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2011年11月1日(火)

主張

八重山教科書問題

政府は支離滅裂な介入やめよ

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 中川正春文科大臣は10月26日の国会答弁で戦前の日本を美化する育鵬社版の公民教科書を採択した沖縄県石垣市と与那国町の教科書は無償、別の教科書を選んだ竹富町は有償という方針を明らかにしました。義務教育無償の憲法の精神にもかかわる重大な問題です。

教科書読まずに答申

 沖縄県の八重山採択地区を構成する3市町は、法律で同一教科書の採択が義務づけられています。冒頭の方針の根拠は、3市町教育委員会の諮問機関である採択地区協議会が育鵬社版を答申したことです。しかし、答申とは「この教科書にしたらどうか」という推薦であり、政府も答弁したように法的拘束力がありません。答申通りにするかどうかは、各教育委員会の判断です。

 特に八重山地区の答申は、通常行われる専門家の意見反映も欠く、ずさんなものでした。そのため竹富町は、教育委員が全教科書を読んだ上で別の採択をしたのです。それを答申と同じなら無償、違えば有償と別扱いするのは、答申に法的拘束力を認めるものです。法的拘束力がないものに法的拘束力を認める支離滅裂な扱いです。

 地区協議会の運営は目にあまるものでした。玉津博克会長(石垣市教育長)は、途中で強引に規約を改正し、協議会から教育現場経験者を排除しました。さらに独断で教科書調査員に調査に基づく教科書順位付けの廃止を言い渡します。すべて育鵬社答申の布石です。

 こうした動きに歴代の教育長、地区PTA連合会、現場の多くの教員が育鵬社版を答申しないよう要請しました。教科書調査員も一人も育鵬社を推薦しませんでした。ところが協議会は教科書名もあげず話し合い、わずか5分程度で育鵬社版を答申したのです。

 賛成した委員は、教科書をまともに読んでもいませんでした。「教科書を一つひとつ読んでからやりなさいというのはできない」「実は大変申し訳ない話ですが、調査員の調査書を見るのがほとんど」「読まんといかんのかね」―。地元のテレビは3人の驚くべき発言を放映しました。玉津会長も以前「すべて読んでなくても読んだと言えばいい」と述べています。

 先生もPTAも住民も反対しているものを、教科書も読まずに答申したり採択したりする。そんなおとなを子どもたちは何と思うでしょう。答申を絶対視する文科省は恥を知るべきです。

 地元では、同一の教科書を選び直す努力が重ねられました。そして3市町教委は沖縄県教委の助言を受け、9月8日に全委員が参加する「全員協議」の場で話し合うことに合意。理を尽くした運営を通じ、育鵬社版を否決し、別の教科書を採択しました。文科省が自民党の圧力に屈し、この決定を無効と決めつけたことは誤りです。

子どもに最善の採択を

 教科書の採択は、実際に教えている教員が「主要な役割」を果たすべきだというのが、世界のルールです(ユネスコ「教員の地位に関する勧告」)。日本共産党の質問に文科大臣も勧告の尊重を答弁せざるをえませんでした。

 教員や保護者の意見が反映される形で採択が行われる以外に、解決の道はありません。文科省が方針を撤回し、「全員協議」の結論をふみにじるような不当な介入を止めることを強く求めます。


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