「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2011年12月5日(月)

地方発

3・11後の津波対策は?

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

地図

 「TSUNAMI(津波)」はそのまま世界につうじます。日本の津波対策はすすんでいるといわれていました。3月11日の東日本大地震と津波は、その常識を覆しました。危険性が強まる東海、東南海、南海地震による大津波への各地の対策見直しのとりくみです。




避難メールとタワー建設推進

和歌山県

写真

(写真)和歌山県白浜町富田地区の津波避難タワーを指さす高田県議。東日本大震災を受けて高さの補強などを求めています

 安政の南海地震(1854年)の時、和歌山県広村(現在の有田郡広川町)の住民の命をすくった濱口梧陵(はまぐち・ごりょう)の「いなむらの火」の逸話にちなんで、11月5日が「津波防災の日」と制定されました。地元として、恥じない取り組みをしなければなりません。取り組みと今後の課題について報告します。

■    ■

 (1)過去の経験や資料からしっかり学び、準備する。

 東海・東南海・南海の3連動巨大地震が起これば、予想される津波の高さはこれまでの2倍を上回るのではないかという予想もでてきています。私は6月県議会で過去の津波の痕跡を研究するよう求めましたが、県は国の予想待ちになっています。

 (2)いつ起こってもおかしくない巨大地震、それによる津波に、住民がいかに避難するか。

 これまで整備してきた防災無線が、室内にいて聞こえないとか、災害で機能喪失する問題があります。私は6月県議会で戸別受信機の設置を求めました。県は今回、携帯電話会社と提携して危険地域にいる人の携帯電話に強制的に避難情報を送りつける「エリアメール」を導入しました。すべての携帯電話が対応しているわけではなく、高齢者はどうするのかという課題も残っています。

 (3)避難場所について県は、総点検を始めました。津波の浸水予想地域ではあるが、緊急に避難する場合に有効なレベル1の避難場所、さらに安全性の高いレベル2、避難の時間が余裕があるならもっとも安全なレベル3などに分類して周知しています。その結果、レベル1の避難所は594カ所、レベル2が410カ所、レベル3が260カ所となりました。

 今後も見直すとともに、近くに高い場所がない地域のための避難タワーの建設(現在10棟)や津波避難ビルの指定(現在145棟)も推進します。

■    ■

 「きのくに防災力パワーアップ補助金」として、市町村が実施する事業に比較的、自由度の高い補助金(補助率2分の1、今年度予算1億5千万円)を出す制度をつくりました。また、浸水予想地域にある学校や福祉施設にはライフジャケット(救命胴衣)を常備するようにしました。

 避難に対する住民意識や避難所運営も課題です。3月11日に発令された大津波警報に避難行動をした人は少数でした。いったん避難したものの、早々に自宅に引き揚げた人がほとんどでした。白浜町議会では日本共産党の広畑敏雄町議がこの問題を取り上げ、暖房、食料、テレビなどが整っていた避難所では夜中まで整然と避難を続けた事例を紹介し、避難所運営の改善を求めました。

 南海トラフに面した和歌山県で活動する日本共産党にとって、地震と津波から県民を守る課題は決定的に重要です。今後も全力をあげます。(和歌山県議・高田由一)

漁船・原木 流出阻止へ防御網

高知・須崎

写真

(写真)須崎湾近くに市街地があります。湾の入り口に東西合わせて1420bの津波防波堤が建設中で、2012年度に完成します

写真

(写真)市街地に木材が流出するのを防ぐ役割を果たす高さ4.5bの防御さく。現在230bつくられています

 太平洋に両手を広げたように713キロメートルの海岸線をもつ高知県。3・11までは、東南海、南海地震の津波が10メートル以上というのは、一部という認識でした。高知県は「南海地震対策再検討プロジュクトチーム」を立ち上げ、「想定外をも想定」するとして、「優先課題洗い出しなど、事業の加速化と抜本強化」(南海地震対策課)に取り組んでいます。

■    ■

 須崎市の須崎湾は湾口が広く水深のある天然の良港ですが、津波を受ける弱点も持っています。同市は、総務課内の防災係を6月1日付で地震・防災課に格上げし、職員4人を配置。笹岡豊徳市長は「6月議会を待たずに臨時議会に課設置を諮った。市民の命を守るには少しでも早いほうがいい」と話します。

 4月初めに「南海地震津波対策検討委員会」を立ち上げ、毎月会合を開き避難場所と経路の見直しを始めました。これまで指定していた避難場所56カ所について、「標高20メートル以上」で再検討した結果、32カ所を不適と判断しました。「地域のことを一番よく知っている住民が歩いて『ここがいい』と決めた場所が全部で86カ所できました。避難道づくりなど避難場所整備を急ぎます」(地震・防災課の楠瀬晃係長)。

 宝永津波(1707年)慰霊碑には「溺死(水死)者400人余りが筏(いかだ)を組むように折り重なっていた」と書かれています。郷土史に詳しい市川豊八さん(84)は「地域の約2割が犠牲になりました」と推察します。昨年2月のチリ地震による津波で国内最高の1・28メートルの潮位を観測。東日本大地震でも県内最高の3・2メートルを記録しました。

 自主防災組織も活動を強めています。市中心の須崎地区自主防災連合会の大家順助会長(79)は「マグニチュード(M)8・4以上といわれる宝永地震並みの津波から命を守る準備が必要です。町内会ごとにアンケートを取って避難計画など見直します。その結果を行政に上げていきたい」と語ります。自主防災の連合会ができているのが2カ所。市では年度内に8地区全部の組織化をめざしています。

■    ■

 もうひとつ、力を入れているのが漂流物対策。比較的規模が小さかった昭和南海地震(1946年、M8)でも5メートルの津波を受け、港にある貯木場の原木が市内に流れ出て被害を大きくしました。そのため、市では漂流物の「防御ライン」の必要性を国に要望。2009年から国の事業として木材の固縛や津波バリア建設が始まっています。漁船の住宅街への流出を防ぐ防御網をつくる計画を進めています。

 地震、津波はいつ起こるか分からないだけに防災意識の継続が課題になります。市は県立須崎高校と防災学習や行事へ協力をしていく「防災・減災活動の協定」を昨年結びました。

 笹岡市長は「若い人に防災意識を高めてもらいたい。津波被害を受けやすい宿命をもった市だが、市民と協力して防災の取り組みを強めていきたい」と語っています。(高知県・窪田和教)


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって