2011年12月23日(金)
被災地“仕事ない”
年の瀬の宮城で聞く
“働きたいのに…政府は実態見て”
東日本大震災から9カ月。被災地では、復旧・復興にむけた努力が続けられる一方、被災者の生活再建の土台となる雇用は依然、深刻です。年末を控えた宮城県で実態を取材しました。 (関連記事)
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「低賃金の求人が多く、希望の仕事が見つからない」(27歳、男性)、「期間社員や復興関連の建設業の求人ばかり。不安定な雇用、自分には勤まらないような求人ばかり」(44歳、女性)―。ハローワーク石巻に仕事を探しに来た被災者は、一様に雇用状況の厳しさを口にします。
総務省の労働力調査(10月分)では、宮城県の失業率は7・5%で、被災3県を除く全国の失業率4・5%を大きく超えています。
支えの失業給付
被災者の生活を支えているのは、雇用保険です。政府は震災を受け、給付期間を延長する措置をとってきました。小宮山洋子厚生労働相は11月22日の記者会見で、「今後は就労支援の方に切り替えていきたい」と述べ、これ以上の延長はしない方針を表明、その理由として「ずっと失業手当でやることによって、就労意欲が薄れるのではないかという話もある」と語りました。
早い人で来年1月末から失業給付がなくなる切迫した状況に追い込まれています。「働く意欲が薄れる」という政府の主張に、ハローワークで仕事を探す被災者は「働きたいのに、仕事がない。政府は実態をよくみてほしい」という怒りの声をあげています。
宮城県では、求職者1人に対して仕事がいくつあるかの割合を示す有効求人倍率は10月で0・74でしたが、このうち正社員は0・41。大きな被害を受けたハローワーク石巻管内では0・61ときわめて深刻です。
短期契約の求人
求人内容についてハローワーク仙台の担当者は「建設、土木、警備など復興型求人がのびつつあり、6カ月から1年の契約が多い。これでは求職者の要求とは離れている」と指摘します。
復興事業ではこれまで、がれき撤去作業が日給6000円前後など、劣悪な低賃金の状況がありました。改善にむけた全日本建設交運一般労働組合(建交労)などの運動と日本共産党の奮闘で、環境省は11月、災害廃棄物の処理にかかわる労働者の賃金が適正な金額で払われるよう求める指針を出しました。
建交労宮城県本部の鈴木一利書記長は、「指針が出てから、日給8000円程度に上がっている」と語ります。
一方で、県や仙台市が発注した仮設住宅の防寒工事や家屋解体で下請け業者に対する不払い問題が起きています。元請け企業から実際に作業する会社の間に、口利きだけでピンはねするブローカーが多数介在する重層下請け構造が背景にあり、低賃金の温床ともなっています。 (行沢寛史)