■第二章 二一世紀の世界の構造変化と日本共産党の立場

◆(5)世界の平和秩序を築くたたかいについて

 新しい綱領は、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、アメリカが横暴をほしいままにする干渉と侵略、戦争と抑圧の国際秩序かの選択が、いま問われている」とのべている。この「選択」は、今日の世界の平和をめぐる対決の最大の焦点となっている。

 (1) 米国・ブッシュ大統領は、二〇〇五年一月に第二期政権を発足させた。ブッシュ政権は、とくに二〇〇一年九月十一日の同時多発テロを契機に、先制攻撃戦略、国連を無視した単独行動主義など、きわめて侵略的な外交・軍事戦略を推進したが、第二期政権においても、その基本は変わらない。

 ブッシュ政権はいま、「世界規模のテロ」「大量破壊兵器」などの「新たな脅威」への対抗という名目で先制攻撃戦略をすすめ、最も効率的に軍事力を行使するために、地球的規模での米軍再編成をすすめている。

 このなかでとくに重大なのは、核兵器政策である。ブッシュ政権が十年ぶりに改定の作業をすすめている「統合核作戦ドクトリン」は、非核保有国にたいして核兵器を一方的に使用する要件をいっそう拡大する、危険きわまりない内容となっている。それは、使いやすい新型の小型核兵器の開発、先制核攻撃のための「ミサイル防衛計画」の推進、宇宙の軍事化などの形で具体化されている。米国の核先制攻撃戦略は、きわめて危険な新しい段階に足を踏み入れようとしている。

 同時に、米国の一国覇権主義の道は、破綻と孤立を深めている。イラク侵略戦争につづく軍事占領、抵抗勢力への無差別の軍事掃討作戦が、暴力とテロの悪循環をつくりだし、イラク情勢の泥沼化をまねいている。イラクに派兵した「有志連合」は、軍隊の撤退・削減を決めた国があいつぎ、崩壊への道をたどっている。米兵の戦死者の増加、戦費のとめどもない拡大などに直面して、アメリカ国内でもイラク政策の転換と米軍撤退をもとめる世論と運動が広がっている。

 軍事力一本やりでは対応できない状況に直面して、米国政府のなかに、国際問題を外交交渉によって解決することを模索する動きがおこっていることは注目される。北朝鮮の核問題の解決のための六カ国協議(韓国、北朝鮮、日本、中国、ロシア、アメリカ)において、米国がアジアの情勢の発展を受け入れざるをえなくなり、外交的な方法で対応する動きをみせていることが、指摘されている。中国との関係でも、米国政府内で、長期的視野にたって、中国との平和的共存をはかることを展望した外交戦略を模索する動きがおこり、二〇〇五年十一月の米中首脳会談では両国の「建設的協力関係」を全面的に推進することで一致した。さらにASEAN諸国との関係でも、「ASEANと米国との協力強化に関する共同ビジョン声明」がかわされ、そのなかで「東南アジア友好協力条約(TAC)の精神と原則を尊重する」ことが確認された。

 (2) 前大会決議は、「イラク戦争に反対するたたかいは、各国の民衆のたたかい、世界の多数の国々の政府が、『国連憲章にもとづく平和の国際秩序』をめざして、大きな共同の流れをつくりだす可能性が、地球的規模で広がっていることを示した」と指摘したが、イラク戦争にさいして世界でわきおこった巨大な平和の波は、ひきつづき豊かで多面的な広がりをみせながら前進している。

 ――国連総会で拒否された先制攻撃戦略……これらの平和の流れは、国連の動向に、積極的作用をおよぼしている。それは、二〇〇五年九月の国連創設六十周年を記念する国連特別首脳会議の「成果文書」をめぐる外交的攻防にもしめされた。アメリカは、この文書の準備文書の「差し迫った脅威にたいする先行的自衛」という文言をとらえて、自らの先制攻撃戦略を合理化しようとした。しかし、国連総会の討議をつうじてこのたくらみは拒否され、「先行的自衛」という言葉は採り入れられなかった。「成果文書」は、国連憲章の諸原則、国連の中心的役割、紛争の平和解決、多国間主義などを、今日の国際関係を律すべき基本原則として確認した。

 ――地域の平和共同体の動き……世界各地で、国際秩序の新たな担い手として、自主的な地域の平和共同体の動きが発展している。東南アジア諸国連合(ASEAN)、上海協力機構、南米諸国共同体、アフリカ連合(AU)などである。これらの地域共同体は、共通して、国連憲章にもとづく平和秩序、紛争の平和解決、各国の経済主権の尊重と民主的な国際経済秩序を主張している。また南米・アラブ諸国首脳会議が開催されるなど、地域共同体が相互に協力して、国際的な平和のネットワークをつくる動きがすすめられていることも注目される。

 ――アジアで進む平和の国際体制づくり……地域の平和共同体づくりの動きが、注目すべき進展をみせているのがアジアである。

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