2009年2月20日(金)「しんぶん赤旗」
ホンダ期間工切りの非情(2)
「空白期間」で判例逃れ
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「十一年間も正社員と同じ仕事をした。それなのに、この差は何なんですか」
元期間工の桜井斉(ひとし)さん(40)=宇都宮市=は「HONDA」のロゴをかかげた工場を見つめ、ぶぜんとした表情で語ります。
栃木県真岡(もおか)市のホンダ栃木製作所。シンボルカラーの真っ白な作業服を着た労働者が、二つに分かれた工場をつなぐ歩道橋を行き交います。一カ月半前まで、桜井さんもここで正社員と肩を並べ、エンジン部品をつくる機械を操作していました。
1カ月の契約
桜井さんの契約期間は一カ月。更新、更新の連続で雇用をつないできました。一九九七年十二月の入社当初は三カ月間契約でしたが、数年前にホンダが一方的に短縮しました。昨年十一月、十二月末での雇い止めを突然言い渡されました。
桜井さんのように更新を繰り返した有期雇用労働者の場合、期間の定めがない雇用と同様にみなして雇い止めを認めなかった判例(東芝柳町工場事件最高裁判決)があります。ところが、ホンダ本社に尋ねると「継続雇用ではないので雇い止めは認められる」(広報担当者)といいます。
十一年間も働いたのに「継続ではない」とはどういうことか―。契約書で確認しようにも、すでに廃棄処分して何もありません。そこで社会保険事務所を訪ねて桜井さんの年金支払い記録からホンダに雇用された期間を確認しました。その結果、“継続でない”と見せかける手口が明らかになりました(図)。
一カ月更新を続けて一年たつと、いったん契約を打ち切り、“空白期間”をおいて再契約したことにするのです。「一回、一回の契約は切れている」(本社広報担当者)といいます。
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同部署へ戻る
桜井さんは「間を空けたのは形式的で、仕事に戻れるのが前提だった」と語ります。実際、五日間、六日間の空白を置いて再入社したときも。いつも同じ部署に戻り、同じ作業に従事しました。
この判例逃れの「空白期間」は、鈴鹿製作所で二年十一カ月ごと、埼玉製作所で二年半ごとなど、他の工場でも行われてきました。
「派遣切り」「期間工切り」の問題に取り組む、鷲見賢一郎弁護士(自由法曹団幹事長)は「一カ月契約というのは前代未聞だ。ホンダの行為は、極端に短い契約を制限した厚労省の雇い止めに関する基準や、労働契約法一七条二項に明確に違反している。間隔をあけたのも許されない脱法行為で、大企業としてあるまじき非人間的な雇用形態だ」と指摘します。
桜井さんはJMIU(全日本金属情報機器労働組合)栃木地域支部に入り、十八日、雇い止め撤回を求めホンダに団体交渉を申し入れました。(つづく)
- ホンダ期間工切りの非情(1)/2カ月刻み契約の果て
- ホンダ期間工切りの非情(2)/「空白期間」で判例逃れ
- ホンダ期間工切りの非情(3)/どこいった「人間尊重」
- ホンダ期間工切りの非情(4)/正社員登用を期待させ…