2011年11月28日(月)
きょうの潮流
研究者の集まりで福島第1原発から放出される放射性物質の広がりを推定した図や動画を見る機会があります▼プルームと呼ばれる放射性物質を含む雲の複雑な動きを、風向きや降雨などの気象条件、地形の影響などから計算。放射性物質がどのように広がり、地表に沈着するのか、その過程を明らかにしようとしています▼先日あった日本気象学会で、そうしたテーマの発表会の結びに、予測システムのSPEEDI(スピーディ)の今後を危惧する声が上がりました。防災対策を検討する原子力安全委員会の作業部会の議論の行方が、予測をやめようという方向にあるからというのです▼スピーディは、気象データなどをもとに、大気中や地表面の放射性物質の濃度計算を迅速に行い、予測します。さらに外部被ばく線量などを計算するシステムです。ところが、作業部会の議事録には、スピーディは「初期防護対策の判断には実用に供しないことが明らかになった」とあり、これが議論の出発点でした▼スピーディの問題は、システムが動いていたにもかかわらず、情報が公開されなかったことです。ある講演会で研究者が言っていました。「スピーディは失敗の代表のようにいわれるが、マニュアル通り完全に動いていました」と▼放射線量の高い地域に避難した住民からは、公表が早ければ不必要な被ばくをする必要はなかったという切実な声を聞きます。事故の教訓を政府はどう掘り下げようとしているのか。監視し続ける必要があります。