2011年12月5日(月)
野田政権3カ月
財界直結で「構造改革」暴走
歴史的岐路に立つ日本の政治
「鳩山、菅政権と比べれば、着実に政策を実行しつつあるという意味では、『安全運転』だ。しかし、その内容と方向性はとんでもない」。野田政権発足(9月2日)からの3カ月を振り返り、民主党議員の一人はこう述べます。
■悪政の強行
菅政権が進めた2009年総選挙マニフェスト(政権公約)見直しの上に、沖縄・辺野古(名護市)への米軍新基地建設のごり押し、環太平洋連携協定(TPP)参加への暴走、消費税増税と社会保障の「一体改悪」、海外への原発輸出や停止中国内原発の再稼働を狙う原発固執政策など自民党政権でもできなかった悪政の強行が、この政権の基本的姿勢となっています。
さらには、労働者派遣法改定の骨抜き、自衛隊の南スーダン派兵、武器禁輸原則の緩和、憲法審査会の始動など、自民、公明との「三党合意」を軸にした事実上の大連立で、国民的信任のないまま日米同盟絶対と「構造改革」路線を暴走しています。
かつての小泉内閣のもと「構造改革」の総司令部の役割を果たした経済財政諮問会議を引き写しにして設置された国家戦略会議には、米倉弘昌日本経団連会長と長谷川閑史経済同友会代表幹事の参加で会合を重ねています。同会議は、「震災復興」を口実に成長戦略やTPP推進の旗を振り、「構造改革」の新たな司令塔となっています。
11月30日にまとめた同会議の「日本再生の基本戦略の基本的な考え方について」の「優先事項」は、「(震災復興で)新成長戦略を先取りして実施」、「社会保障・税一体改革の着実な実現」を強調し、「徹底した給付の重点化・効率化」の名目で社会保障切り捨てを進めようとしています。組閣前の財界詣でで驚きを集めた野田首相のもと、まさに財界直結政治が横行しているのです。
■約束を破り
野田政権を支える民主党の現状をある議員はこう述べます。
「マニフェストを自ら解体して政策的基準を失うと、全てが官僚のお膳立てになる。政権中枢の野田、前原、菅の各グループは、もともと新自由主義と日米同盟強化で自民党より過激な要素を持っている。小沢グループも本質的には変わらない。国民との約束は破ったのだから、後はもう財界とアメリカに頼るだけだ」
古い自民党政治への対抗軸のない民主党がマニフェストを投げ出したいま、財界、アメリカの支配に忠実につき従うことで政権の延命をはかろうとする告白です。
しかし、TPP交渉参加表明の強行は国民的総反撃にあい、TPP参加是非の党内論議が「反対多数」の取りまとめになるなど、執行部にとって「想定外」の事態も生まれています。世論調査でも内閣不支持が支持を上回り、大阪ダブル選挙(11月27日)では旧来の支持層の大半が離反するなど、党内には危機感も急速に広がっています。
■根源変える
日米同盟絶対を拒否するという観点から“政権交代”に期待を寄せた元政府高官の一人は述べます。
「普天間問題やTPP、消費税増税や原発問題など、重大な問題が山積しているが、あれこれの個別の問題として考えていてはダメだ。その政治構造の根源を変えることに目を向けなければ」
野田政権のもと、歴史的岐路に立つ日本の政治の課題が提起されています。(中祖寅一)
野田政権の3カ月
【9月】
2日 野田内閣発足
7日 前原誠司民主党政調会長、米国でのシンポジウム講演で「武器輸出3原則」見直しに言及
10日 鉢呂吉雄経済産業相が原発被害者踏み付けの暴言で辞任
21日 首相、オバマ大統領と初会談。沖縄県名護市辺野古への新基地建設について「全力を尽くしていく」と約束
22日 首相、国連会合での演説で原発推進と原発輸出政策の継続を表明
【10月】
20日 衆参の憲法審査会の委員選任
21日 「国家戦略会議」設置を閣議決定
25日 一川保夫防衛相、パネッタ米国防長官との会談で新基地のアセス提出を表明
【11月】
1日 南スーダンPKO派兵方針を正式決定
3日 首相、主要20カ国・地域(G20)首脳会議で消費税10%を「国際公約」
8日 民・自・公3党が25年の復興増税で合意
11日 首相、記者会見で環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を表明
13日 首相、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席。日米首脳会談でTPP交渉参加を伝える
15日 民・自・公3党が労働者派遣法改定で、製造業務派遣と登録型派遣の「原則禁止」事項を削除するなど骨抜きで合意
21日 2011年度第3次補正予算が成立
29日 女性と沖縄県民を侮辱した暴言で田中聡沖縄防衛局長を更迭