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若者の就職難の原因と解決の道すじ青年学生委員会事務局 酒井 雅敏※学生、高校生を対象にした学習会での講演を整理し、加筆しました。(月刊学習2003年12月号掲載) 反響よぶ「青年に仕事を!」署名いま民青同盟と日本共産党は、「青年に仕事を! 政府は真剣に取り組んでください」の署名・宣伝活動を大展開中です。●青年の気持ち、要求にマッチしてこの署名を街頭ではじめると「正社員になりたくて試験をたくさん受けた。でもいくつ受けても面接すらやってくれない。もうイヤになっちゃった」(福岡)、「25社の面接を受けても全然決まらない。面接の参考本を見てそのとおりにやっているつもりだけど、うまくいかない。私ってどこか変ですか?」(熊本)など、名前を書きながら、実際に苦しんでいる声が次々とだされ、対話になります。 また、「本当に仕事がないですよね。僕のための署名です」(岐阜)、「大企業のサービス残業をへらせば84万人の雇用を増やせるんだ」と話すと、「すごい! そんなことできるんですか」とすぐ署名してくれた(滋賀)、商業高校の校長先生と懇談したら、「同感だ、ぜひがんばってほしい」と励まされた(島根)、など予想を超える共感と賛同の広がりが生まれ、「こんなに共感がひろがるなんて、気持ちがいい」(山形)、「解決策がある、変えていく展望があると語れるのが楽しい。もっともっと広げていきたい」(島根)など、署名を集める側も、やればやるほど元気になっています。 こうした状況はこの「青年に仕事を!」署名が、いまの青年の要求にぴったりマッチし、求められていた活動となっていることをよく示しています。 2003年10月19日には「『若者に仕事を』全国青年大集会」がひらかれました。会場の東京・渋谷区の山下公園は、秋晴れのもと、全国から集まった千人の若者たちで埋め尽くされました。「私たちは、正社員として働きたい」「自立できる職をください」「ウォンテッド!仕事」など、色とりどりのプラカードがかかげられるなか、あいさつに立った日本共産党の志位和夫委員長には、全国各地で集められた「雇用署名」が次々と渡され、両手で抱えきれないほどでした。 「みなさんの気持ちの重みがずっしりと伝わってきました」と話しはじめた志位委員長は、「いまリストラ競争をやっている財界は、目先のもうけしか考えていません。正社員を減らし、パート・アルバイトや派遣労働におきかえれば、人件費が安くなる。必要なときに必要なだけの労働力を調達することが、いちばん合理的だと思い込んでいる。しかし、人間はモノではありません。必要なときにセメントを買ってくるのとはわけが違います。人間は生きている、みんな心をもっている。未来に希望をもって生きているのです。その人間をまるで材料と同じように、必要なときに必要なだけ使ってあとは『使い捨て』にする。こんな、企業や社会には未来がないということをはっきりいいたい」「たたかってこそ未来は開けます。こうした運動を文字通り若者全体の運動にして、発展させようではありませんか」とのべ、大きな拍手と歓声につつまれました。 2003年8月半ばからはじまった「青年に仕事を!」署名は、この集会までのほぼ2カ月間で、4万筆をこえるほど、全国各地で大反響です。 ●就職できないのは、努力がたりないから?同時に、署名活動のなかで、「就職は、自分の努力や能力の問題で、政府や大企業を追及するのはおかしい」という意見にぶつかることがあります。先日もある大学生が、就職活動中の先輩に署名をお願いすると、自分自身が実際に就職難に苦しんでいるにもかかわらず、「就職できるかどうかは自分の問題」と言われてびっくりしたと話してくれました。 就職するために、それぞれが努力するのは大切です。しかし、いまの就職難は、個人の努力ではとても解決できない特別な問題をはらんでいます。(1)いまの就職難の規模と内容は、これまで日本が経験したことのないほど深刻です。(2)そうした深刻さは、普通の経済活動から生まれたのではなく、大企業の人減らし・合理化と、それを応援した小泉内閣によって意図的につくりだされたのです。(3)しかも、法律違反のサービス残業や過労死を生む長時間労働といった、ルール破りの無法と結びついているのです。 ですから、日本共産党が、政府や財界・大企業の責任を追及するのは、彼らこそがいまの深刻な青年の就職難を生み出したおおもとであり、その政府の姿勢を変え、財界・大企業の横暴をただせば、解決にむかう見通しがあるからです。こうした事情がつたわらず、社会への第一歩を踏み出そうとする就職問題でつまずき、”自分が悪いんだ”とあきらめたり、展望を失っている青年がたくさんいます。「悪いのはあなたではない」「解決の展望はここにある」ということを広く知らせていくことが求められています。そのためにも、この小論では、署名活動でぶつかる意見や疑問への対応も考えながら若者の就職難、雇用問題についていっしょに考えてみたいと思います。 経験したことのないほど深刻な青年の就職難 現在は、社会全体の雇用状況が冷え切っていて、2002年の完全失業者数は359万人、完全失業率は5・4%といずれも過去最悪です。とりわけ34歳以下の青年の完全失業者は、168万人と全体の46%、約半分をしめています。図1をみればわかるように、失業率も、15歳〜24歳がダントツに高く、とくに15歳〜19歳をとってみると4年連続で12%を超えています。また、25歳〜34歳も、全年齢平均と比較してかなり高いことがわかります。全体もひどいが、なかでも青年の就職難は格段に深刻なのです。 大卒者の就職率は、1970〜90年にかけては、75〜80%を前後していますが、90年代に急速に悪化し、2003年はわずか55%、2人に1人しか就職できません(図2)。現場では、「数十人の枠に数千人からの応募がある」とまでいわれています。 高卒者への求人は、90年代はじめは160万人を超えていましたが、2002年は十分の一以下の15万人台まで落ち込みました。就職率は、大学進学や、専門学校への進路が増えているとはいえ、80年代の40%前後から、2003年3月では16・6%と激減です(図3)。学校現場では、求人の絶対数が少ないため、面接を受けるにも学内選抜があり、ようやく面接できても、もし落ちれば次はないという状況だそうです。 ●激増するフリーター、青年5人に1人にこうしたなか、いわゆるフリーターの激増が注目されています。内閣府の『国民生活白書』(2003年版)は、「働く意思はあるが正社員として就業していない青年」をフリーターととらえ、1995年の248万人から、2001年は417万人に増加したと指摘しました(図4)。これは学生と主婦を除く15歳から34歳までの人口の21・1%にあたります。 今日のフリーターは、その数が増えただけでなく、(1)やむをえずフリーターになった人が多く、正社員になりたかった人が7割もいる、(2)学校を卒業して、最初からフリーターになる人(新卒フリーター)が増えている、(3)一度フリーターになると、なかなか正社員にはいあがれない、(4)フリーターの期間が長期化し、年齢が高くなっている、などの特徴があげられます。フリーターを、かつては「青年の自分探し」などと見るむきもありましたが、いまではまったく状況は変わり、正社員になりたくてもなれなかった青年が、やむをえずおちいっている大変つらい状態です。そのフリーターに、青年の5人に1人がなっているわけで、あなたの身近にもそういう仲間がいるのではと思います。 このように、いまの青年の就職難は、日本がかつて経験したことがないほど深刻なもので、一人ひとりが、いくらがんばってみても、とても解決できない社会的大問題なのです。 直接の原因は、財界・大企業のリストラ・人減らしこうした異常な就職難には、特別な原因があります。表1をみてください。1995年と2001年を比べると、中小企業は全体で3万人の青年の正社員を増やしているのに、大企業は108万人もの青年正社員を減らしています。この大企業の人減らしが、青年の就職難の最大の原因なのです。 「不況だから、人を減らすのは仕方がない」「企業には労働者を雇用する力がなくなっている」といった意見があります。確かに今の不況は深刻で、倒産する企業もたくさんあります。しかし、不況の影響を一番うけている中小企業が、全体として青年労働者を増やしているのに、大企業は新規採用を大幅に減らし、青年の正社員雇用を激減させています。しかも、大企業は、雇用者数を減らすと同時に、職場に残った労働者には長時間労働・サービス残業を押しつけて、人件費を大幅に削っています。
その結果、不況なのに大企業だけは、ばく大な利益をあげているのです。銀行・証券・保険会社をのぞく大企業1064社の02年度の決算では、売上高は前年比でわずか1%増にもかかわらず、経常利益は61・3%もアップしています。トヨタ、日産など自動車メーカーの上位4社は、02年度、これまでで最高の利益です(表2)。「不況だから」は、リストラ・人減らしの口実です。雇用する力がないのではなく、雇用を減らすことで利益を増やしているというのが現実なのです。 ●就職難と違法なサービス残業、異常な長時間労働がセットにリストラしながら、利益を上げることを可能にしているのは、違法なサービス残業の横行、過労死を生むほどの長時間労働がまん延しているからです。図5をみてください。常勤労働者数がどんどん減るなか、逆にサービス残業がグイグイと増えています。 長時間労働も深刻化しています。2003年版『厚生労働白書』は、労働者の5人に1人が、過労死ラインといわれる週60時間を超えていると指摘しています。週60時間とは、週休2日ならば、月〜金まで毎日12時間働き続けていることになるわけです。 過労死を告発した「しんぶん赤旗」の連載『仕事がおわらない』では、23歳で過労死した編集デザイナー、25歳で死亡した看護師、27歳で死亡したレンタルビデオ店の店長代理、26歳で亡くなった研修医など、20代、30代で過労死した青年たちの実例が次々とでてきます。なかには、「食べている暇があったら仕事をしろ」と1日1食を強要され、38度台の熱がでながら、「熱があるぐらいで休むんでない。体が動かなくても引きずってでも出て来い」といわれていた労働者、遺族は10万円の香典しかもらわないのに、会社には1億円を超える保険金がはいった話、また過労死した労働者の労災認定に奔走していた弁護士が、過労死してしまったという事例もでてきます。 青年の深刻な就職難と、現場での異常な長時間労働、違法なサービス残業が、セットになっているという点は非常に重要です。いっそうの利潤拡大をもとめる大企業が、リストラ・人減らしを強引にすすめた結果、就職難と長時間労働の両方を生み出したのです。 ●背景にある財界の”21世紀カネもうけ戦略”リストラと長時間労働をセットで、という方向は、個々の企業の対応ではなく、財界主導の方針です。各企業は、その大方針のもとにリストラを競い合ってすすめてきた点をみておく必要があります。 代表的なものは日本経済団体連合会(日本経団連)の前身の日経連が1995年にだした『新時代の「日本的経営」』という報告です。 そこでは、21世紀にむけて、今後日本は、低成長に移行し、労働力不足から労働力過剰に転換する、そのなかで国際競争力を高めるには、「企業の高コスト体質の改善」すなわち、人件費の削減が必要であるとのべています。そのために、終身雇用制や年功序列賃金といったいわゆる「日本的慣行」を解体し、“能力主義”的な雇用形態への移行をすすめるとして、一部のエリートは終身雇用と昇給を保障するが、企画や営業、開発などの社員は、期限つきの昇給なし、そのほかの従業員は時間給でのパートやアルバイト、派遣などでまかない、「必要な時に必要なだけ」低賃金で雇用できる条件をつくることを提案しています。この大号令にそって、リストラ・合理化に、いっそうの拍車がかかったのです。 表3は、95年と01年の週当たり労働時間を、15〜34歳の正社員と、パート・アルバイトで比べたものです。正社員が129万人も減るなかで、週60時間以上もの長時間労働をする割合がぐっと増えています。その一方で、パート・アルバイトなど不安定な雇用が急増し、限られた時間で働いています。まさに日経連が提起した流れに大きくそった雇用状況の変化がすすんでいることがわかります。 青年の深刻な就職難、長時間労働・サービス残業の横行は、こうした雇用状況の変化の結果として生まれたのであり、その根源には、財界がしくんだ“カネもうけ戦略”があったのです。 財界・大企業の横暴を応援してきた自民党政府こうした財界・大企業の横暴を応援してきたのが、小泉内閣をはじめとしたこれまでの自民党政権です。 就職できないのは、「青年に働く気がないからだ」といった声を聞くことがあります。たとえば、90年代のはじめ、「『私だって働きたい!』就職難に泣き寝入りしない女子学生の会」が結成され、リクルートスーツパレードなどで、マスコミでも大きく話題になりました。その代表の方が、就職難の実情を話して3人のタレントがコメントするというあるテレビ番組に出演することになったときのことです。番組ディレクターが、ゲストに、「女子学生の側にも甘えがあるんじゃないか」とコメントしてほしいと注文したというのです。 「就職難に泣き寝入りしない」と、決意して立ち上がった女子学生をわざわざ番組に出演させて、「甘えがある」とは、なんという話かと思いますが、おもしろいのは、その女子学生の会の代表が抗議するより前に、3人のタレントが、「それはおかしい」と激しく詰め寄り、ディレクターがたじたじになったということでした(坂井希・伊藤彰男『就職難に気が重いあなたへ』新日本出版社、167〜170ページ参照)。 もともと就職難を青年の意欲の問題だとつきはなしてきたのは自民党政府でした。99年作成の雇用対策基本計画では、「青年の転職志向の高まりが顕著で自発的離職が多く、大都市を中心に学校卒業後、無業者が就職者を上回っている例も見られる」としています。つまり、青年が転職をもとめ、自分から仕事を辞めるんだというわけです。また01年2月の国会で、森前首相は、「若い世代の失業率が高い原因についてのおたずねがありました。一つには、若年者が自分に合った仕事を探す過程にあることや、職業意識が不十分なことを背景として、自発的な離職や早期の離職による失業が多い」と答弁しています。つまり若者の働く意識が低いというのです。 こうした理解ですから、政府の政策は、もっぱら青年の意識改革と能力向上への支援にかぎられ、しかも雇用対策費は諸外国に比べて極端に少ないのです(図6)。 さらに政府は、「構造改革」だといって大企業のリストラ・人減らしを応援し、「不良債権処理」といって、中小企業を中心とした倒産・失業増大を促進してきました。99年に施行された「産業再生法」では、リストラ・人減らしを実施した企業に税金を負けてやることまでしています。法施行以来、みずほ銀行やりそな銀行などの銀行グループやトヨタ、日産、NEC、三菱電機、さらにサラ金の武富士など217社がこの法律の適用を受け、8万9千人のリストラ計画をすすめたうえで、810億円を超える減税を受けています。労働者を一人減らすと、90万円以上の税金をまけてもらったことになります。社員の首を切ると、ご褒美に減税される……こんな異常な制度は、世界のどこにもありません。まさに大企業だけの利益を優先し、財界のいいなりになる自民党政府ならではの政策です。 ●ルールそのものを解体してきた自民党政府自民党政府が、長時間労働、違法なサービス残業をまともに取り締まらなかっただけでなく、財界の要求をうけて、労働者の生活や権利を守る労働法制を繰り返し改悪してきたことも重大です。 たとえば1日8時間労働制を解体し、労働時間の延長を法的にも認めさせようという方向です。7月までおこなわれた通常国会でも、実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ労使で決めた時間だけを「働いたとみなす」裁量労働制の適用範囲が拡大され、長時間労働、サービス残業の横行に拍車をかけています。労働者が正社員として長期間安定して働くという原則を崩すのも労働法制改悪の方向です。労働者派遣事業を製造業にも解禁したり、有期雇用契約の期間が延長されました。 こうした改悪が、企業が必要なときに労働者を補充し、いらなくなれば使い捨てる不安定な雇用形態を広げているのです。大企業のルール破りとあわせて、ルールそのものを解体する労働法制の改悪が自民党政府のもとですすめられたことが、リストラ・人減らしの拡大、長時間労働、サービス残業の横行、そして青年の就職難が深刻化する条件をつくっていったのです。 未来を危うくする日本社会の大問題また、今の就職難を考えるとき、青年の働き口がないというだけでなく、日本の未来にかかわる社会全体の問題としてとらえることが大切です。 いまの就職難は、青年の働く意欲だけではなく、生きていくための夢や希望、そして生活をもつぶしています。少し前まで、20代の青年なら、学校を出て就職し、30歳前後で結婚して、子どもをもうけ、40歳ぐらいで家を建てたい、といった自分の人生設計を、おぼろげでももっていたと思うんです。ところが、30代になっても安定した職業に就けない今の青年は、人生の先々の見通しがまったく立たない。夢や希望どころか、これからさき、自分はいったいどうなるのか? という重苦しい不安におおわれています。いつの時代でも新しい社会をつくるのは若者ですが、その若者に元気がない、夢や希望がもてない、そういう社会には本当に未来はないと思います。 また青年の就職難がこのままつづけば、日本社会の継続的な発展がおびやかされます。青年が経済的に自立できない、結婚して家庭をもち、子育てをすることもできない、こうした事態が構造的に作り出されているわけで、日本社会の存立基盤がほり崩されているといっていいと思います。青年の正社員が少なくなって年金や保険料の徴収が減少し、社会保障制度を支える基盤がやせ細っていくということも起こっています(図7)。 ●蓄積された技術が継承できないさらに、産業や企業の将来にとってもマイナスなのです。いま大企業ほど若者の割合が減少しています(図8)。そうなると、企業がこれまで蓄積してきた技術やノウハウを受け継ぐ若者がいない。青年期、仕事や技術を身につけるのに一番大事なときに、フリーターで職を転々とする、企業からはまともな研修も教育もない。いまの企業は、労働者を「育てる」という発想をまったく放棄して、使い捨てにしています。この間、タイヤ工場での大規模な火災や、JR中央線が単純な作業ミスによって長時間ストップするとか、北海道のガスタンクの炎上など大事故が相次いでいますが、技術の継承がおろそかになっていることと無関係ではありません。日本経団連の奥田会長でさえ、「熟練労働者をリストラすれば、労働の質は落ちる。経費節減の利点はあるが、危険性もある。両面の問題を考えなければならない」と理事会で述べたほどです(「しんぶん赤旗」2003年9月17日付)。 このように、青年の就職難は、青年だけの問題ではなく、日本の将来、社会や産業の未来がかかった大問題であり、その解決には社会全体が力をあわせることが大切なのです。 就職難はどうすれば解決できる? では、青年の就職難をどうすれば解決できるのでしょうか? ●長時間労働・サービス残業を根絶することで、新規雇用をつくりだし、景気回復へ第一に、長時間労働・サービス残業を根絶することで、新規雇用をつくりだすという方向です。 説明してきたように、いまの就職難は、違法なサービス残業や過労死を生む長時間労働といった大企業によるルール破りと結びついています。これを政府がきちんと取り締まれば、新しい雇用が生まれるのです。第一生命研究所の試算によれば、サービス残業をなくすだけで、161万人の新規雇用が生まれ、失業率を2・4%下げられるということです。青年失業者の数は174万人ですので、ほぼそれに匹敵する新規雇用が、サービス残業を解消するだけで、生まれるのです。 この方針なら、就職難と長時間労働という青年がかかえる二大問題がいっぺんに解決できます。党の青年支部の会議にいくと、正社員の人は、長時間労働でずっと遅れてくたびれて会議にでてくる、フリーターの人は時間はあるので、早めに出てくるけど、生活するお金がない、という現状に直面します。だったらサービス残業を減らして、正規雇用を増やせば、お互い丸くおさまるじゃないか、と現実的でわかりやすい解決方法なのです。 サービス残業は法律違反ですから、取り締まるのは当たり前です。「競争に勝ち抜くためにはサービス残業もやむをえない」とか、「サービス残業をしなければ会社がつぶれる」などといわれる場合があります。これでは、会社の利益のためには罪を犯してもいいというのと同じです。大企業の高収益は、いわば不正行為による異常なもうけであり、それを規制すれば、通常の利益にもどるのです。そして雇用が増えれば、消費が拡大し、結果的には、社会全体の景気の回復につながっていきます。 先ほどの第一生命研究所の試算でも、サービス残業の廃止で、個人消費は5%以上上昇し、企業収入も拡大して、実質GDPは、2・5%引き上がる効果が期待できると予測しています。大企業だけが、異常な利益をあげ、社会全体は不景気で、就職難と失業があふれているという状態を、大企業の不正をただし、就職と雇用を増やして、景気回復をすすめる方向へと転換するのです。 実際、政治の力でサービス残業をやめさせた実例が、この間、たてつづけに生まれています。たとえば、03年1月、日本共産党の山口富男議員が、衆議院予算委員会で、トヨタ自動車の異常な長時間労働の実態をとりあげ、改善をせまりました。豊田労働基準監督署の調査でも、トヨタ自動車の普通勤務の年間平均労働時間は、全国平均(1992時間)より442時間も長く、最大で3650時間も働いている人もいました。1年365日、1日も休まず毎日10時間働いていることと同じですから驚きです。さすがの小泉首相も、「ちょっと異常だ」「よく体がもつな」とのべ、「時間を削って人を増やしてくれたほうがいい」と答弁しています。 その直後、トヨタは生産ラインを止めて、「不適切な勤務時間管理の撲滅」をはかる緊急集会を開き、働いた時間はすべて申告することを労働者に徹底しました。その後、これまでなかったタイムレコーダーも設置されました。トヨタがラインを止めてまで緊急の集会を開くことは、「前代未聞」であり、山口質問が大きな影響を与えたことはまちがいありません。 また、日本共産党のねばり強い働きかけもあって01年4月、厚生労働省は「サービス残業」是正の通達を出しました。それ以後、02年9月の1年半の間に、労働者からの告発もあって、全国で総額約81億円余の未払い残業代が支払われています。もちろんまだ氷山の一角にすぎませんが、サービス残業の是正は着実にすすんでいます。この方向を、いっそう大きくしていけば、新規採用を増やすことができるのです。 ●国民生活に必要な分野での人手不足の解消就職難打開の第二の方針は、国民生活に必要な分野での人手不足の解消です。 教員、看護師、保育士、介護のホームヘルパー、消防士などの分野では、いま青年の力が大いに必要とされています。たとえば、小学校で30人学級を実現すれば、12万人の新しい教員が必要になります。ところがいまどの地域でも若い先生を採用しないので、教員の平均年齢がどんどんあがり、休み時間に子どもと遊ぶエネルギーをもった教員がいないとか、中学校では運動部の顧問のなり手が少なくて困っているという笑うに笑えない話があります。日本の看護師一人が見なければならない患者数は、アメリカやイギリスの2倍から4倍です。そうした条件が、医療ミスの原因にもなりかねません。仮に看護師1人当たりの患者数を、いまの約半分にすれば、90万人以上の新しい看護師が必要なのです。 ところが政府や地方自治体は、財政がきびしいなどといってなかなか若い教員や看護師を採用しません。それは、無駄な公共事業に莫大な税金をつぎ込んで借金財政をつくってきたこれまでの自民党政治の責任であり、税金の使い道を改めれば、解決できるのです。 ●政治の流れを転換することがカギ以上に示したように、解決方法は明確です。問題は、政府が、大企業の横暴を規制し、国民に必要な分野で青年の雇用を増やすという姿勢にたつかどうかです。すでに140年も前にマルクスは、「イギリスにおける労働日の制限についていえば、他のすべての国々と同じように、法律の介入によらないでそれが決まったことは一度もなかった。その介入も、労働者たちが外部からたえず圧力をくわえなければ、けっしてなされることはなかった」(『賃金、価格および利潤』新日本古典選書、180ページ)と述べていますが、弱肉強食の資本主義の行き過ぎに政治がきちんと歯止めをかけるよう、私たちが働きかけることがどうしても必要です。 いま、政府もようやく事態の深刻さと解決をもとめる世論・運動のまえに、「90年代後半以降の大幅なフリーターの増加要因としては、どちらかといえば企業側の要因がおおきい」(『国民生活白書』2003年版)といいはじめ、小泉首相も、「看過できない大事な問題と思う。ご指摘の点も踏まえて雇用対策に力をいれていきたい」と述べざるをえなくなってきています。 しかし、青年の立場で就職難を解決するまともな方針は、依然としてありません。03年5月、小泉内閣の青年雇用政策として「若者自立・挑戦プラン」が出されました。その「基本的考え方」は、(1)教育・人材育・成雇用のシステム改革、(2)人材対策への政策資源の重点投入、(3)産業界等の主体的取り組みの三本柱です。 その内容をみると、ともかく「新キャリア教育プラン」とか、「キャリア高度化プラン」、「フリーター再教育プラン」など、若者の職業能力を開発する対策が次々でてきます。ところが、企業サイドへの働きかけになると、(3)の柱に「主体的」がついているように、もっぱら企業の「自主性」にまかされ、政府から大企業に注文をつける姿勢はまったくないのです。 私は、担当省庁によるこのプランの説明会に参加したのですが、長らく説明を聞いたあと、参加者から、若者がどんなにスキルアップしても、働き口が少ないままでは、仕事につけるのは上澄み部分だけで、就職難は解決しないのでは?との率直な質問がだされました。それにたいして居並ぶ官僚たちは、まったくまともに答えられず、参加者から失笑がもれる状況でした。青年にはいろいろ注文するが、かんじんの大企業にはなにもいえない……国民の利益より大企業の利益を優先する自民党政治の本質を深く実感した情景でした。 青年の就職難を解決するためにも、大企業優先ではなく、国民生活の向上を優先するまともな政治への転換がどうしても必要です。その大きな力になるのが、「青年に仕事を!」の署名なのです。若者が、夢や希望を持てない社会には未来はありません。大反響の「青年に仕事を!」署名の大波をさらに全国にまきおこし、それぞれの職場、地域から、青年の切実な要求をかかげた草の根の運動を広げ、私たちの力で青年の就職難を、1日も早く改善しようではありませんか。 |
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