2011年11月2日(水)
主張
国会TPP論戦
参加強行の根拠成り立たない
衆参の本会議でおこなわれている各党の代表質問で、環太平洋連携協定(TPP)への参加問題が、東日本大震災の復興や東京電力福島原発事故の対策、沖縄の米軍普天間基地の「移設」問題などとともに焦点になっています。
野田佳彦首相は、今月中旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議でTPP交渉への参加を表明する構えです。首相が代表質問への答弁で、「できるだけ早期に結論を出す」と繰り返すとともに、TPP参加を前提に、農業再生との両立や「経済の成長力を取り込む」などと言い出していることは見過ごせません。
「亡国の政治」そのもの
日本共産党の志位和夫委員長は代表質問で、大震災と原発災害からの復興財源、普天間基地の「移設」問題とともにTPP交渉への参加問題をとりあげ、政府の暴走に反対し、経済主権・食料主権を尊重した経済関係の確立を求めました。志位委員長が指摘した、(1)大震災からの復興の妨げになる、(2)食料の安定供給を土台から壊す、(3)暮らしのあらゆる分野で米国の対日要求が強要される、(4)世界経済の成長を取り込む保障はない―などの問題点は、TPP参加がアメリカにまるごと日本を売り渡す「亡国の政治」になることを浮き彫りにするものです。
野田首相が代表質問への答弁で持ち出した、「TPPはアジア太平洋地域の成長力を取り込めるメリット(利点)があるが、農業再生との両立などの課題もある」「(農林水産業の再生に)最大限資源を投下していく」などという言い分も、志位委員長が問題点を指摘したように、成り立たない論拠です。
TPPは農産物を含めすべての関税をゼロにするものです。農水省はすべての関税がゼロになれば、食料自給率が13%に急落し、コメ生産の9割が破壊されると試算しています。どうしてこれが農業再生と両立するのか。政府の農業「再生」計画は、経営規模を5年間で10倍にする大規模化を打ち出しています。これ自体、中小農家を切り捨てる危険があるうえ、たとえ日本の耕作面積が10倍になっても、はるかに大きなアメリカやオーストラリアには太刀打ちできません。TPPが日本の農業に壊滅的な打撃を与えることは明らかです。
しかもTPPは事実上、アメリカとの自由貿易協定(FTA)です。TPP参加でアメリカへの輸出が増えるどころか、輸入が一方的に増え、日本では失業者が増えて、家計と消費、内需が冷え込むのは目に見えています。アメリカが多少関税を下げても円高が進めば吹き飛びます。「成長力を取り込む」どころか、アメリカの輸出戦略に取り込まれるのが現実です。
暴走を阻止するたたかいを
志位委員長が代表質問でこれらの問題点を指摘し、TPP交渉への参加を批判したのに、野田首相は参加しないとは明言しません。それどころか、「交渉の中で最大限国益を追求する」と参加を前提にするような答弁も始めています。参加の根拠がないことを批判されてもそれに答えず強行するのは、まさに暴走そのものです。
最近、民主党の前原誠司政調会長は、「不満を持つ人に配慮すれば政策は前に進まず、与党の責任は果たせない」と主張しました。政府・与党の暴走を阻止するため、たたかいを広げることは急務です。