2003年5月30日(金)「しんぶん赤旗」
自動車大手七社の二〇〇二年度連結決算が出そろいました。その特徴は、上位四社の最終利益がいずれも過去最高を更新するなど、大幅増益を記録したことです。その要因を決算資料で探りました。(今田真人記者)
大幅増益の第一の要因は、連結ベース(親会社と内外子会社の合計)の売上高が、七社とも前年度比で大きく増加したことです。
しかし、その売上高増(増収)の内容をみると、国内での販売は低迷しており、それを北米など海外販売の大幅増で補っているというのが共通しています。
例えば業界トップのトヨタ自動車の連結売上高は、前年度比6・3%増の十六兆五百四十三億円で、過去最高を記録。ところが、国内売上高は、同0・5%増の五兆四千五百七十九億円にとどまっています。逆に、海外売上高は同9・6%増の十兆四千五百七十九億円と、大幅増です。
また、売上高全体に占める海外売上高の割合を各社でみると、トヨタが65・1%(前年度63・1%)、ホンダ(本田技研工業)が78・1%(同74・6%)、日産自動車が66・2%(同65・9%)、三菱自動車工業が71・5%(同63・2%)。売上高の増加が海外売上高の増加によるものであることを示しています。
これは、自動車大手の経営が外需依存を深めていることを示すと同時に、個人消費を冷やすばかりの小泉内閣の悪政で内需が低迷していることを反映しているものでもあります。
連結売上高が増加する中、連結営業利益(本業のもうけ)や連結最終利益は、それをさらに上回る大幅な伸びになっています。
営業利益増の最大要因として各社があげているのは、下請け単価の引き下げなどを意味する「原価改善の努力(部品コストの削減)」です。
トヨタは、「原価改善努力」による営業利益の増加を三千億円とし、ホンダは三百二十億円、日産は二千二百七十億円、三菱は八百八十四億円と分析しています。
この点についてトヨタは「仕入れ先(下請け会社)と工場が一体となって部品の仕入れ値を下げる努力をした」(同社広報担当)といいます。日産も「一つ一つの部品を一番安いところから買うグローバル(世界的)な調達をした」(同社広報担当)と説明。事実上、国内下請け会社への単価切り下げの押しつけや、海外展開による安い部品調達などを強化したことを認めています。
もう一つの利益増の要因は、海外生産の進行によるものです。それを示す決算資料が「所在地別セグメント情報」。生産拠点別に売上高や営業利益の内訳が出ています。
それによると、海外生産での営業利益は、トヨタが全体の25・1%(前年度23・9%)、ホンダが70・0%(同61・7%)、日産が46・8%(同43・1%)、三菱が47・2%(同53・1%)。三菱を除いて、海外生産での営業利益の割合が増加、三菱も営業利益のほぼ半分が海外によるものになっています。
これは、自動車大手の巨額の利益が、海外進出と国内産業「空洞化」の進行の中で生み出されていることを浮き彫りにしています。