2011年12月23日(金)
主張
介護保険改悪
利用者・家族にまた負担か
野田佳彦内閣が介護保険制度の大改悪をすすめています。同内閣が年内の素案策定をめざす「社会保障・税一体改革」では、介護保険制度の「効率化」、「給付の重点化」を掲げ、介護サービスの大幅な抑制と利用者負担増の方向を打ち出しています。「保険あって介護なし」という深刻な現実をますます悪化させる内容です。介護される高齢者、介護する家族、介護労働者などにさらに犠牲を強いる制度改悪をすべきではありません。
「軽度者」の排除
政府は「一体改革」のために6月に決めた「成案」で、「団塊の世代」が75歳を迎える2025年に「要介護者の伸びを抑制」「要介護認定者数を現行ベースより3%程度減少」という項目を盛り込みました。“抑制先にありき”という目標を掲げ、機械的に利用者を抑え込むことは、介護を必要とする人たちを制度から排除することになりかねません。
厚生労働省が、「一体改革」方針に基づき“介護の抑制メニュー”を次つぎと具体化し、来年の通常国会に提出する方向で検討していることは重大です。
その柱の一つは、「軽度者」に負担増を強いる方向です。▽要支援1、2の人の利用料負担を1割から2割にする▽要介護1、2の人の施設利用料を引き上げる―というものです。「軽度者」に負担を強いることで、利用者を抑えるのが狙いです。「軽度者」がサービスを受けられなくなることは、介護・生活援助の利用によって防がれていた重度化を進めることで、本末転倒のやり方です。
来年4月から実行しようとしているホームヘルパーの掃除・洗濯などの生活援助の提供時間を60分から45分に短縮する改悪も利用者の自立を妨げるものです。45分ではこれまで通りの援助はできません。中止すべきです。
年収320万円以上の人の利用料の1割から2割への引き上げ、ケアプラン作成の有料化なども検討されています。来年4月からは65歳以上の保険料が平均月5000円を突破する事態になっています。これに加えて高い利用料負担では、とても安心してサービスは受けられません。
「在宅」強化を打ち出し、施設利用者抑制を強めていることは重大です。政府は、特別養護老人ホームなどの利用者数が15年に115万人になると推計し、「改革」によって106万人に抑え込むなどして公費1800億円を削減するとしています。
いまでも全国で42万人を超える人たちが特養に入れずに待機しているのが実情です。今後、施設介護が必要な人たちがますます増えるのは確実です。強化するという「在宅」サービスの仕組みは、給付抑制を前提にした体制です。公費削減のために施設利用の抑制計画をすすめ、行き場を失う「介護難民」を激増させることは許されません。
「安心」の制度にこそ
家族の介護のために年間14万人以上が仕事を辞めているといわれています。公的な介護保険の改善・充実は、介護による家族の負担を減らすだけでなく、介護分野での新たな雇用を生み出すなど内需拡大の上でも重要です。介護崩壊を加速させる「一体改革」ではなく、国庫負担の増額などによる充実こそが求められています。