2011年12月26日(月)
文科省 「原子力村」研究会資料を開示
幌延核処分場部分“黒塗り”
住民拒否でも誘致 意図裏書き
文部科学省はこのほど、本紙の情報公開請求に対して、原子力政策の中枢にいた政官財関係者による「島村原子力政策研究会」の議事録を初めて開示しました。旧科学技術庁の原子力局長などを歴任した故・島村武久氏が1985年から94年にかけて開いた勉強会の録音を起こした620ページの資料で、「原子力村」の本音がつづられています。
ただ、「公にすることにより国の事業遂行に支障を及ぼすおそれがある」との理由から、北海道幌延(ほろのべ)町の放射性廃棄物貯蔵・処分問題の経緯などを不開示としました。一方、島村研究会の議事録は都内の財団法人も保管しており、閲覧も可能です。これと照合すると、不開示部分の内容が判明しました。
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ここでは、東京電力の豊田正敏元副社長が、「最初に動燃が地元(幌延町)に提案したのは、高レベル廃棄物の貯蔵施設と地下研究施設とであって、その下心としては地下研究施設がうまくいけば、次には実際の処分場の提案を考えていた」と述べています。
同町では80年代、廃棄物貯蔵施設の誘致問題が起きましたが、住民の反対が強く、核廃棄物を持ち込まないことを条件に、高レベル廃棄物の最終処分を研究する「幌延深地層研究センター」(独立法人・日本原子力研究開発機構)の建設で決着しました。
しかし、最近、最終処分場の建設が急浮上。宮本明町長は今年6月の町議会で、日本共産党の鷲見悟町議の質問に対し、「今後の検討課題」と述べ否定しませんでした。
豊田氏の証言は、この経過と合致します。ただ、豊田氏は別の不開示部分で、「(幌延町は)地下水がだぶだぶしてて、あんなところ駄目だと思ってた」「やっぱり北海道のもっと違った場所にいい所があったんです、厚岸(あっけし)湾」と否定的な見方を示し、雪の少ない北海道東部の厚岸湾を推しています。
鷲見町議は「実際、幌延は地盤が弱く、地層研究センターが研究用に孔(あな)を掘るたびに1日170〜180トンの地下水があふれ出す。豊田氏の発言を公表したくないのが、文科省の本音だったのでは」と指摘します。
近づけば20秒で致死量に達する放射線を放つ廃棄物を地中に半永久的に保管する最終処分場。文科省の「黒塗り」で、逆に、幌延町が有力候補地であることが浮き彫りになりました。