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2011年11月30日(水)

「コスト意識導入」で医療抑制

生存権侵す薬の制限 国民全体に矛先

民主党 生活保護作業チーム

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 「社会保障と税の一体改革」に向け、生活保護制度の改革について議論する民主党厚労部門会議の生活保護ワーキングチーム(WT、梅村聡座長)が29日に開かれ、医療費への一部負担の導入について、賛否を両論併記して部門会議に提出することを決めました。

 28日までに明らかになっていた論点整理案では、医療費の一部自己負担のほか、▽より安価な後発医薬品の義務化を含めた使用促進▽過剰受診抑制に向けた指導強化▽就労先や銀行などへの収入・資産調査の強化▽悪質な不正受給事案に対する国の告発基準策定―などが盛り込まれていました。

 同日の会合後、梅村座長は記者団に、医療費の一部自己負担については賛否両論があるとし、「他制度との兼ね合いもあるので、短期間のワーキングでは結論は出せない」と語りました。

 後発医薬品の義務付けについては、「法的な兼ね合いがあり、厚労省に知恵をださせる」と述べました。

 梅村座長は、受給者に「コスト意識」を持たせることが大事だとし、「コスト意識の醸成にはいろんな手段がある。自己負担は当然、議論をしなければならない」と述べました。

 民主党の生活保護制度見直しでは、「後発医薬品の義務化を含めた使用促進」が検討されています。生活保護費が急増し、その中でも医療費が多いとして、医療費抑制のために値段の安い後発医薬品の利用を義務づけられないか、というものです。

 どんな薬を使うかは、医師の専門的判断と患者の選択によるものです。後発医薬品は先発医薬品と同じ効能をもつとされますが、臨床の医師の中には、「薬効に信頼がもてない」「安定供給や副作用などの情報提供に不安がある」などの懸念があり、厚労省の計画通りには使用がすすんでいません。

 こうした状況で、生活保護受給者にだけ後発医薬品を義務づけるとすれば、医療の制限になります。すべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障した憲法25条に反するものです。

 「後発医薬品の義務化を含めた使用促進」については、自公政権時代の2008年に厚労省が通知を出しています。医学的な理由がある場合以外は、「福祉事務所が被保護者に対し後発医薬品を選択するよう求める」とし、指導に従わない場合は「保護の変更、停止または廃止を検討すること」が盛り込まれていました。受給者や医師に圧力をかけ、後発医薬品の使用を迫るものでした。

 生活保護受給者にだけ薬の使用制限をすることに批判がわき起こり、1カ月で撤回されました。民主党政権は、それを再度、持ち出してきたのです。

 民主党は、無料で受けられる生活保護受給者の医療に自己負担を導入する議論もすすめています。受診抑制が目的なのは、行政刷新会議の23日の「政策仕分け」でもあけすけに語られていました。

 全国保険医団体連合会の住江憲勇会長は、「命に直結する医療に、生活保護だからと差別・選別を持ち込む憲法違反は許せない」と指摘します。

 そのうえで、「生活保護受給者への差別は、国民の中に『お金のある・なしで治療に差がついても仕方がない』、『負担した分だけの給付が当然』という、社会保障と相反する感覚を広げる。保険のきかない医療を広げ、お金によって受けられる医療に差がつく混合診療拡大の突破口だ」と指摘します。

 「政策仕分け」では、一部の生活保護の不正受給を口実に、「急増する生活保護費は国民が税金で支えている。何らかの制限はつけざるをえない」(市川眞一・クレディスイス証券チーフ・ストラテジスト)という、国民を分断する議論が繰り広げられました。

 しかし、国民の健康を保障する憲法に反する議論の矛先は、国民全体に向いています。 (西沢亨子)


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