2011年11月7日(月)
民主党 震災直後の「仙谷メモ」
マニフェスト“安楽死させる”
民主党機関紙「プレス民主」(4日付)には「マニフェスト」(政権公約)の6文字が見られませんでした。臨時国会の衆院(31日)、参院(2日)で代表質問に立った同党議員の口からも「マニフェスト」(政権公約)のマの字も聞かれませんでした。野田佳彦首相就任後の2国会連続で民主党は「国民との約束」―マニフェストに口をつぐんだことになります。
どさくさに紛れ
○…ここに一つのメモがあります。A4で3枚。2011年3月23日の日付、「『21世紀日本の国づくり』構想について」のタイトルがついています。
東日本大震災発生から13日目、政府として震災・原発事故後の日本をどう構想するか、その大まかな方向性を記しています。首相官邸の一部で「仙谷メモ」と呼ばれます。1週間前に内閣官房副長官として首相官邸入りした仙谷由人民主党代表代行(当時)が書いたとされます。
箇条書きの一項目に「民主党マニフェストのリストラと“安楽死”」とあります。大震災を契機に09総選挙マニフェストを、なんと震災のどさくさに紛(まぎ)らせて死文化させるというわけです。
上層部の共通認識
○…「メモ」はこう続けます。東日本大震災は「次に向けての『陣痛』と捉えるべき」、目指すは「国家の再生であり新生」―。そのために財政・社会保障一体改革、開国・グローバル化を推進する「政党連立」、「衆参連携」による「『救国内閣』的な決断と熟議」の政治体制をめざすとしています。
ずばり大震災という「陣痛」を通じて消費税増税、TPPなど財界路線を全面的に推進する民自公大連立政権へ向ける政治プランでした。
仙谷氏は、菅直人首相との確執で、その後まもなく震災復興担当は離れたものの、メモが示す方向性は3月時点の民主党上層部で共有されていました。
民主党は菅政権時代の昨年の参院選やその後の社会保障・税一体改革方針などでマニフェスト路線を後退させ、震災後の8月のマニフェスト検証委員会「中間検証」報告書、民自公「3党合意」で決定的にマニフェスト離れをしました。「メモ」に書かれていた通り、「安楽死」させたのです。
「御用聞き」政治
○…選挙を経ず民主党で3人目の首相となった野田首相にとって政権の正統性を裏付ける根拠は有権者との約束である09マニフェストです。国民との約束を離れて何を目安に野田首相は政権を動かしているのか。野田首相は財界とアメリカの支持を頼りに、両者の「御用聞き」政治をひた走っています。