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2011年12月15日(木)

主張

生活保護「中間まとめ」

職業訓練を「踏み絵」にするな

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 厚生労働省が「生活保護制度に関する国と地方の協議」で、生活保護費削減策を具体化した「中間まとめ」を決めました。職業訓練の一つ求職者支援制度を活用しない受給者には保護費を支給しない仕組みの導入を盛り込むなど、保護を必要とする人たちを排除しかねない重大な内容です。

 生活保護は、国民が「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)を維持するための最後のセーフティーネット(安全網)です。その理念に反する改悪は実行すべきではありません。

実情にあわない制度

 厚労省と全国知事会、指定都市市長会などが参加して5月から始まった「協議」では、生活保護費増をもっぱら「財政の圧迫」の側面から問題にし、受給者数の抑制手段の議論に終始しました。そのなかで厚労省が持ち出したのが求職者支援制度を就労意欲の判断の一つにするというものです。

 10月に始まった同制度は、「雇用保険(失業給付)を受給できない求職者」が対象です。民間訓練機関が行う厚労省認定の職業訓練(3〜6カ月のコース)の受講者に月10万円の手当を支給します。しかし、「やむを得ない理由」以外で1回でも欠席・遅刻・早退すれば、その月の手当が払われないだけでなく、欠席が続くと訓練初日にさかのぼって手当の返還が要求されるなど運用はきわめて厳格で、制度の改善を求める声が上がっています。

 「生活保護に至らないための第2のセーフティーネットとして創設」(厚労省)された制度で、訓練コースの内容や訓練機関所在地もばらつきがあり、生活保護受給者の実情とかみ合っていません。

 生活保護は、病気や幼い子どもを抱えるなどさまざまな要因で働きたくても働けない人が対象です。そうした受給者に求職者支援制度に申し込まなかったり、利用しても途中で続けられなくなったりしたことを理由に、「働く意思がない」と決め付けて保護を打ち切ることは受給者の権利を不当に制限するものです。自立や就労は、特定の制度に参加するかどうかという“踏み絵”を迫ることではなんの解決にもなりません。

 いま深刻なのは、受給者が仕事につきたくても、なかなか見つからない実態があることです。受給者一人ひとりの置かれている状況に合わせた、丁寧で粘り強い対応と支援こそが必要です。「中間まとめ」は受給開始直後から「集中的かつ強力」に就労支援をすると強調しましたが、受給者に就労を強要し、追い詰めることは事態を悪化させるだけです。

「安全網」にふさわしく

 生活保護受給者が過去最高の約206万人になったため、政府などは抑制が必要といいますが、雇用破壊と経済状況悪化による貧困の拡大の結果であり、不十分な失業給付や無年金・低年金という社会保障の不備がもたらしたものです。厚労省推計でも生活保護基準未満の所得世帯で保護費受給世帯は15%程度にとどまっています。必要な人に手が届いていない実情こそ変えなければなりません。

 生活保護法第1条は、「憲法第25条に規定する理念に基き」「必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障する」と明記しています。この条項にふさわしい制度の運用と充実こそが急務です。


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