2012年1月10日(火)
米石油大手の賠償請求拒否
ベネズエラ大統領 「税払わず大もうけ」
【メキシコ市=菅原啓】南米ベネズエラのチャベス大統領は8日、2007年の外国石油企業の「国有化」政策に対して、米エクソンモービル社が要求している巨額の補償金支払いを拒否するとともに、南米独自で経済紛争を解決する機関を作る必要性を改めて強調しました。
チャベス政権は07年、同国で操業している外国石油企業の子会社の株式の過半数を国営ベネズエラ石油(PDVSA)が取得する「国有化」政策を発表。エクソンモービル社はこれを不当として補償金約120億ドル(約9200億円)を要求し、世界銀行付属の国際投資紛争解決センター(ICSID)に提訴していました。
ベネズエラ側は、パリに本部を置く別の紛争解決機関、国際商業会議所(ICC)に問題を提起。ICCは最近、エクソンモービル社への補償金を約9億ドルと算定し、諸経費を差し引いた2億5000万ドルの支払いをベネズエラに求める勧告を発表しています。
ベネズエラはこの勧告に従う意思を明らかにしていますが、エクソンモービル社は同意せず、2月にも結論が下されるICSIDの判断を待つ構えです。
チャベス大統領は8日放送の国営テレビ番組「アロ・プレシデンテ」の中で、エクソンモービル社が過去50年間、税金も払わず大もうけしてきたと指摘し120億ドルの要求の不当性を訴えました。
米国が決定的な影響力をもつICSIDがいかなる裁定を下そうとも、ベネズエラとしては従わず、場合によってはICSIDからの脱退もありうることを示唆しました。
ICSIDに関しては、天然資源の国有化措置をめぐる訴訟で多国籍企業寄りの判断を下すことが多く、南米諸国の間で批判の声が高まっています。エクアドルのコレア大統領は、南米諸国連合(UNASUR)の中に、経済紛争解決のための機関を創設することを提案しています。チャベス大統領は、エクアドルの提案を支持する考えを改めて表明しました。