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2011年11月9日(水)

主張

TPPと医療

「命の格差」の拡大許さず

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 お金の心配なく、いつでも安全な医療をうけることができる―。日本の医療で最も大切にすべき原則を、野田佳彦首相が大本から覆そうとしています。

 野田首相が交渉参加を表明しようとしている環太平洋連携協定(TPP)です。「非関税障壁」をなくすという米国の要求のもとで、医療を企業のもうけの対象にした「市場原理」優先の仕組みを日本に持ち込む危険が明らかになっています。「命の格差」を拡大するTPPに参加すべきではありません。

国民皆保険の解体に

 TPPでは、農業と食料だけでなく、くらしのあらゆる分野が「自由化」の対象にされます。医療では、混合診療の全面解禁、株式会社の病院経営への参入、医療機器・医薬品の輸入規制の撤廃、価格の自由化などが交渉の課題になる可能性があります。

 とりわけ焦点になっているのは混合診療です。外務省は7日、民主党に示した追加資料で、混合診療の解禁について「TPPで議論される可能性は排除されない」と初めて認めました。混合診療は、公的医療保険がきく診療と、保険がきかない診療を合わせたものです。政府が認めた一部の医療を除く保険外診療を選択すれば、全体が公的保険の対象外となり、全額患者の自己負担となります。

 混合診療を全面解禁すれば、保険外診療がさらに拡大され、経済力の違いで「医療の格差」が生まれます。患者が窓口で医療費の一部を負担するだけで受診できた公的医療保険の文字通りの解体です。

 政府はもともと、混合診療全面解禁は「TPP交渉の対象になっていない」と主張してきました。しかし、日本共産党の志位和夫委員長が国会で追及したのを受け、野田首相が「可能性は否定できない」と認め、外務省もようやく追加資料を出したのです。国民の命にかかわる問題をごまかし続けてきた政府のやり方自体、TPP参加の道理のなさを示すものです。

 米国は、自国の保険会社や医薬品会社に市場を開放することを繰り返し日本へ要求し、日本の公的医療保険制度、国民皆保険制度が障害だとしてきました。TPP参加による医療の「市場開放」は、医療費削減・患者負担増によってもたらされた「医療崩壊」をますます深刻にしてしまいます。

 株式会社の病院経営参入も、医療に「利益第一」の運営が持ち込まれ、不採算部門を切り捨てることになります。医療機器・医薬品の規制撤廃も、医療の安全性よりももうけを優先させるものです。外務省の資料でも、米国は「医薬品へのアクセス拡大」を目標に掲げていることを明記しました。日本の医療と国民の安全が脅かされる危険は明白です。

将来に禍根を残すな

 日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の医療関係3団体はこのほど、公的医療保険制度が脅かされるとして、「TPP交渉への参加を認めることはできない」と表明しました。医療の安全と安心を守るため、たたかいを広げることが急務です。

 ことしは市町村に国民健康保険が導入され、「国民皆保険」が確立してから50年です。その節目の年に公的医療制度を米国の大企業に売り渡す暴挙に踏み出すことは、将来に大きな禍根を残します。


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