2011年12月20日(火)
主張
給付制奨学金
学ぶ権利を保障するために
来年度予算の概算要求で、高校・大学生むけの給付制奨学金が盛り込まれ、国民のなかで実現への期待が高まっています。ところが、政府内で、これを見送る動きが強まっています。学ぶ権利を保障するために、給付制奨学金はなんとしても実現させるべきです。
世界では常識の制度
世界では教育を受けることを欠かせない権利と認め、経済的理由で学業をあきらめる若者を一人もださないように給付制奨学金をつくることが常識になっています。
現にこの制度は、経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国のうち28カ国に広がっています。学生の受給割合は、判明している16カ国で平均4割となっています。大学授業料無償化の国も15カ国です。授業料が無償でないうえに給付制奨学金がないのは日本だけです。
高学費の日本は、高校と大学に通わせるのに1000万円もかかります。低所得者世帯の負担の限界をこえています。東京大学の小林雅之教授らの調査によると、年収1000万円以上の家庭の高校生の大学進学率が62%に対し、年収400万円以下は31%にとどまっています。卒業後の厳しい雇用状況を目の当たりにして奨学金を借りることを躊躇(ちゅうちょ)する若者も広がっています。現在の貸与制奨学金だけでは、学ぶ権利を保障できないことは明らかです。
貧困と格差が広がり、卒業後、就職ができなかったり、非正規雇用となったりする若者が増えるなかで、給付制奨学金の実現は、文字通り待ったなしの課題です。被災地からも「返済に不安があるから奨学金を申し込めない」と悲痛な声が寄せられています。大震災からの復興が急がれるもとで、いっそう切実です。
ところが「予算編成に関する政府・与党会議」の実務者会合は、「無利子奨学金制度を拡充する」ことを口実に給付制奨学金を見送る最終報告をまとめました。これは、貧困と格差が広がる日本の現状を無視し、被災者の切実な願いを踏みにじるものです。最終判断をする野田佳彦首相は、給付制奨学金を予算に盛り込むべきです。
民主党政権が、貸与制奨学金のローン化をさらに進めようとしていることも重大です。行政刷新会議が、日本学生支援機構の奨学金制度を金融事業として「抜本的な見直しと効率化」を求めるとし、財政制度等審議会では、「貸与時の審査を充実させる」と議論しています。これは、政府の負担を減らすために、奨学金を金融事業とみなして、奨学金の有利子化やブラックリスト化など滞納者へのペナルティーの強化をすすめてきた自公政権の構造改革路線をいっそう進めるものです。
誰もがお金の心配なく
高学費と奨学金のローン化をすすめてきた自公政権に対し2009年の総選挙で退場の審判が下り、いまやほとんどの政党が給付制奨学金の実現を主張しています。古い政治と決別し、「誰もがお金の心配なく学べる社会」へと前進する一歩として、給付制奨学金の実現、貸与制奨学金の無利子化、返済猶予制度の拡充を強く要求します。
こうした方向こそ、若者に安心と希望をもたらし、21世紀の日本社会の発展のいしずえとなることは間違いありません。日本共産党は、その実現のために全力をつくす決意です。