2011年11月3日(木)
きょうの潮流
きょうは文化の日。法律によれば、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」日です▼11月3日は、1946年に日本国憲法が公布された日でもあります。文化の日は、自由と平和、文化を重んじる憲法の心をくんで設けられました。当時の人はめざしたのです。もう戦争はこりごり、「民主的で文化的な国家を建設」(教育基本法)しよう、と▼憲法で「文化」の2文字は、1カ所にしか登場しません。「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を定める25条です。しかし先人は、憲法から文化国家への道を導き出しました。戦や破壊を拒み、人の自由と命を尊ぶ。そんな人間の生き方や社会に文化は宿る、とみなしたのでしょう▼ところで1949年の文化の日、戦後の日本人を勇気づける発表がありました。物理学者の湯川秀樹博士に、日本人初のノーベル賞。博士は、不戦を誓う憲法9条に人類史上かけがえのない値打ちをみいだした一人でもあります▼8年後、博士は国の原子力委員を辞め、また話題の人となります。「(原発には)慎重な上にも慎重でなければならない」。原発づくりを急ぐ勢力に対する抗議の辞任でした。博士は、こう考えていました▼原子力は自然力だが、これに打ち勝つ自然力はないという危うさをもつ。ただ人間の手を通じてしか現れない力だから、抑えられるかどうかも人間にかかっている。科学技術に自信を持ちすぎず、目先の利益にとらわれない博士に、人間のあり方を考えさせる文化の力を感じます。