2011年12月3日(土)
主張
社会保障・税一体改革
「大きなウソ」の暴走許さない
「私が先頭に立って政府部内、そして与党内での議論を引っ張っていく決意だ」―。野田佳彦首相が1日の記者会見で、消費税を10%に増税する「社会保障・税一体改革」への強い「決意」を表明しました。
首相は「一体改革」について、「社会保障の機能を強化し、安定財源を確保して将来にわたって持続可能なものにする」ための処方箋だとのべています。消費税増税は社会保障のためであるかのような説明です。
ずらり改悪メニュー
「社会保障のため」というのは消費税導入の際にも、5%に増税した際にも時の政権が国民に向けて語った言葉です。国民の反対を押し切って導入や増税を強行した後には、どの政権も平気な顔で年金や医療を改悪し、社会保障を後退させてきました。
これから民主党政権がやろうとしている「一体改革」は初めから社会保障の改悪メニューをずらりと並べています。年金の削減や支給先送り、外来受診のたびに定額負担させる制度の導入、70〜74歳の窓口負担の倍加、介護給付や生活保護の抑制、保育の公的責任の放棄…。厚労省が「一体改革」成案の中身を具体化すればするほど、社会保障の切り捨てが浮かび上がってきています。
社会保障改悪のオンパレードと消費税の5%から10%への12兆円もの増税を「一体」で実行するようなやり方は過去にも例がありません。これまでのどの政権もできなかった暴挙です。この暴挙を「社会保障のため」という真反対の大ウソで押し通そうとする首相の態度は絶対に許されません。
見過ごせないのは、政府が各地で開いている「社会保障・税一体改革シンポジウム」などで、この虚構をふりまいていることです。各地の会場でも配布しているパンフレットは「一体改革」について次のように書いています。「現在の社会保障を『守り』『充実し』、そして、みんなで支え合う仕組みをもう一度作り上げるものです」―。パンフレットは社会保障切り捨ての具体的な中身には一切ふれていません。
「みんなで支え合う」というのもごまかしです。
消費税は毎日の消費に一律にかかる税金です。所得が少ない人ほど所得から生活費に回す割合が大きくなるため、所得に対する消費税の負担割合は低所得者ほど重くなります。しかも、大金持ちがさらに利益を増やす株式投資などは非課税です。消費税は何千万円、何億円という年収の大金持ちよりも、年収200万円に満たない派遣労働者や年金生活者、生活保護世帯に厳しい不公平極まりない税金です。
消費税は、価格にすべて転嫁できる大企業は実質的に1円も負担しなくて済む税金でもあります。
それでも大企業減税か
かつて“政府や指導者にとってウソは大きければ大きいほどいい”と言った独裁者がいました。大きなウソほどばれにくいという反国民的な“教え”を、野田首相が「先頭に立って」政府ぐるみで実践しているかのようです。
財政が大変だと言いながら、大企業向けの法人税減税に固執し、米軍「思いやり予算」や政党助成金にすらメスを入れようとしない民主党政権のやり方には一片の道理もありません。