2011年12月11日(日)
福島事故9カ月 本紙が53自治体調査
民家除染着手は2市
仮置き場設置できず 「国主体で」の要求も
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東日本大震災と東京電力の福島第1原発事故から11日で9カ月。放射性物質を取り除き、放射線量を下げる除染作業は、8月末までに学校ではおおむね終わりましたが、その後どこまで進んだのか。全地域が警戒区域と計画的避難区域にあたり、国が全域直轄で除染する方向の6自治体を除く福島県内53自治体に本紙はアンケートと聞き取りで調査をしました。
その結果、県の50万円支援金が出る事業を利用した住民による公道の除染が一部で行われているものの、市町村による民家も含めた除染が12月1日の段階で実際に始まっているのは2市にとどまっています。
福島市大波地区は10月18日から民家の除染が始まり26戸で完了、31戸で進行中。伊達市霊山町で3戸が完了、34戸で進行中です。
除染が進まない第一の原因は廃棄物の仮置き場の問題です。
小規模なものを除き、仮置き場が設置できたのは福島市1カ所、伊達市3カ所、川内村1カ所。川内村は除染の実施段階まできていて、仮置き場ができたところから除染が始まる実態が浮き彫りになっています。
政府が設置に責任を持つ最終処分場の具体化がいまだ示されない中で、市町村と住民が仮置き場設置で苦労しているのが実情です。
「仮置き場の用地選定、確保を市町村任せにせず国が主体として行ってほしい」(相馬市)と国の関与を求める意見も出ています。最終処分場の早期提示を求める声はほとんどの市町村から出されています。
本紙が行った調査に対し、除染が進まない原因として自治体が挙げたのは仮置き場設置の問題とともに、費用の負担です。
現在、除染に使うことが明確になっている政府の予算は、2011年度3次補正予算の1997億円(地方分は1047億円)、2次補正予備費の2179億円(地方分不明)です。飯舘村の除染計画は宅地、農地、森林の全面除染の費用総額を3224億円と見込んでいます。多額の除染費用をどうするのかが課題です。
「民家の除染も不可欠と考えているが、国の財政負担の仕組みが不明確なので対象は未定」(いわき市)、「放射能漏えいの全責任は事業者である東京電力と原子力政策を推進してきた国にあり、両者に負担を求める」(二本松市)という要求が出されています。
作業者の育成と確保も課題です。
南相馬市は国が直轄で除染する警戒区域、計画的避難区域を除く4万6000戸の除染を2012年2月から2年間で行う計画です。
担当者によると除染開始を来年にしたのはマンパワーの確保が間に合わないことが大きいとのこと。年間200日稼働として1日115戸の作業が必要になり、1戸10人で作業するとすれば1日1150人の作業員が必要になると説明します。
除染が始まっている福島市は現時点で約20業者と契約しています。担当者は「除染のテンポを上げたいので人員確保を進めていきたい」と話しています。
自治体任せにせず国が責任を持って
神山悦子・日本共産党福島県議団長の話 除染が進まない最大の要因は、やはり仮置き場の問題と費用の問題です。国は最終処分場をどうするのか示し仮置き場の設置も自治体任せにせず責任を持つべきです。費用についても、放射能をまき散らした東京電力と原発推進政策を進めてきた国の負担で行うのが筋です。
早く除染をすすめなければ、今でも6万人を超す県外避難者がまだ増えると思います。子どもを安心して育てられる福島を取り戻すために、5人に前進した県議団で県と国に働きかけていきます。