2011年12月10日(土)
韓国与党 分裂の危機
議員秘書がサイバー攻撃
韓国の李明博(イ・ミョンバク)政権与党のハンナラ党が、「分裂・解体」の危機に直面しています。10月のソウル市長選挙をめぐり、同党所属国会議員の秘書が、中央選挙管理委員会のホームページにサイバー攻撃をしかけるという前代未聞の選挙妨害事件を引き起こしたためです。(中村圭吾)
内部からも“解党”の声
7日には、5人いる同党の最高委員のうち3人が党の刷新を求めて辞意を表明。洪準杓(ホン・ジュンピョ)代表も9日、辞任に追い込まれました。洪代表は前日、党名変更などを含めた「解党的出直し」を図るための全面刷新案を発表したばかりでした。
韓国メディアが報じる事件の経過はこうです。ハンナラ党の崔球植(チェ・グシク)議員の秘書(27)が市長選の投票日当日、後輩として付き合いのあったIT業者に攻撃を指示。数百台のコンピューターで中央選管のサーバーを攻撃し、投票所検索サービスを麻痺(まひ)させたといいます。
警察は、この秘書ら4人を情報通信網利用促進法違反の疑いで逮捕。9日、与党候補を有利にするための単独・突発的犯行だったとして送検しました。
崔議員が与党候補の広報責任者を務めていたことなどから、野党はハンナラ党による組織的犯行の疑いがあると主張。野党民主党の報道官は、「恥ずかしい捜査結果に、国民の怒りは沸点に達している。疑惑はさらに増幅している」と強調しました。
党の存立を揺るがしかねない事態にもかかわらず、ハンナラ党は当初、「党は直接関係していない」として、責任を回避。これに対し、党の支持基盤である保守派のメディアからも、「タイタニック号の沈没場面を連想させるほどの恐慌状態に陥り、政権党としての危機管理能力のなさを見せている」(文化日報)と厳しい批判が出されています。
同党の一部議員は「執行部総退陣」を要求するなど、党内対立が激化。東亜日報は7日付社説で、「内部から“党は寿命を終えた”という話や解体の主張が公然と出るほど、深刻な状況だ」と指摘しました。