2011年12月14日(水)
質量の起源解明へ一歩
ヒッグス粒子の存在示唆する現象を検出
加速器実験で
欧州素粒子原子核研究所(CERN)の粒子加速器を使う実験グループが13日、宇宙を構成する物質の質量の起源とされる「ヒッグス粒子」の存在を示唆する興味深い現象を検出したと発表しました。実験グループには日本の研究者も多数参加しています。
ヒッグス粒子は、素粒子物理学の「標準理論」を構成する基本粒子のうち唯一、未発見の粒子。40年前から世界の研究者が実験で探索を続けてきました。
今回、スイス・ジュネーブ郊外に建設され2009年に本格稼働した大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の測定器「アトラス」「CMS」を使って探索している2グループがそれぞれ、蓄積したデータをもとにした最新の研究成果を同時に発表したものです。
両グループは8月の国際会議で、ヒッグス粒子が存在する場合には、115〜141ギガ電子ボルト(GeV=素粒子などの質量を示すエネルギーの単位で、陽子の質量が約1GeV)か476GeV以上の範囲にあるはずだという解析結果を発表していました。
今回、両グループのより多くの実験データを解析した結果、ヒッグス粒子の質量は116〜130GeVに絞られました。さらに125GeV程度のヒッグス粒子の存在を示唆する現象が、両グループで検出されました。
アトラス実験グループの結果では、偶然この現象が起こる確率は1%程度あるといいます。発見というにはデータが不十分で、今後さらにデータを増やし、ヒッグス粒子が本当に存在するのかどうか、最終結論は2012年後半には判明させるとしています。
アトラス実験グループの浅井祥仁・東京大学准教授は「発見の可能性は高まってきている。7月から(データ解析は)不眠不休の楽しさだった」と話しています。
アトラス実験に日本から参加するのは東京大学や高エネルギー加速器研究機構(KEK)など15の研究機関。
ヒッグス粒子 物質の質量の起源と考えられている粒子。英国のピーター・ヒッグス博士が提唱しました。素粒子物理学における標準理論によると、宇宙の初期の状態では物質の質量はゼロでした。宇宙が膨張とともに冷えるとヒッグス粒子が満ちた状態になりました。このため光子など一部の粒子を除いて粒子に力を加えたときヒッグス粒子から抵抗を受け質量が生じていると考えられています。