殖用のイカリを中国に出向いて発注してきました。12月、がれきを撤去し整地した場所に水産加工場のプレハブが建ち、ワカメを塩蔵するコンテナが置かれました。海産物販売を手がける男性(73)は「ここの人(漁師)たち団結力あっからね、共同でやってるんだべちゃ」と笑います。

 一方、漁業再生へ気がかりなことも。男性(59)は「ノリやワカメが、おがる(大きくなる)までだいぶ時間がかかっている」と話します。1メートル20センチも海底が地盤沈下し、必要な日照と酸素が不足しているのです。

 共同で種付けをしたワカメの収穫を2月に控えます。「出荷できたとしても三陸のものを消費者は受け入れてくれるのか」と不安を口にするのは養殖漁業の男性(45)です。晴れた日は牡鹿半島から福島第1原発が見えます。「放射能汚染とがれき。汚い水が流れて漁業のイメージが悪くなる。ワカメが復興すれば小渕浜はすぐ立ち直るんだが」とくやしそうに話します。

 漁船漁業を代々営む男性(62)は、「先祖から築き上げてきた作業場や道具を流されてゼロになったところから、元に戻すなんてきつい。昔は単価も(良い値で)あったから借金しても返せたが、今はとても…。家屋とちがって作業場の損壊は何の補助もなく、自力で再建するのは難しい。まずは集団移転を早く進めて、自分の家で暮らしたい」と話します。

まとまって仮設入居

顔見知りばかり、孤独感なし

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(写真)地元でまとまって入った仮設住宅の集会所で語る住民たち=5日、宮城県石巻市

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(写真)津波の被害を受けた小渕浜の漁港=石巻市

 漁業の再生を進める宮城県石巻市の小渕浜。住まいの再建も住民自身の手で進めています。集団高台移転を軸に、避難生活から仮設住宅設置に至るまで、コミュニティーの存続を重視してきました。

助け合う習慣

 同地区では、8割が浸水しました。公民館も浸水して避難所に使えなかったため、400人の被災住民は残った民家や作業場に避難しました。漁船漁業を営む男性(59)はワカメの作業場にブルーシートを敷いて3世帯14人で避難生活を送りました。「海さ行くと、助け合わないと港に帰れない。困っていたら助け合うことが習慣だから、寒かったが孤独感はなかった」と話します。

 海産物販売を営む男性(73)の自宅は海岸から近く、津波で流されました。「数日間、食べ物を分け合って過ごしました。道路や電話が通じたのは2カ月後だ」と話します。支えあった避難生活で結束がよりいっそう強まりました。

 「この絆を断ち切ることはできない。だから仮設住宅も分散させてはならないと行政に民有地を活用した仮設建設を求めました」というのは91世帯120人が暮らす地区の仮設住宅の石森政彦さん(69)=小渕行政区長=です。高台でまとまった面積を確保できる場所の一部は石森さんの所有する土地だったからです。

 しかし、仮設住宅を建てるにあたって調査にきた県と市は、国有地利用が原則との建前を譲らず、4月下旬になっても計画は進みませんでした。

民有地を活用

 石森さんは相談活動にきた東京の弁護士に「コミュニティーをこわすことはできない」と訴えました。この弁護士の尽力により国は県に民有地の活用を認める通達を出しました。

 こうして、9人が土地を無償提供し、住民がまとまって入れる仮設住宅が完成しました。「ひとり暮らしの人がいても、みな顔見知りだからお茶っこ飲んだり、声かけあったりして孤独ということは絶対ありません」と石森さんは胸を張ります。

 小渕浜地区では、住宅再建について意向調査を実施したうえで高台集団移転の合意を形成し、今年早々にも候補地を決定、仮設住宅を建てた12〜14メートルの高台に災害復興住宅を建設する予定です。「漁師は日に何度も海と天気を見て判断する。海が見える家でないと仕事になんねえんだ」と漁師たちは強調します。

やる気応援するのが行政

 三浦一敏・宮城県議(石巻・牡鹿区選出)の話 日本共産党は小渕浜に支援物資や炊き出し、漁具運搬のためのリフトを贈るなど支援しました。県も来年度までに沈下した岸壁のかさ上げなどを大規模に行います。見違えるように回復するのが楽しみです。小渕浜の人たちは結束が強く、自分たちで再建をめざしています。生業の回復のためには復興住宅を早期に整備し、暮らしの土台をつくること、漁師のみなさんのやる気を行政が応援することが求められます。党県議団は県内142の漁港のすべての作業場の整備を行うよう求め、一部の漁港にとどめようという県知事の姿勢を是正させました。党議員団は今後も、漁業の復興へ全力を尽くします。

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