2011年12月17日(土)
福島原発
首相、「事故は収束」
汚染水漏れ、炉心状態不明のまま
野田佳彦首相(原子力災害対策本部長)は16日記者会見し、東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の未曽有の事故について「原子炉は『冷温停止状態』に達し、事故そのものは収束に至ったと判断できた」として、事故収束に向けた工程表の「ステップ2」完了を宣言しました。東電の西沢俊夫社長も政府・東電の統合会見で「事故の収束がはかられた」と述べました。
野田首相は「原子炉の安定状態が達成され、大きな不安は解消した。廃炉に向けた段階に移行する」と述べました。一方、「事故とのたたかいは終わったわけではない」として、除染や住民の健康管理、賠償に全力を挙げると強調しました。
3月11日の地震で3基の原子炉は炉心溶融(メルトダウン)を起こし、事故から9カ月たった今も、溶けた燃料の状態がわからない上、放射能汚染水は増え続け、放射性物質の外部への放出も止まっていません。避難した住民が戻るめどもたってはいません。避難した住民や専門家からは、“これで事故が収束したといえるのか”“現実をみていない”と疑問や批判の声があがっています。
しかし、政府は、原子炉圧力容器底部の温度が100度以下であることや、原子炉建屋上部からの放射性物質の放出が1〜3号機合わせて1時間当たり6000万ベクレルと見積もり、それによる被ばく線量が原発敷地境界で今後、年間1ミリシーベルトを下回るとして、「冷温停止状態」「事故収束」を宣言しました。
政府・東電は4月17日に事故の収束に向けた目標や課題などを示した工程表を初めて発表。当初、来年1月だった「冷温停止状態」の目標時期を、9月になって年内に前倒ししました。
東電は「冷温停止状態」達成後から約3年間の中期的な安全対策について策定。放射能の放出抑制、原子炉や使用済み燃料プールへの注水と冷却の維持、水素爆発や再臨界の防止、高濃度放射能汚染水の処理などを盛り込んだ計画を経済産業省原子力安全・保安院に提出し、同院などが妥当と評価しています。
今後、使用済み燃料の取り出しを2年以内に始めるなど廃炉へ向けた工程表を発表することにしています。
「冷温停止状態」を達成したとの判断のもと、政府は同原発から半径20キロ圏内の警戒区域と、年間放射線量が20ミリシーベルトを超える計画的避難区域を新たに3区域に再編する検討に入りました。近い将来の帰宅が可能な「解除準備区域」(年間放射線量20ミリシーベルト未満)、数年間居住が難しい「居住制限区域」(20ミリシーベルト以上〜50ミリシーベルト未満)、数十年間帰宅できない可能性がある「帰還困難区域」(50ミリシーベルト以上)とする方向で調整しています。