2011年12月15日(木)
保育所面積基準引き下げ
実施否定の自治体多数
待機児解消しない 保育の質低下の恐れ
厚生労働省は9月、待機児童解消のためとして保育所の面積基準引き下げを35自治体について特例で認めましたが、政府の思惑通りに進んでいないことが明らかになりました。日本共産党の池川友一東京・町田市議の資料要求で同市議会が各自治体を調査した結果(5日現在)、35自治体のうち、基準引き下げを実施すると表明した自治体はゼロ、「しない」と表明しているのが20自治体に上りました。(表)
特例を「採用しない」理由として、自治体側は、「入所児の保育環境の悪化となる。基準の緩和により直ちに待機児が解消するとは考えにくい」(東京都中央区)、「保育の質が低下する恐れがあるため」(同府中市)と回答しています。
「定員を増やすことで必要になる職員数を増やせない」(同板橋区)、「現行基準のもとで定員の弾力化を行い、1、2歳児の受け入れ枠はほぼ限界まで拡大している。現実には難しい」(同豊島区)などの理由をあげるところもあります。
「検討中」などと回答した15の自治体でも、緩和をしない自治体が多数となる見込みです。さいたま市は、日本共産党の戸島義子議員が「面積基準の緩和は保育の質の低下が懸念される。実施すべきでない」と市議会でただしたのに対し、清水勇人市長が「保育所整備数の拡大により待機児童の解消を図る方向で検討する」と回答(5日)。横浜市も党議員団の要請(9月)に、「緩和するつもりはない」と回答しています。
民主党政権は、待機児童対策として、認可保育所を増設するのではなく、国が定めていた保育の最低基準を撤廃し、基準の引き下げで対応しようとしています。しかし、自治体の対応からも、面積基準の緩和では待機児童解消は図れないことは明らかです。
解説
詰め込み政策の破たん
民主党政権 面積基準引き下げ
認可保育所増設しかない
民主党政権は、「待機児童解消のため」だといって35自治体に子ども1人当たりの面積基準引き下げの特例を認めました。
しかし、対象となる自治体の過半数が、特例措置は採用しないとしています。これは、子どもの詰め込みによる“待機児童解消”策の破たんを示しています。
定員を超えた子どもの詰め込みは、小泉・自公政権下で「待機児童ゼロ作戦」の名で強力に進められました。民主党政権はそれを改めるどころか、「定員の125%」などの上限さえとりはらいました(2010年)。その結果、廊下に布団を敷いてお昼寝する状況を生み出してきました。
最後に残った、「国の定めた最低基準は守る」という歯止めさえとりはらったのが今回の特例措置です。自治体から「受け入れ枠はほぼ限界まで拡大している」との声が上がるのも当然です。
35自治体のうち約7割を占める東京都は、待機児童の9割を占める0〜1歳児の面積基準を1人当たり3・3平方メートル(2畳)から2・5平方メートルに引き下げる条例案を検討中です。「質の低下につながる」との強い反対があるにもかかわらず、強引に議論を推進してきました。ただし、条例が決まっても条例通りやるかは各自治体の判断で、24自治体のほとんどが消極姿勢です。地方へ丸投げの、詰め込み施策では何も解決しないことを示しています。
国が、認可保育所の増設を正面に位置づけず、「詰め込み」で対応してきたことが、現在の深刻な待機児童問題を生んでいます。
民主党政権が導入を狙う「子ども・子育て新システム」も、認可保育所の増設に取り組むのではなく、逆に保育の公的責任を解体するものです。
そもそも面積基準は、戦後直後の1948年に定められたままで、一度も見直されていないもの。日本の基準は、欧州などと比べて面積でも職員配置でも最低水準です。
待機児童の解消は、国が責任をもって認可保育所を増やす基本に立ち返るべきです。
解消には程遠いものの、保育所整備のための国の基金(安心こども基金)を活用して、認可保育所の増設を行う自治体が生まれています。「新システム」の制度いじりではなく国が財政支援に本腰を入れることこそ緊急に求められています。 (鎌塚由美)
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