2011年12月17日(土)
4中総決定の用語解説 1
第4回中央委員会総会決定の用語解説を4回にわけて掲載します。
第1章
住民合意を無視した上からの財界本位の計画の押し付け
未曽有の被害となった大震災・原発事故。復興にあたっては、(1)被災者が再出発できる生活基盤を回復する――生活と生業(なりわい)の再建、(2)復興のすすめ方は「計画をつくるのは住民合意で、実施は市町村と県・国が連携して、財政の大半は国の責任で」を原則にすることが大切です。
ところが政府の「復興構想会議」の「提言」は、財界が求める農林水産業への「民間企業の参入」「大規模化」「集約化」を上から押し付けようというものです。「水産特区」の押し付けは、その表れです。
仮設住宅建設やガレキ処理などの復興事業を地元企業でなく県外大企業に丸投げするなど、大震災に乗じて大企業のもうけ口を増やすこともおこっています。
APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議
アジア太平洋経済協力会議(APEC)は、経済協力に関する閣僚会議として1989年に発足しました。93年から当時議長国だった米国の提唱で首脳会議が始まりました。日本、カナダ、オーストラリア、中国、韓国、ベトナム、メキシコなどアジア太平洋の21の国と地域が参加し、GDP(国内総生産)で世界全体の5割を占めます。
「アジア太平洋地域の持続可能な経済成長と繁栄を支援する」ことが目的です。しかし、新自由主義的な「構造改革」や米国主導の貿易・投資の自由化などを推進するために利用されてきました。11月に開かれた第19回首脳会議では、輸出大企業や多国籍企業に有利となる貿易自由化推進をうたった「ホノルル宣言」を採択しました。
小泉内閣が「構造改革」路線の「総司令部」とした「経済財政諮問会議」
経済財政諮問会議は2001年に設置されました。とくに小泉内閣時代、小泉純一郎首相・竹中平蔵経済財政担当相と奥田碩経団連会長・牛尾治朗経済同友会特別顧問が組んで、新自由主義的な「構造改革」路線を主導する「総司令部」としました。
そのもとで、リストラ促進、社会保障の切り下げと庶民増税、郵政民営化、規制「緩和」、地方財政の「三位一体の改革」などの施策が押し付けられました。それが格差と貧困の拡大、地方の疲弊を招いたのです。
民主党は政権をとると同会議を廃止しましたが、野田内閣は10月下旬、経団連会長、経済同友会代表幹事をメンバーに、類似の組織である「国家戦略会議」を設置し、再び「構造改革」路線を推進しようとしています。
「戦争推進の大政翼賛会」
第2次世界大戦中の1940年10月に、天皇制政府がつくった侵略戦争に国民を総動員する組織。「大政」とは天皇がおこなう政治、「翼賛」は補佐する、という意味です。
社会大衆党、政友会や民政党など日本共産党以外の全政党がみずから党を解散し、大政翼賛会に合流し、侵略戦争を推進しました。帝国議会には「翼賛政治会」が組織されました。大政翼賛会は、国民のいっさいの自由をうばい、侵略戦争への犠牲を国民に強制する国民統制と動員の機関としての役割をはたしました。
「民自公」3党は、政府が提出していた労働者派遣法改定案を、大改悪
民主党政権は昨年、「製造業・登録型派遣」を「原則禁止」としつつ、「常用型」や「専門26業務」を例外とする労働者派遣法改定案を提出しました。日本共産党は「大きな抜け穴があいている」と批判してきました。
これに対し、財界の意向を受けた自民・公明は、(1)「原則禁止」規定の削除、(2)違法派遣があった場合に、派遣先企業が労働者に直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用」規定の先送りなど、法案を骨抜きにする修正を要求。民主党・野田政権はそれを丸のみし、3党一体で可決を強行しようとしました。
派遣労働者や労働組合が猛反発するなか、法案成立は阻止され、現在、「継続審議」となっています。
自公政権時代につくられた税制改定法の「付則」
政権交代前の2009年3月に成立した09年度の税制改定法(正式名称は「所得税法等の一部を改正する法律」)の付則第104条の規定です。
「政府は……消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を行うものとする」と、消費税増税の方向を明確にしています。
民主党は「4年間は消費税を引き上げない」(当時の鳩山由紀夫首相の答弁)と言ってきたのですから、それと矛盾する「付則」は廃止するのが当然でした。それを廃止せずに温存しておいて、今度はその「付則」を根拠にして「法律で決まっているから増税しなければならない」といって、消費税増税を国民に押しつけようとしているのです。
「二重ローン」
大震災で、多くの事業者が借入金で設備投資した工場、機械、店舗、船舶などを失いました。収入も途絶え、財産も設備も失い、そのうえ借金だけが残ったという人が広範に生まれました。そうしたとき、「さあ再出発だ」と新たな借金をして事業を再開しようとしても、震災前の借金が足かせとなって再スタートできない――これが「二重ローン」問題です。
日本共産党は、「せめてゼロからのスタートを」という痛切な声にもとづき、「債務の凍結・免除」を国の責任でおこなうことを要求。政府も旧債務を買い取る「機構」をつくりました。再起を期す中小業者を選別せずに新規融資を受けられるようにすることが大切です。
「水産特区」
漁港の「集約化」と大企業に漁協と同等の漁業権を与え沿岸漁業に参入させようというもので、財界の青写真にそったものです。
現在、漁業権が漁協に優先的に与えられているのは、養殖などいくつかの漁業です。漁民の組織である漁協が管理することで、限られた漁場での紛争回避と資源保護をおこなう考え方にたって歴史的に確立されてきたものです。それによって浜の秩序が保たれてきました。
そこに、目先の利益第一の企業に漁協と同等の漁業権を与えたら、漁業資源の適切な管理が損なわれ、浜の荒廃を招くことは明らかです。漁協をはじめ被災地から、漁業者を追い詰め、漁民の絆を分断するものだとして激しい批判の声があがっているのは、そのためです。
新基地建設のための環境アセス評価書
野田佳彦首相は9月、オバマ米大統領との会談で、沖縄の辺野古新基地建設のための、環境影響評価(アセスメント)の「評価書」を年内に提出する方針を伝えました。環境影響評価は、環境影響評価法に基づいて、大規模事業が環境に悪影響を及ぼさないかを調べる制度です。
評価方法の決定や評価結果案(準備書)の作成など、段階ごとに住民や地元自治体の意見を聞き、確定した評価は、事業計画に反映されることになっています。防衛省が評価書を提出した後、90日以内に知事意見が出され、補正作業、公告・縦覧(1カ月間)の手続きが終了すれば、事業実施が可能になります。
政府は、基地建設のために公有水面の埋め立て承認申請をしようとしています。