2011年12月30日(金)
仮設住宅 防寒工事終わらず越年も
県ごとに異なる対策
被災者の生活の場である仮設住宅。みな同じような外見ですが、実際には県ごとに設備や構造が異なります。県によっては、寒さ対策の工事が終わらないまま年を越す被災者も―。仮設を訪ね、その課題を探りました。 (本田祐典)
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仮設の構造で、もっとも大きな問題は、断熱材の厚さや風除室の設置など寒さ対策です。
3月11日の東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の仮設と、翌日の長野県北部地震(最大震度6強)で被災した長野県栄村の仮設を比較すると違いは歴然です。(表)
とくに対策が遅れる宮城県では、年の瀬を迎えても約2千戸で風除室の設置が終わりません。
風除室は雨や風の吹き入れを防ぐために玄関前につくる小部屋で、福島県では建設当初から仮設に設置しました。
風除室がない宮城県石巻市開成仮設団地の女性(78)は「エアコンをつけても温かくならない。電気代も大変」。
訪ねた日の午後4時、エアコンを27度に設定しても、プレハブ仮設の室温は12度までしかあがりません。肌を刺すような冷気が玄関の隙間から入ります。
東北3県の仮設は計約5万2千戸。その住み心地を左右したのは各県の姿勢です。
劣悪な仕様
震災後、東北3県は事前の協定にもとづき、大手メーカーなどでつくるプレハブ建築協会(プレ協)に仮設を依頼しました。このときプレ協は早期着工を理由に、断熱材が少ないなど寒さ対策が不十分な仮設を認めることを各県に押し付けました。
プレ協の劣悪な仕様を積極的に受け入れたのが宮城県です。仮設のほぼすべてをプレ協に発注し、建設後も「断熱材の追加や風除室は必要ない」と10月まで寒さ対策工事の着工を遅らせました。
一方、岩手、福島の両県では木造など多様な仮設が各地につくられています。岩手県はプレ協の仮設を半数に抑え、福島県はプレ協が6割強です。両県とも残りは、寒さに配慮した仮設を地元業者に発注しました。
なかでも福島県は地元工務店や大工などに木造の仮設約6千戸を発注し、断熱にも地元の工夫をいかしました。地域経済の活性化と仮設の環境改善につながる、「福島方式」として注目を集めます。
また、プレ協のメーカーによる仮設でも、長野県栄村は建設当初から寒さ対策が充実しています。83歳の女性は「狭いが、温かさは問題ない」といいます。長野県が中越沖地震(2007年)の仮設をモデルに、建設当初から断熱材を厚くすることをメーカーに要求したからです。
改善を要望
宮城県石巻市内5カ所の仮設自治会でつくる石巻仮設自治連合会の後藤嘉男座長(万石浦公園仮設自治会長)は、「宮城県は何もかも対応が遅い。栄村の仮設にある孤独死を防ぐ緊急ブザーも市に要望したところだ。今後は他の自治会と情報交換、連携しながら改善を要望していきたい」と話しています。
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