2011年12月28日(水)
原発 懸念する米社会
運転延長・処分場計画難航
福島事故受け知事・上院議員も
【ワシントン=小林俊哉】福島第1原発事故をうけ、米市民の間でも原発の安全性に大きな懸念が生まれる中、米国の既存の原発・核関連計画に批判が高まったり、難航するものが出ています。
一つは、ニューヨーク市の中心マンハッタンから70キロメートルと程近い、インディアンポイント原発群です。同原発は200万キロワット以上の発電能力を持ちますが、運転許可が2013〜15年の間に相次いで失効します。
同原発を所有する電力会社エンタージーは米原子力規制委員会(NRC)に20年間の運転許可延長を申請。これに対し、クオーモ・ニューヨーク州知事を先頭に強い反対論が出ています。
ビクター・ギリンスキー元NRC委員は地元紙ニューヨーク・タイムズ(17日付)に「インディアンポイント原発は次の福島か?」と題して警告文を寄稿。福島での事故を教訓に、「(事故が起これば)多くの人々が二度と家に戻れなくなるかもしれない」「(米国最大都市の近くに)そのような脅威を許すのはナンセンスだ」と批判しています。
米国には高レベル放射性廃棄物の最終処分場がありません。米国本土内の核実験は先住民の居留地で強行された歴史を持ちますが、現在の核廃棄物最終処分場計画も先住民の「聖地」の一つとされるネバダ州ユッカ山を候補地としています。
しかし、激しい反対運動を受け、同州選出のハリー・リード民主党上院院内総務らが計画の廃棄を主張。いま廃棄物処理場の新候補地として上がっているのが、南部ジョージア州から北東部メーン州にいたる花こう岩を地盤とする地帯です。
欧州の一部で花こう岩地盤の地底深くに廃棄物を埋める例があることから、エネルギー省が注目しているといわれますが、住民の理解を得られません。米メディアは、地震がほとんどないとされるニューヨーク州から北東部諸州でも、スリーマイル島事故などの教訓から歴史的に原発反対運動が強いと指摘しています。
福島事故の教訓は、国立核研究施設の新規建設計画にも影響しています。ニューメキシコ州ロスアラモス研究所は、60億ドル(4700億円)規模の新しい核研究施設建設計画を推進していますが、“福島の二の舞いにならないか”との懸念が出ています。
エネルギー省核安全保障局(NNSA)は計画を推進しますが、原発監視団体「シティズンズ・アクション」のデービッド・マコイ氏は最近の公聴会で、震災リスクなどの検討が十分でないとして、「(NNSAは)公衆を危険にさらそうとしている」と批判しています。