2011年11月29日(火)
エジプト
人民議会投票始まる
国民意思反映できるか懸念も
【カイロ=小泉大介】エジプト「民衆革命」でムバラク前政権が倒れて以降初めてとなる人民議会(下院に相当、定数498)選挙の第1回投票が28日、首都カイロ、アレクサンドリアなど大都市を中心に開始されました。人民議会は新憲法案の起草に携わることもあり、今回の選挙は、同国の民主化に向け極めて重要な役割を担っています。一方、選挙が軍政継続に対する大規模な抗議行動の最中に開始され、真に国民の意思を反映できるか懸念も出ています。
|
「投票開始の2時間前に来ました」。カイロ・ザマレク地区の投票所でこう語ったのは中学校教師の女性、マイ・ラーディさん(30)。選挙の投票は初めてといいながら、「選挙がエジプトに本当の民主主義を樹立する最初のステップになってほしい」と期待を語りました。
同じく初めての投票というカイロの男性会社員、カリム・カミルさん(35)も「選挙は間違いなく私たちの未来にとっても、革命の最終的な成功にとっても、大きなチャンスです」といいます。同時に、実権を握りつづける軍最高評議会について「民政に権力を譲る時期を明確に示す必要があります。安定なくしては経済の発展もありません」と話します。
投票は裁判官による選挙監視活動を保障するため、来年1月にかけて地域ごとに3回に分けて実施されます。投票期間はそれぞれ2日間。定数の3分の2が政党リストにもとづく比例代表制で、3分の1が小選挙区制で行われます。
エジプトでは革命前の昨年11〜12月に行われた人民議会選挙で、旧政権が最大野党のイスラム勢力・ムスリム同胞団を激しく弾圧するなどした結果、旧与党の国民民主党が全議席の80%以上という圧倒的多数を占めました。
今回は同胞団が革命後に設立した自由公正党、エジプト最古の政党の一つであるワフド党、左派の国民進歩統一党などのほか、革命の中心を担った青年たちの新党ら全部で50以上の政党が参加しているとされます。革命後に解散を余儀なくされた国民民主党の元党員も複数の政党から立候補しています。
地元メディアなどによると、イスラム法(シャリア)を立法の源とするよう求めつつ、弱者救済の活動にも力を入れてきたムスリム同胞団の政党が第1党となることが確実視されています。