2011年12月18日(日)
4中総決定の用語解説 2
第1章
1996年の「SACO合意」
1995年の米兵による少女暴行事件をきっかけに、沖縄の米軍基地見直しのために設置された「SACO」(沖縄に関する特別行動委員会)は、96年の最終合意で、11の基地の「整理・縮小」を名目に、「代替」基地の建設など、沖縄県内での「たらい回し」を取り決めました。
普天間基地は返還されることになりましたが、新たな海上施設を「沖縄本島の東海岸に建設する」という「県内移設」条件つきでした。この合意に「たらい回しでなく撤去を」と反対をつらぬいた政党は、日本共産党しかありません。
沖縄県民のなかには、合意によって分断がもちこまれましたが、2010年の名護市長選、沖縄県民大会、県知事選などを通じて、「県内移設・新基地建設反対」は島ぐるみの総意となっています。
憲法審査会の始動と明文改憲への動き
2007年に制定が強行された「改憲手続法」は、具体的な改憲原案を審議し、国民投票に付する改憲案を決定する機関として、衆参両院に憲法審査会を設置するとしています。
日本共産党は、「国民は改憲を求めていないし、改憲手続法がないために国政に齟齬(そご)が生じた事実もない。同法制定は、憲法の平和的・民主的諸原則を改悪するための手続きをつくるのが目的だ」として、同法の制定にも、憲法審査会の設置にも強く反対しました。
これまで国民の強い反対にあって、審査会は「開店休業」状態にありましたが、今、この審査会の運営規定を定め、構成メンバーをそろえて、実際に始動させる企てが強まっています。
橋下・「大阪維新の会」
2010年4月に橋下徹大阪府知事(当時)が中心になって結成した地域政党で、橋下氏が代表です。
「日本の政治のなかで一番重要なのは独裁です」(橋下氏)と公言し、2011年4月の大阪府議会、大阪市議会、堺市議会の選挙などに候補者を擁立。大阪府議会で過半数を占めると、突如「君が代」起立強制条例を強行しました。
11月には、「独裁3点セット」をかかげて、大阪府知事・市長の同時選挙を実施させ、知事に「維新の会」幹事長の松井一郎氏、市長に橋下徹氏が当選しました。4中総決定は、「地方からファッショ的な独裁政治の拠点をつくり、国政に広げようというきわめて危険な動き」と指摘しています。
「独裁3点セット」
橋下・「大阪維新の会」が制定をめざす、憲法じゅうりんの三つの構想・条例です。
(1)「大阪都構想」――大阪府と大阪市が持つお金と権限を「一人の指揮官」に集中することをめざす独裁構想です。
(2)「職員基本条例案」――民主主義や福祉を大事にするなど、橋下氏らの言いなりにならない職員は「職務命令」違反でクビにできる独裁条例です。自治体職員が多様な意見を持つことを敵視。「全体の奉仕者」という憲法の規定にも反します。
(3)「教育基本条例案」――「教育目標」は知事が決め、その目標に沿って教職員に絶対服従を強要します。教員は「S」「A」「B」「C」「D」の5段階で評価され「D」が2回続くとクビにされます。教育に政治の不当な支配・介入を持ち込むものです。
第2章
電力業界の「原発埋蔵金」などを活用した「基金」を創設
日本共産党が10月7日に発表した「大震災・原発災害にあたっての第3次提言」で、原発災害対策の財源として提案しました。
東京電力をはじめ電力業界は、原発の運転と核燃料サイクル計画推進などのために、その費用を電気料金に組み込んで、「使用済み核燃料再処理等積立金」など約19兆円もの積み立てを将来にわたって行うこととしています。すでに4・8兆円の積立残高があります。
使用済み核燃料の再処理と核燃料サイクル計画は、それ自体が危険きわまりないものであり、すでに破たんが明瞭で、中止すべきものです。そこで「積立金」を国が一括して管理する基金に移し、「原発賠償・除染・廃炉基金」を創設して、活用するという提案です。
政府の「中間指針」
文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が、東京電力福島原発事故による損害賠償の範囲を検討し策定したのが、賠償の大枠を示す「中間指針」です。「中間指針」は、「事故に起因して実際に起きた被害のすべてが、原子力損害としての賠償の対象となるものではない」とするなど、全面賠償を否定する内容となっています。
東電は、賠償の負担を小さくするために、賠償の範囲を「中間指針」のなかに抑え込もうという姿勢です。自主避難者への補償に関しても東電は言明を避けてきました。この姿勢に、事故の被害者側から、東電は「(事故を起こした)当事者意識に欠ける」(福島県・佐藤雄平知事)というきびしい批判が出ています。
定期検査中の原発の再稼働問題
原発は電気事業法施行規則にもとづいて、13カ月に1度、定期的に停止し検査することが定められています。
福島の原発事故を契機に、定期検査後、原発を再稼働することへの不安が住民に広がり、知事や地元市町村長も再稼働を容認できなくなりました。九州電力玄海原発の再稼働をめぐり、九電が社員や関連会社に再稼働に賛成する「やらせメール」を送らせたことが発覚。国の規制機関である原子力安全・保安院までもが「やらせ」に関与していたことも分かり、国民の不信は高まっています。
このままでは現在54基ある原発のなかで、今年12月末で稼働しているのは6基に、来年4月中には残り1基(北海道電力泊原発3号機)となり、それも9月に検査で停止します。
混合診療の全面解禁
混合診療とは、保険診療と保険外診療(自費診療)を併用することで、現在は部分的にしか認められていません。それは、必要な医療をすべて保険で認めるということが公的医療保険制度の原則であり、安全性や有効性が確認された治療や医薬品を公的医療保険に組み入れることが国の責任だからです。
混合診療の全面解禁とは、保険外診療を国が全面的に認めるということであり、医療のなかに保険のきかない部分を増やしていくことになります。新たな治療や医薬品が開発されても、お金のあるなしで治療に差別が持ち込まれ、国民皆保険制度がこわされます。TPPは混合診療の全面解禁に道を開くことになるので、医師会はじめ多くの医療団体が反対しています。
米国からみて「非関税障壁」とされるあらゆる国内制度の撤廃
「非関税障壁」とは、自由貿易をすすめる上で関税以外に規制になる政策・制度のことです。
アメリカ政府は、これまでもその規制の緩和・撤廃の要求を強めてきました。2011年に「米国通商代表部外国貿易障害報告書」が日本に対してもとめた規制撤廃の要求には、牛肉輸入の月齢制限の撤廃、農薬残留や食品添加物など食の安全基準の緩和、郵政や保険、共済などの競争条件をアメリカ企業と同等にする、営利企業が病院経営に参入できるようにする、政府調達(公共事業)への外国企業の参入条件を緩める、などがあります。
国民の暮らしや地域経済振興のための制度が多く含まれており、TPPへの参加にあたってアメリカが撤廃を求めてくることは明らかです。