日本共産党
総選挙にのぞむ日本共産党の政策【第3部】<4>〜<12>

総目次】【第1部】【第2部】【第3部1〜3】【第3部 4〜12】【分野別の政策

【第3部】当面の重点政策 <4>〜<12>

  1. 農林漁業を再生し、食料自給率の向上、安全な食料の安定供給と地域経済の振興をはかる
  2. 危険な「原発だのみ」をやめ、地域の自然エネルギーなど、安全なエネルギー供給をめざす
  3. 地方財源を拡充し、住民のくらしと地方自治をまもる
  4. 女性が生きいきと力を発揮できる平等な社会をめざす
  5. 安心して子どもを生み育てられる条件づくりを
  6. 社会の道義的危機の克服を、国民的対話と運動をつうじてすすめる
  7. 「政治とカネ」のよごれた関係を断ち切り、民主的政治制度の実現を
  8. イラク派兵反対と先制攻撃戦略への参加に反対する
  9. 北朝鮮問題の解決、東アジアの平和と安定のために

【第3部】 当面の重点政策<4>〜<12>

〈4〉農林漁業を再生し、食料自 給率の向上、安全な食料の安定供給と地域経済の振興をはかる

 日本は、食料の6割を海外に依存する、先進国でも他に例のない国になっています。そのうえ小泉内閣は、農政「改革」といいながら、日本農業をささえてきた諸制度を次々にこわそうとしています。農業全体を輸入自由化や市場競争にゆだねて、耐えられないなら、つぶしてしまうというのです。日本共産党は、政府の食料・農業政策を根本から転換させて農業を基幹的な生産部門に位置づけ、食料自給率を早期に50%台に回復させ、さらに60%台をめざします。農林漁業の再生を、地域経済振興の柱にします。

 (1)WTO農業協定の改定を求め、食料主権を回復する

 アメリカなどの輸出大国と多国籍大企業の利益が拡大する一方で、日本など輸入国や各国の家族経営は深刻な打撃を受けています。国内農業の維持、食料の安定確保はどの国にとっても大事な権利です。WTO(世界貿易機関)交渉で、日本の米を自由化の対象から外すなど農業協定を改定させ、食料主権を回復することを強く主張します。

 (2)価格・所得保障を農業予算の主役にし、家族経営や多様な担い手をささえる

 価格・所得保障が農業予算に占める割合は、アメリカで約5割、英独仏では7割で、まさに農業予算の主役です。ところが日本では、価格・所得保障は3割にすぎず、それすら、主要食糧法の改悪で、大幅に減らそうとしています。

 政府の米の需給と価格を安定させる役割をまもり、米の輸入を削減・廃止するとともに、市場原理一辺倒の米「改革」を中止し、政府の100%拠出による不足払い制度を創設し、コストにみあう生産者価格(60キロあたり平均1万8000円程度)に近づけます。

 こうした施策のために、3兆1000億円を超える農林水産予算の半分を占める公共事業費を、真に必要な事業に厳選する、無数の公益法人への補助金・委託金を見なおすなど、ムダをはぶき農業予算を改革することで、1兆円程度の価格・所得保障予算を確保します。

 小泉内閣がすすめている農家全体のわずか数%の大規模経営だけを対象にした「担い手対策」では、地域農業は衰退するばかりです。中山間地域の直接支払い制度を改善・拡充し、平場地域での営農による国土・環境の保全など農業の多面的機能まで対象を広げ、農地の有効利用をはかります(水田・畑作10アールあたり1万円)。安易な株式会社による農地取得は、農地の荒廃につながる恐れがあり、反対します。

 (3)消費者参加とチェック体制の強化で食の安全を確保する

 BSE(牛海綿状脳症)など食品にかかわる事件が多発しており、「食の安全確保」は、政府が本格的にとりくむべき課題です。食品安全委員会への消費者代表の参加、不十分なリスク管理体制の充実をはかり、輸入農産物のチェック体制の強化と原産国表示の徹底をはかります。遺伝子組み換え食品の輸入承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響にたいする厳格な調査・検証を義務づけます。こうしたとりくみを推進するためにも、「消費者の権利」を明記し、消費者代表の参加や消費者団体の訴訟権をきちんと位置づけるなど消費者保護基本法の改正を要求します。

 大規模生産・大量流通など経済効率最優先で、農薬や化学肥料へ過度に依存する生産・供給体制をあらため、有機農業など生態系と調和した生産、地産地消のとりくみを支援します。

 (4)林業と漁業を振興し、地域経済の活性化をはかる

 国産木材・木製品の利用拡大、バイオマス発電の推進、間伐など森林整備の促進、サンマなど200カイリ内の多獲性魚の利用拡大と水産資源の保全と管理など、国内資源の有効活用に力を入れます。

もどる↑

〈5〉危険な「原発だのみ」をやめ、地域の自然エネルギー開発など、安全なエネルギー供給をめざす

 エネルギーは食料とともに、経済・社会の発展の基盤です。ところが日本のエネルギー自給率は、わずか5・6%にすぎません。政府がすすめるエネルギー政策は、あいかわらず原発の新増設をあてにする一方、地球温暖化ガスの削減に不可欠なエネルギーの開発・利用の見直しは不十分なままです。日本共産党は、地球サミットでも確認された持続可能な発展を実現するために、エネルギー政策の転換をもとめます。

 (1)プルトニウム循環計画を中止し、既存原発の総点検と計画的縮小をすすめる

 原発という未確立な技術に頼ったエネルギー政策は、深刻な行きづまりに直面しています。損傷隠しによる東京電力の全原発停止とそれによる夏場の電力供給への不安、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)に関する国の設置許可無効の判決、東海地震の想定震源域の真上にある浜岡原発への地震研究者からの警告が示すように、政府の原発拡大政策は無謀であり、日本の経済・社会を不安定にします。安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとります。破たんが明りょうになったプルトニウム循環計画を中止し、原発の危険を増幅するだけのプルサーマル計画はとりやめます。既存原発の計画的縮小をすすめます。

 (2)風力や小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発を促進する

 エネルギーの自給率の引き上げや地球温暖化対策をすすめるためには、エネルギー効率の徹底した向上とともに、環境に配慮した自然エネルギー源の開発・活用に本格的にとりくむ必要があります。風力、太陽光・熱、小水力、波力、地熱や、畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、地域に固有のエネルギー源です。さらに、電気やガスを「収穫」することで新たな収入が生まれ、雇用や技術、副産物の還元などで地域経済に活力を与える可能性ももっています。その実現のためにも、電力会社に買い取りを義務づけ、事業者に意欲をわかせる売り渡し価格を設定すべきです。マイクロ水力発電を促進するために、もともとの利水目的にあわせて発電後も使用できる水利用として、水利権の合理的な調整をおこなうようもとめます。電源開発促進税や石油関連諸税などの税制の見直し、二酸化炭素の排出量に応じた環境税の導入によって、財源の充実をはかります。

もどる↑

〈6〉地方財源を拡充し、住民のくらしと地方自治をまもる

 自治体が住民のくらしと福祉をまもるという本来の仕事を投げ捨て「自治体が自治体でなくなる」状況が深刻になるなか、小泉自公政権がすすめている市町村合併の押しつけ、「三位一体の改革」はこれに拍車をかけています。日本共産党は、住民のくらしと地方自治をまもるため、国と自治体の関係を次のようにきりかえます。

 (1)市町村合併の押しつけをやめ、地域振興をはかり、地方自治をまもる

 3000余の市町村を1000にまでしようという国による合併押しつけは、自主的な地域の発展とくらし向上の努力をさまたげ、地方自治をおかすものです。このねらいは、国から地方への財政支出を削ることにあり、地方の切り捨てです。合併を誘導し、“強制”するための特例地方債や地方交付税の措置をあらためさせ、国による合併押しつけをやめさせます。小規模自治体の権限を強制的に取り上げる検討をやめるとともに、この間すすめてきた小規模自治体の交付税削減をもとにもどします。

 (2)開発優先の「逆立ち」行政の旗振りをやめ、「自治体らしい自治体」づくりの支援に転換する

 政府は地方自治体に、福祉や教育の予算の大幅な削減をもとめる一方で、公共事業費の削減は別枠にして、大企業・財界のもうけにつながる「都市再生」に集中することをもとめています。この政府の計画が、日本共産党以外の「オール与党」がささえる自治体での開発優先の「逆立ち」政治を引っ張っています。地方交付税などをつかって地方に公共事業をすすめさせてきた仕組みや「都市再生」など大規模開発の新たな押しつけをやめさせ、くらし、福祉や教育など、自治体が自治体ほんらいの仕事にとりくめるよう、財源的な保障の充実へと転換させます。

 (3)国から自治体への財政支出の削減でなく、地方財源の拡充をおこなう

 小泉内閣の「三位一体改革」なるものは、地方に一定の権限と税源を移す代わりに国庫補助・負担金を大幅に廃止・縮減し、結果として国から地方への財政支出を削減しようというものです。いま廃止・縮減の重点的対象にあげられている国庫補助・負担金は、福祉、教育に関して、国が義務として地方に支出すべきものです。これを廃止・縮減すれば、国民の権利として保障すべき福祉や教育の水準を保てなくなってしまいます。このような、住民サービス確保のための国の支出金を削減するやり方はやめるべきです。地方交付税の縮小は、地方・農村部の自治体の財政に重大な困難をもちこむものであり、反対します。

 ――税源の移譲をすすめるとともに、交付税の財源保障・調整機能を拡充する……地方自治体への税源移譲は、地方財源の拡充のため、所得や資産にかかる税を中心におこないます。税源移譲には、都市と農山村自治体との税収格差を広げるという面もありますから、それにたいしては、地方交付税制度のはたすべき財源保障・調整の仕組みを充実させ、税源を移譲されたものの、実際には課税対象の少ない自治体の財源を保障するようにします。

 これらの財政措置によって、福祉や教育のナショナルミニマムを維持・向上させる財源を保障するとともに、自治体の独自のとりくみの強化につなげます。

 ――公共事業などの個別補助金制度を、総合補助金制度にあらためムダをなくす……国から自治体への「ひも付き」として大きな問題になってきたのは、公共事業を中心とした個別補助金制度です。政治家や官僚が「口利き」「個所づけ」で介入しやすく、ムダな事業の温床にもなってきました。これらを整理・縮小し、自治体がみずからの基準と裁量で効率的に事業がすすめられるよう、総合補助金制度を導入します。

もどる↑

〈7〉女性が生きいきと力を発揮できる平等な社会をめざす

 女性は全就業者の4割を超え、ほとんどの職種に進出し、生産と営業の重要な担い手となっています。ところが、賃金が男性の5割という賃金格差、女子学生への就職差別など、女性にたいする差別は根づよく残っています。さらに、この間の不況・リストラは、労働条件の男女格差をいっそう広げつつあります。また、住民運動やボランティアなど草の根の活動でも女性が力を発揮して活躍しています。

 女性の社会的進出をいっそうたしかなものにするためにも、女性が生きいきと力を発揮できるような平等な社会をつくることが急務です。今年7月の国連の審査でも、日本政府に対して改善の勧告がだされ是正の措置を厳しくもとめています。

 ――女性が正当に評価され、安心して働き続けられるルールをつくります……国連の女性差別撤廃委員会から改善が厳しく指摘されているのは、異常な男女賃金格差です。同一労働にたいする同一賃金を徹底します。

 パート労働法を改正し、パート労働者への差別的取り扱いの禁止、均等待遇の原則を明記します。ほんらいなら違法行為である妊娠・出産にともなう解雇や不利益扱いも横行しています。監視・監督体制の強化や必要な法令整備をすすめます。

 ――女性の独立した人格を尊重し、社会的、法的な地位を高めます……日本は世界でも数少ない夫婦同姓制度を取っている国です。民法を改正し選択的夫婦別姓の実現、女性のみの再婚禁止期間の見直しなどをただちにおこないます。

 配偶者間暴力防止法(DV法)の成立後、裁判所による保護命令が1600件も出されるなど被害者保護がすすめられてきました。被害者の自立支援を民間まかせにせず、国・地方自治体の責任を強化して、相談体制の確立などをはかり、予算を大幅に増額します。

 ――女性の健康と母性を保護する環境整備をいそぐ……労働基準法の女性保護規定の撤廃後、女性の健康・母性破壊が深刻になっています。長時間労働をなくすとともに、女性保護規定の条項を復活させるなど、働く女性の母性をまもります。

 産む性としての女性の一生の健康をトータルなものとして考え、研究、診察する女性専用外来が医療関係者の努力と女性たちの要求で設置され、歓迎されています。国公立病院で率先して開設するとともに、民間病院での開設と運営への助成、保健所での女性専用相談窓口の開設、24時間保育など女性医師の働く条件整備を急ぎ、拡充をはかります。

もどる↑

〈8〉安心して子どもを生み育てられる条件づくりを

(1)少子化傾向を克服する努力を強める

 少子化傾向がいっそうすすみ、昨年の出生率も1・32と過去最低を更新しました。いま、年齢ごとの人口統計をとると、世代が50年違うと、その年齢の人口数が半分に減る傾向がでています。このままでは、50年たったら人口が2分の1、100年たったら4分の1になってしまう計算になります。日本の社会そのものの衰退、社会の存続にかかわる危機がひきおこされてしまいます。

 なぜ、このようなことになったのでしょうか。日本が、どんどん子どもを生み育てることが大変な社会になってきたからです。いまの政治が、国民のくらしを痛めつけ、個人の生活も家族の一員としての責任も無視した「働かせ方」を野放しにしてきたためです。国民のくらしをささえ、人間らしい生活をとりもどす“ルールある経済社会”の方向への転換こそ、少子化傾向を克服する道です。そのため、次の四つの対策にとりくみます。

 第1は、長時間労働をなくし、家庭生活との両立ができる働き方にすることです。

 激しいリストラのなかで、長時間労働・サービス残業がひどくなり、とくに、子育て世代の30代は、男性の4人に1人が週60時間以上働くなど、もっとも労働時間が長い世代になっています。

 働くルールの確立で、人間らしい生活を取り戻します。子育て中の労働者には、男女ともに、変則勤務や夜間勤務、単身赴任を制限し、残業も本人同意を必要とするなどの措置をとります。育児休暇を男女ともとりやすくするため、育休中の賃金保障を6割に引き上げる、代替要員の確保、職場への原職復帰、育休取得による不利益をなくすなどの改善をすすめます。

 第2は、若者に安定した仕事をつくることです。

 若者の5人に1人がフリーターという不安定な仕事しかなく、完全失業者の半分が若者です。政府も「若年の雇用が悪化し、経済的基盤が弱くなっているため、子育てへの経済的な負担感がますます高まり、少子化がさらに進むことが懸念される」(国民生活白書)としています。パート・アルバイトで働く若者の6割が年収100万円未満という低賃金です。これでは自立して子どもを生み育てる経済的な基盤がありません。

 大企業は、この間、若者の正社員を108万人も減らし、派遣や臨時、アルバイトなどの不安定な雇用に置き換えてきました。政府と大企業の責任で若者の安定した仕事をつくるべきです。

 第3は、男女差別・格差をなくし、女性が働きつづけられ、力を生かせる社会にすることです。

 日本の労働者の4割にのぼる女性の力を正当に評価し、生かせないようでは、産業や企業の未来もありません。男女賃金格差の是正、女性差別の解消など、企業に雇用のすべての面で「男女平等」をつらぬかせるようにします。

 第4は、出産・育児と仕事の両立を応援することです。

 少子化のなかでも保育所への待機児童は増えつづけ、昨年10月には6万2000人に達しました。産休明け、育休明けなどに機敏に対応できるよう保育所の増設と保育条件や保育時間の改善、高い保育料の負担軽減は急務です。すべての小学校での学童保育をめざし、国の補助金を増額します。

(2)教育条件を向上させ、国の統制から「地域発・学校発」の教育改革にきりかえる

 (1)政治の仕事の中心を教育条件整備にきりかえ、遅れた教育条件を欧米並みに引き上げる

 教育に対する政治の第1の責任は条件整備です。ところが、日本の国・地方の教育予算の水準は欧米に比べて7割の低さです。そのため、欧米では1学級30人以下なのに日本は40人学級、ヨーロッパでは幼稚園から大学まで無料の国が多いのに日本は法外な父母負担、などとなっています。

 日本共産党は教育条件の本格的な向上にとりくみ、「30人学級」実現、義務教育費国庫負担金制度の縮小・廃止の阻止、私学助成の抜本的増額と私立学校の父母負担軽減、学費値下げと奨学金制度の拡充、学校耐震化などの施設整備の推進、障害児学級廃止などを許さず特別なニーズをもつすべての子どもへの行き届いた教育、学校図書館や公立図書館の拡充、夜間中学校の増設などをすすめます。

 (2)国の教育介入をやめさせ、父母、子ども、教職員、住民が中心の教育改革にきりかえる

 自民党政治は、教育にお金をださずに、教育の中身に口をだすことばかり熱中してきました。国連からもその異常性が問題にされる競争教育、管理教育で、学校を荒廃させてきました。学習指導要領を「とにかく内容を3割減らせ」といっそう系統性をなくし、学力への不安を広げています。国の研究所の研究員の調査でも、校長をふくめ九十数%の教員が、「いまの教育改革は現場の実態とかみあっていない」と回答しています。

 日本共産党は、政府の教育介入の仕組みをやめさせ、父母、子ども、教職員、住民が中心の「地域発、学校発の教育改革」にきりかえます。そのため(1)教育委員会を、住民に開かれた、民主的な機関にする。小中学校の教員人事権は基本的に県から市町村に移行、(2)学校運営への父母、子ども、教職員、住民の参加を重視します。こうしたなかで、基礎的な学力の保障や市民的道徳の教育、競争と管理の教育の改革などをすすめます。

 (3)教育基本法の改悪の動きに反対し、基本法を生かす方向にきりかえる

 政府・自民党は、今日の教育の荒廃の原因を教育基本法にもとめ、その改悪の策動を強めています。しかし、これには根拠も道理もありません。反対に、政府・自民党が長年にわたって、「人格の完成」を教育の目的とし国家権力による「不当な支配」を許さないなどの、教育基本法に明記された理念と原則を踏みにじってきたことが、教育の荒廃をつくりだしたのではないでしょうか。日本共産党は、教育基本法改悪のたくらみをやめさせ、基本法を教育に生かすようにします。

もどる↑

〈9〉社会の道義的危機の克服を、国民的対話と運動をつうじてすすめる

 重大で衝撃的な少年犯罪があいつぎ、いじめ、児童虐待、少女買春などが頻発していることにたいして、多くの国民が不安をもち、心を痛めています。

 わが国の社会が直面している道義的危機を克服する課題、わけても子どもたちに健全な成長を保障することは、21世紀に民主的な社会をきずいていくとりくみの重要な内容です。日本共産党は、国民的な対話と運動をひろげ、みなさんとともに問題の解決の方向を探求し、現状打開のための努力をつよめます。

 社会の道義的危機の大もとには、自民党政治のもとでの国民の生活・労働・教育などでのさまざまなゆがみや矛盾、困難の蓄積があります。たとえば、リストラ、雇用破壊、長時間労働は、「家族そろって夕食を」のだんらんや家族のあいだのコミュニケーションを奪っています。弱肉強食の競争主義は、国民にゆとりのない生活を押しつけ、精神生活に否定的な影響をおよぼしています。国連からも「極度に競争的な教育制度によるストレスのため、子どもたちが発達のゆがみにさらされている」と批判されるほど異常な競争主義・管理主義の教育は、子どもたちの心と成長を大きく妨げています。政界・経済界であいつぐ不正・腐敗事件も、子どもたちにはかりしれない有害な影響をもたらしています。さらに、他国への戦争、テロを容認しあおり立てる政治家の発言が大問題になりましたが、この根っこにあるアジア諸民族を蔑視(べっし)する独善的な排外主義の台頭も深刻な問題です。

 日本共産党は、これらのゆがみや矛盾、困難を民主的に打開し、「民主的なルールある社会」をきずきあげるたたかいを、国民のみなさんとともにすすめます。

 同時に日本共産党は、社会が独自にとりくむべき問題として、次の四つの角度でのとりくみを重視します。

 ――民主的社会にふさわしい市民道徳の規準をどう確立してゆくか……市民道徳は、「天皇のために命をささげること」を最高の道徳とした戦前の「教育勅語」のようなものからは生まれません。私たちは、侵略戦争の反省からつくられた憲法や教育基本法が、市民道徳を形成する土台になると考えます。同時に、市民道徳の規準は、政府や一政党が決めるものではありません。広範な国民的な討論と合意で形成することを何より大切にします。

 ――子どもをまもるための社会の自己規律をどうきずくか……子どもをまもることは、社会の当然のルールです。ところが、この分野で日本は国際的にも遅れが深刻な社会です。とくに児童買春や性の商品化では、国連子どもの権利委員会からきびしい勧告がだされています。メディアでの暴力や性の表現が、子どもに野放しになっている点などでも立ち遅れています。子どもをまもるという社会の規律を各分野で確立するために努力します。

 ――子どもが自由に意見をのべ、社会に参加する権利をどのように保障するか……子どもは社会の一員として尊重されてこそ、自分と他人を大切にし、社会のルールを尊重する主権者として成長することができます。子どもの権利条約で保障された「意見表明権」や社会参加を保障する社会をつくります。学校運営への参加や地域社会への子ども参加などの流れを大きく前進させます。

 ――子どもの成長をささえあう草の根からのとりくみをどうすすめるか……市民道徳は、言葉だけでなく、現実の人間関係、社会関係をつうじてこそ、身についていくものです。子どもの成長をささえあう、草の根の多様な運動がひろがっています。私たちもその一員として力をつくすとともに、とりくみの協力、共同をひろげます。

もどる↑

〈10〉「政治とカネ」のよごれた関係を断ち切り、民主的政治制度の実現を

 国会が開かれるたびに、自民党議員の金権腐敗が問題になる――いったい、何年こんなことが繰り返されてきたでしょうか。この間も、鈴木宗男議員の汚職、さらには公共事業をめぐって、加藤紘一自民党元幹事長、井上裕前参議院議長、大島理森前農水相らが、議員辞職や大臣辞職に追い込まれたように、税金を食い物にする腐敗事件が相次ぎました。この根源に、企業・団体献金があります。

 また、選挙制度を改悪して、気に入らない野党を国会から締め出し、主権者国民の声を反映しない国会に変質させる策動も強まっています。

 日本共産党は、憲法の主権在民と民主主義の原則に反するこのようなくわだてに強く反対し、民主主義をつらぬく政治の仕組みにあらためます。

 (1)企業・団体献金をただちに全面禁止する

 いかに利益をあげるかが目的の企業が、なんの見返りもなしに多額の政治献金をするわけがありません。日本経団連の奥田会長が、「日本経団連がもとめる政策を実現してくれる政党、政治家には献金をあっせんする」とのべたように、「金の力で政治を買収」し、思い通りに動かそうとするのが企業献金のねらいです。大企業からのヒモつき献金にたよっていて、どうして国民のための政治ができるでしょうか。

 金の力で政治が動かされれば、国民の声は踏みつぶされてしまいます。たとえば、これまで住民が反対するムダな公共事業がどれほど強行されてきたことでしょう。そのほとんどが、自民党議員によって利権化され、巨額の企業献金が吸い上げられていきました。赤字で法人税を納めていないゼネコンですら、自民党に巨額の献金をしています。公共事業を受注するためです。

 日本共産党が、現に実行しているように、企業・団体献金を全面的に禁止します。

 また、それ以前にも、公共事業受注企業からの献金禁止、政党支部をトンネルにした企業献金の抜け道づくりをきびしく規制します。自民党、公明党、保守新党の与党がねらっている、献金の公開基準の引き上げに反対します。

 (2)国民の税金を政党が分け取りする政党助成法を廃止する

 日本共産党は、政党助成金制度がつくられる際、国民の税金が支持もしていない政党に流れることは、憲法が保障する「思想・信条の自由」を侵すことになるとして反対しました。また、政党助成金制度をつくっても、企業・団体献金を禁止しないかぎり汚職・腐敗はなくならないと指摘しました。現状は、まさにこの指摘どおりになっています。しかも、政党助成金は、いったん政党に渡れば、あとは飲み食いなど、何に使おうと勝手放題という“つかみ金”になっています。

 民主主義を唱える政党なら、政治資金は草の根の活動を通じて、国民一人一人から浄財を集め、それで活動するのが当然です。現に、日本共産党は、政党助成金を受け取らず、国民のみなさんのカンパや「しんぶん赤旗」の売り上げ、党費でまかなっています。

 国民の税金を分け取りする政党助成法は、廃止します。

 政官財の腐敗を一掃するために、天下り禁止や行政を監視する制度をつよめます。

 (3)選挙制度の改悪に反対し、民意を反映する選挙制度改革を

 主権者国民の「政治監視の目」が行き届くことこそ、金権腐敗根絶のいちばんの保障です。そのためには、選挙制度を民主的に改革し、有権者の選択が公正・正確に議席に反映させることこそ必要です。

 ところがいま、これに逆行するくわだてが強まっています。2000年の総選挙の前には、国民のなかにある多様な意思や要求を国政に反映できなくする定数削減が強行されました。自民党内には、衆院選挙制度を改悪して比例代表制を廃止しようという動きが根強くあります。野党の民主党も、こんどの「マニフェスト」で、「衆議院比例代表制議席定数を80議席削減する法案を国会に提出」するとしています。ほかの野党を国会から追い出して、自民党・民主党の「2大政党制」をつくりだす方針からです。比例代表制は、民意を比較的正確に反映する制度です。比例代表制を切り縮めて小選挙区制中心の制度になれば、国民のなかにある少数意見がまったく切り捨てられるだけでなく、国会の構成を、民意を反映しない極端にゆがんだものにしてしまいます。こういうやり方に反対です。

 衆議院の選挙制度は、小選挙区制を廃止し、全国11ブロックの比例代表制のみの制度への改革をはかります。

もどる↑

〈11〉イラク派兵と先制攻撃戦略への参加に反対する

 (1)自衛隊の海外派兵に反対する

 小泉内閣は、アメリカのイラク戦争に、世界中のきびしい抗議の声を無視してまっさきにもろ手をあげて賛成し、国民の反対の声を踏みにじって、自衛隊をイラクに送り込む法律を強行しました。米英の軍事占領にたいするイラク国民の不満と怒りが日増しに高まり、占領政策そのものがゆきづまり、戦争の口実とされた「大量破壊兵器」も見つからず、米英国内でも疑問と批判が大きくなっているいま、この法律を発動して、戦後はじめて地上軍を外国に派兵しようとしています。

 アメリカのイラク占領に自衛隊を送り込むことは、イラクの復興に結びつくどころか、混乱状態をいっそう深刻にし、イラク国民をますます苦しめるだけです。さらに、わが国もまた、無法な占領支配の共犯者として、アラブ・イスラムの人びとの全体を敵にまわすなど、とりかえしのつかない道に踏み入れることになります。小泉首相が、「殺し、殺されることがありうる」とのべたように、イラクの民衆に発砲し、自衛隊員が殺されるということが現実になる危険もあります。憲法9条とあいいれないことは明らかです。イラクへの自衛隊派兵はきっぱり中止すべきです。

 数千億円から1兆円にのぼるといわれる巨額のイラク占領費の負担はやめさせます。

 日本共産党は、アメリカの戦争に自衛隊を参戦させ、国民を罰則つきで強制動員する有事法制や海外派兵法の発動を阻止し、自衛隊のイラク派遣を具体化させないために、広範な国民のみなさんと共同を広げることに力をつくします。

 (2)米軍基地の異常をただし、米軍の横暴勝手をやめさせる

 無法な米軍の空母艦載機などによるNLP(夜間離着陸訓練)や超低空飛行訓練は、米本国はもちろん、他のどの同盟国でもやっていません。こんな勝手放題をきぜんとした外交でやめさせます。米兵による女性暴行事件や傷害事件などのたびに大問題になる日米地位協定問題でも、自公保政権は、国民の強い改定要求に背を向けて、「運用改善」にとどめています。日本共産党は、日米地位協定を抜本改正し、世界に例のない米軍優遇の特権措置をなくします。

 佐世保基地を中心にした「遠征攻撃群」の新編成や三沢基地への太平洋艦隊の電子スパイ機部隊司令部の移転、横須賀基地の原子力空母母港化は、沖縄の名護市への最新鋭基地建設とともに、世界への出撃拠点として、21世紀中にもわたって基地を固定化、強化しようとするものであり、断じて認められません。

 米軍の無法な活動を支え、米軍が居座る根拠にもなっている「思いやり予算」は、中小企業予算の1・3倍にまで膨張しています。安保条約上も何の義務もないものであり、ただちにやめさせます。

 ミサイル防衛やヘリ空母の導入などの新たな軍拡計画は、米国の先制攻撃戦略、軍事介入態勢に日本をいっそう深く組み込み、強化するもので、世界とアジアにとっての脅威以外のなにものでもありません。いま平和外交こそ力を発揮する時代であり、抜本的な軍縮をすすめます。

 日本共産党の国会での追及により、アメリカが核兵器を日本に持ち込む密約の存在が明確になりました。政府に密約の全ぼうを公開させ、核持ち込みの心配がない日本にします。核兵器廃絶を緊急課題として、被爆国日本がその先頭にたつようにします。

 (3)「ミサイル防衛戦略」への参加に反対する

 アメリカのブッシュ政権がすすめている「ミサイル防衛戦略」は、相手国のミサイル攻撃を打ち破り、無力化する態勢をつくることによって、アメリカの核戦略の優位を絶対的なものとし、報復の心配がなく先制攻撃を可能にしようとするものです。

 日本政府は、その開発・配備に参加することを事実上約束しましたが、これは巨額の財政支出をともなうだけでなく、憲法を踏みにじった「集団的自衛権」の行使そのものとなり、地球的規模のアメリカの核戦略に日本を組み込む事態をまねくことになります。この計画には、すでに中国やロシアも強い懸念と批判を表明しており、アジア太平洋地域の国ぐにとの緊張を激化させる危険も重大です。

 日本共産党は、「ミサイル防衛戦略」に反対し、日本の参加をただちに中止することを強く要求します。

もどる↑

〈12〉北朝鮮問題の解決、東アジアの平和と安定のために

 北朝鮮問題の解決は、東アジアの平和と安定にとって欠くことのできない課題です。

 ――朝鮮半島で戦争をおこさせない……北朝鮮問題は、東アジアで戦争がおこる現実の発火点になる危険をはらんでいます。北朝鮮が、核開発にむけた動きをすすめ、“核カード”をもてあそぶ瀬戸際外交をつづければ、アメリカに先制攻撃の絶好の口実をあたえ、数十万人の犠牲者が予想される戦争に発展しかねません。戦争の火種をなくし、軍事衝突の危険をとりのぞくことは、国際社会が一致して追求すべき最優先目標です。

 日本共産党は、あくまで外交的・平和的手段によって北朝鮮問題を解決するよう、強く主張します。8月におこなわれたアメリカ・北朝鮮・中国・日本・韓国・ロシアによる6カ国協議は、各国の主張に大きなへだたりはありましたが、「対話をつうじた平和的方式」で問題を解決する努力をつづけること、お互いに「情勢をエスカレートあるいは激化させうる言行をとらない」ことで共通の認識に達するという重要な一歩を踏み出しました。北朝鮮問題の解決のために、この外交交渉を継続・前進させることを強くもとめます。

 ――国際社会が立つべき3つの原則……日本共産党はそのさい、国際社会が次の原則を堅持して解決にあたることが重要だと主張します。

 (1)北朝鮮にたいして、核兵器開発路線を放棄し、国際社会との安定した外交関係をうちたてることこそ、みずからの安全保障にとってなによりも重要であることを、道理をもって説くこと。

 (2)そのためには、北朝鮮がこれまで犯してきた、日本人拉致事件、ビルマ・ラングーンでの爆破テロ事件、日本漁船銃撃事件、大韓航空機爆破事件、麻薬など不正取引などの国際的無法行為を清算することがなによりも大切です。これらをきっぱりと清算し、真の意味で国際社会の仲間入りをするよううながすこと。

 (3)すべての当事国が、軍事対応の悪循環におちいるのではなく、それを断ち切る立場にたつこと。とくに、アメリカが北朝鮮を先制攻撃の対象の一つにしていること、北朝鮮が“核カード”を使った瀬戸際政策を繰り返していることは、平和への脅威をつくりだしています。アメリカ・北朝鮮の双方が強く自制するとともに、日本をふくむ各国が、両者の軍事的対立を抑制する方向で対応すること。

 ――日本人拉致事件を理性的に解決する……日本人拉致事件の解決は、被害者・家族にとってはもちろん、北朝鮮が国際的な無法行為を清算してゆくうえでも重要な意味をもちます。拉致事件の解決は、日朝の2国間問題にとどめず、無法行為の清算をもとめるという国際社会全体がとりくむべき課題のなかにも位置づけることができます。

 日本共産党は、北朝鮮が、1960年代後半に危険な「南進」政策をとろうとしたさいにも、70年代に当時の指導者・金日成の個人崇拝を押しつけてきたさいにも、拉致問題をはじめとする国際的無法行為にたいしても、自主独立の立場から先駆的に、もっともきびしく批判してきた党です。国会の質問で、拉致疑惑の存在を政府にはじめてみとめさせたのも日本共産党です。そして、この問題を交渉によって解決することを積極的に提言してきたのも日本共産党です。この立場を堅持して、拉致事件の解決に力をつくします。

 日本共産党は、昨年の日朝首脳会談で「日朝平壌宣言」が発表されたさい、志位委員長談話で、北朝鮮政府にたいして、日朝首脳会談であきらかにされたものが、北朝鮮がかかわる拉致問題のすべてであるのか、拉致犯罪をおこなった責任者はだれなのか、拉致被害にあった方々がどのような扱いをうけたのかなど、真相を全面的にあきらかにすること、責任者の厳正な処罰と、被害者への謝罪と補償をおこなうことをもとめましたが、これらをあらためて強く要求します。また、北朝鮮に残された家族の帰国をもとめることは、人道上当然です。

 こうした道を通じて、北朝鮮問題が道理ある解決をみれば、東アジアの平和・繁栄・友好に大きな展望が開けます。日本国民にとっても、平和と安心が確保されます。日本共産党は、国の内外で、北朝鮮問題の理性的解決のために全力をあげます。

もどる↑

第3部1〜3分野別政策へ

総目次へ


日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ

著作権についてリンクについてメールの扱いについて
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7  TEL03-3403-6111 FAX03-5474-8358 Mail:info@jcp.or.jp